ダラダラっと第十一回
「え?あれはゴブリンだよ?ゴブリンも見た事ないのかい?」
「ええ…箱入り娘だったもので…」
と言う事にしておいてください。それよりも…問題は、あのゴブリンだよ。見た目、緑のおっさんたち…いや、ちっちゃくないよ?人間と同じ大きさで…皮膚だけ緑…あ、目が黒いのは同じだけど…
とにかくですね!気持ち悪い…リアル過ぎて気持ち悪いと言った方が良いのかな?ほら、ドルイドラビットはまあ…見た目は確かに大きくて驚いたけど、この緑のおっさんたちほど気持ち悪くはなかったし…
「…数が多いな」
「強いんですか?」
「個々は人間とさほど変わらないけど、問題は…人間と同じで悪知恵が働くことかな?見えるだけで20…恐らく、潜んでいるのも同じくらい数がいるだろうね」
「40匹いるってことですか!?」
それは確かに、気持ちわ…恐ろしい。おっさんが40人武器を持って殴りかかって来るようなものでしょ?・・・僕ならあっという間にやられるだろうね…
「潜んでいるのは弓使いと魔法使い…かな?」
「え!?そんな事も分かるんですか!?」
「いや、半分は勘だけどね?やつらの余裕そうな顔からそう予測したんだ。おそらく、押される演出でもしておびき寄せて一気に遠距離から集中砲火で…ってね」
「うわ…姑息な人間と同じ思考ってことですか…」
「そう言う事だよ。一番被害が出ているのはこのゴブリン相手が多いんだ。分かっていても、罠にかかってしまう人もいるからね…。さらにその上を行く、小狡いゴブリンもいるからね…」
「な、なるほどです…。それで、どうするんですか?40匹もいるとなると…」
「アルバーク、正面から突撃してもらってもいいかな?」
「それは構わないが…」
「その隙に、僕が潜んでるゴブリンを全部狩るよ」
「20匹全部ですか!?」
「今回は相手が人間じゃないから、これを使えるからね」
そう言って、腰から掛けている剣をポンポンと叩いた。…そう言えば、武器を叩き折る以外に武器使ってなくてあの強さだったね…
「それでも、気を付けて下さいね?」
「それはもちろん!それじゃあ、アルバークたちが戦闘を開始したら突っ込むからよろしく!」
「ああ、分かった。皆、聞いたか!相手はゴブリンとは言えかなりの数が居る…それに、やつらの連携は侮れん。だが、連携も練度も我らの方が上だと胸を張って言える!恐れずに戦え!家族のために!!」
「家族のために!!!!」
うわ!?びっくりした!?一斉に同じセリフを言ったって事は戦闘開始の掛け声なのかな?
「みなさん!気を付けて下さいね!!」
僕の声は一斉に陣形を整えながらゴブリンに向かって行く喧騒にかき消された。アルバークさんだけは手で応えてくれたけど…
激戦を予想していた僕だけど、実際に蓋を開けてみれば一方的だった。連携も、間の取り方もアルバークさん率いる警備隊員の方が上だった。それは、数がほぼ同じ現状ではこちらの圧倒的優位に繋がって来る。
策略のためか本当に押されていたのか、ゴブリンたちが後退していくが、その先にいたのはルーファスさんただ一人だった。近くには…うえ…血まで緑なんだ…えっと、とにかくゴブリンの死体しかなかった。
その時、ゴブリンは驚愕の表情を浮かべるとともに選択肢を迫られた…今まで劣勢で押されていた警備隊に再び突撃するか、仲間を一人で屠ったルーファスさんに挑むか…
ゴブリンは、迷わずに後者を選びルーファスさんに一斉に斬りかかった。・・・そこからは、またよくわからなかったけどあっという間にゴブリンが全員血だまりに沈んでいたとだけ言っておきます…
その鬼人のごとき強さに、屈強な警備隊員たちですら息を飲んでいた。でも、僕は嫉妬や羨望よりも…
「ルーファスさぁん!!恰好良かったですよ!!」
そう、声を張り上げて褒めたたえていた。自分では絶対に届かないであろう、強さの頂に居る彼に素直に憧れていたのだと思う。
「ありがとう!トワちゃんにそう言ってもらえると、頑張った甲斐があったと言うものだよ♪」
気が付けば、目の前でそんなことを言ってきた。相変わらず、異常な速度だよね…
「ルーファスさんの強さ異常です。マリーお姉ちゃんも強いですが、制限があるのに…ルーファスさんに制限とかないんですか?」
「それは秘密だよ?でも、どうしても知りたいのなら…僕を君の虜にしてしまえば教えちゃうかもしれないね?」
「あはは…それはまたの機会に…」
僕にハニートラップは無理だよ。女性歴数時間で会得しろとかね…
「またの機会も何も、そんなことは永遠に起こり得ない」
「え!?お姉ちゃん、起きてたの?」
「変態の気配が近付いたから目が覚めた。ルーファス、終わった?」
「うん、ゴブリンたちは始末したよ。そろそろ、僕たちもぼちぼち移動を開始したいけど…動けるかい?」
「…大丈夫、トワが肩を貸してくれれば…」
「任せて、お姉ちゃん♪私、全然役に立たないからそれくらいやるよ!」
「トワ…何て良い子!お姉ちゃんが一生守ってあげる♪」
そう言って、頭をなでてくるのは良いけど…歩き辛いよ?
「トワちゃんだけじゃ大変だろ?手伝うよ?」
「要らない。魂胆ミエミエ…私を支えるのを口実にトワの近くに…あわよくば、手が触れあってラッキーとか狙ってるに違いない」
「…マリー、本当に僕に辛辣になったね…。もしかすると、僕が狙っているのはマリーかもしれないよ?」
明らかに冗談で言ってるのは分かるけど、マリーお姉ちゃんにそんなことを言うと…?
「トワに手を出されたくなかったら、私の身体を差し出せと言うの?…何という、鬼畜極まる所業…」
「人聞きが悪すぎるよ!?僕、そんな事は一言も言ってないよね!?」
「お姉ちゃん!お姉ちゃんは私が守るよ!!」
「トワ…うん、二人で強く生きて行こう!」
「はい♪」
「トワちゃんまでそっちにいくと、僕の立つ瀬が無くなっちゃんだけど…」
「強く生きて行こう」
「アルバーク…そうだね…」
そんな冗談を言い合えるくらい、僕は心に余裕を感じていた。魔物は襲い掛かって来たけど、ルーファスさんとマリーお姉ちゃんが怪我もなく倒したし、きっとこれからも大丈夫!僕のスキルによる厄災も心苦しくはあるけど、この二人さえ居てくれれば大丈夫だよね♪
僕は、グダグダする事すら忘れるくらい浮かれていた。異世界に来て不幸が沢山襲い掛かって来たけど、全部払いのけてくれる人がいた。だから、これからも大丈夫だと…そう、楽観視していた。
そして、やっと駐屯所のある町へ着いた頃はすでに日が沈みかけており、慌てて町の門をくぐった。みれば、街は高い壁で覆われており、魔物の襲撃に備えているのは明らかだった。
「ようこそ、我らの町セルシュへ」
そう言ったアルバークさんは、町によほど自信があるのか胸を張っていた。そして、僕は異世界で初めての町に少し興奮気味だ。門の閉じる音を聞きながら、僕はこれからこの町で…異世界で起こることにひそかに胸を躍らせるのだった…
最後までお読みいただきありがとうございます。
体調悪化の一途…明日更新できなかったらすみません…




