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『器』探しの旅へ

「しかしおぬしら、どうやって騎士団より先に『器』を見つけるつもりじゃ? 数は比べ物にならんし、おぬしらは魂を見分ける術も知らぬ」


「そ、それは……」


 言われてみれば、だ。


 守ると息巻くのはいいが、この人数ではできることが限られてくる。

 はてさてどうしたものか。


「ところで諸君、これを見てみよ」


 エラが懐から何かを取り出し、机に置く。

 細長くて片方の先が少し尖っている……釘だろうか。


「なんですの、藪から棒に」


「これはワープ魔法を使う時に、移動先の指標となるものじゃ」


「?」


 続いて手のひらサイズの箱を置く。


「そしてこれがワープ魔法発動装置。魔力を込めれば誰でも使える」


「??」


 次は方位磁石のようなもの。


「さらにこれは魔界の力を持つ魂に反応する道具。騎士団が所有しているものとは違って魔物には反応せん。まあたぶん魔族には反応してしまうがな」


「???」


「探知範囲内に対象がいると光る。で、対象と接近すると音が鳴る」


「……つまり?」


「かーっ! 察しが悪いのう! おぬしらにこの3つをやるから、存分に活用せよということじゃよ」


「えっいいの!?」


 驚きのあまりそこそこ大きな声が出た。


「お前さっきまで『後は騎士団が~』とか言ってただろ。どういう風の吹きまわしだ」


「若者の希望を知恵で支えるのが老人の役目じゃろうて。あとせっかく作ったんじゃから使い心地を……いやなんでもない」


 エラは目を泳がせて言う。

 それほぼ後者目当てでしょ、とか思わなくもない、けど。


「ありがとう、エラ」


「ふふ、お安い御用じゃ。ああそれと、騎士団を責めんでやってくれな。騎士団とその上司たる王族は、国を最優先にせねばならん。多少の犠牲には目を瞑ってでも、な」


「……その、もしかして、最初からこうなることを?」


「ま、そういうことじゃ。騎士団がああするしかない以上、『器』を救ってやれるのはおぬしらのような人間のみ。わしも一応、国に仕えておることになっておるし」


 そういえばエラは研究費を国から貰ってたんだっけ。

 だから表立って国の方針に逆らうことはできないのか。


「それに、初めから騎士団に情報を渡さずに『器』を探す、という選択をできるほどの勇気は無かった。存外、わしは臆病な老人なんじゃよ」


「……いいえ、そんなことはありません。つまり騎士団は『器』の捜索が上手くいかなかった時の保険、でしょう? 理想と現実の折衷案、僕は妥当だと思いますよ」


「もっとわかりやすく! あたしにもわかるようにお願い!」


 バサークが手を挙げて主張する。

 仕方ないですね、とトキは少し考えてから口を開いた。


「魔王は『器』を利用してこの国を壊そうとしている。だから大前提として、魔王が攻めてくる前に『器』をどうにかしなければいけない。で、僕らは『器』を殺さずに無力化したいけど、間に合うかどうかわからない。なので最善ではありませんが予防策として騎士団にも動いてもらい、最悪の事態は避けようというわけです」


「…………えっとお……つまりぃ」


「……僕らが騎士団や魔王より先に『器』を見つけて無害化すれば万事解決です、以上」


「わかった!」


 そんなわけで、俺たちは『器』探しの旅に出ることにした。

 動きは単純だ。


 俺たちは各大領地を巡って『器』を探す。

 同時にエラの道具のワープポイントを設置し、何かあればいつでも駆けつけられるようにしておく。

 さらにエラは自分の屋敷に残り、『器』から魔界の力を除去する方法を調べてくれるという。


 警戒すべきは騎士団、それから竜人である。

 バサーク曰く、竜人は掟があるので人里には降りてこないが、もし『器』を見つけたら躊躇なく殺すだろう、とのこと。


 勇者も見つかるに越したことはないが、あまりに手がかりが少ないし俺たちが見つけなければいけない理由も無いため、国と騎士団に任せておいて良いだろう。

 まずは『器』の保護が優先だ。


「以前トキが言っていた通りなら、王族と竜人はほぼ確実に繋がっている。おそらく、騎士団が所有しているものと同様の魔魂探知機を持っているだろうな」


「勝手に命名するでない」


「ならお前が付けろ。名前が無いと不便だ」


「じゃあ『たまたん』」


「わかった、魔魂探知機で」


「なんでじゃ! 可愛いじゃろうが『たまたん』!」


 エラがくれた指標釘は全部で20本。

 1つの大領地につきだいたい2本くらいの割合で設置すれば良さそうだ。


 とりあえず最初の1本は拠点に設置することにした。

 ワープにはかなりの魔力が必要であるため、そう頻繁に帰ってこれるわけではないが、その方が安心だろう。


 路銀は行く先々で依頼をこなして稼げばいい。

 どこであっても仕事を取れるのは冒険者の強みだ。


 あれやこれやと準備をし、翌日、俺たちは拠点を出発した。

 第四領地はエラが研究の合間に探索してくれるというので、俺たちがまず目指すのは隣の第三領地。

 先日のことがあるので念のためトーウィ村は迂回して、別ルートから第三領地に繋がる関へ向かうことにした。


 別に関を避けても行けることには行けるが、やはり歩きやすい道は関所に通じている。

 それに、変にコソコソして怪しまれても困るから、堂々と行こうというわけだ。


 地図とデレーの案内を頼りに進んで行き、日が落ちて幾ばくかした頃にやっと関所に到着する。


「ギルドではないのですし、役人には私が対応しますわね」


「ありがとう。そうしてくれると助かるよ」


 ギルドではパーティーのリーダーが代表して手続きをしなきゃいけなかったけど、関所では関係ない。

 突っかかられて時間を無駄にしたくはないしここはデレーに任せよう。


 門をくぐって中に入ると、役人が小屋の窓から顔を出して俺たちを出迎えた。


「こんばんは。第三領地への来訪者ですね? 肩書きと移動の目的をお願いします」


「私たちは冒険者ですわ。大陸を巡る旅をしておりますの。それで、次は第三領地へ行こうかと」


「わかりました。では持ち物の検査をしますね」


「ええ」


 俺たちは役人に荷物の中身を見せた。


「これは?」


「薬と、対魔物用の毒です」


「この箱や釘は?」


「魔法道具ですわ。冒険に役立つからと、さる方からいただきましたの」


 役人は細かく、怪しそうな物を指しては質問していき、それにほとんどデレーとトキが嘘も交えつつ円滑に答えてくれる。


「はい、ご協力ありがとうございました。良い旅を!」


 いつものごとく俺は目が合うたびに役人に睨まれたが、2人のおかげであっという間に検査を終えることができた。


「道なりに行けば町がありますわ。今日のところはそこで宿をとりましょう」


「フウツ、魔魂探知機に反応は?」


「まだ何も。探知範囲内にはいないみたい」


 それにしても第三領地か……。

 いったいどんな感じなんだろう。

 第四領地とはガラッと雰囲気が変わってたり

するのかな。


「そうですわね、第三領地はほとんど山が無く、比較的町が多い印象ですわ。有り体に言えば『栄えている』といったところでしょうか」


「へえ、そうなんだ」


 ……なんかデレーに心を読まれるのに慣れてきてる気がする。

 今も普通に返事しちゃったし。


 うーん、でもまあいっか。

 特に困ることでもないしね!


「あ、見えた!」


 バサークが楽しそうに声を上げる。

 俺もつられて前を見ると、遠くの方にたくさんの建物が立ち並んでいるのがわかった。


「早く早く!」


「あはは、あんまり先に行くと迷子になるよー」


 待ちきれないと言わんばかりに駆けていくバサーク。

 俺たちは苦笑しながらも小走りでついて行く。


「強い人いるかな? いたら戦っていいかな?」


「相手の人がいいって言ったらいいよ。けど最優先は『器』探しだからね」


「う――」


 おや、と俺は思った。

 急にバサークが言葉を途切れさせて立ち止まったからだ。


「どうしたんです」


 追いついてきたトキが怪訝そうに尋ねる。


「……なんか、変」


「変? って何が…………あっ!」


 突如、視界の一部が明るくなった。

 首にかけていた魔魂探知機が光を放ちだしたのだ。

 これってまさか……。


 俺たちは顔を見合わせて固唾を飲み込んだ。


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