第41話 風が吹いても、今は桶屋がそもそも少ない。
「……は?」
「だ~か~ら~、行かない。さらわれた生徒を助けるのは学校の先生たちに任せようって思うわけ」
深刻なまでの戦力不足の今、この発言は不謹慎極まりない。
「社長、話聞いてました? そのさらわれた生徒、テロリストの一人って言われているんですよ? で、今回はそれの拘束。助けに行くんじゃないんですよ」
「聞いてたよ。でも多分、鶴宮さんに同じ話したら、私と同じ結論になるんじゃないかなあ」
妙に自信満々の態度に、秘書は眉をひそめる。
「せっかくみんなに声かけてきてもらってるんですが? 暇じゃないのに来てくれたんですが?」
秘書が指さす方向には、10名を超える男女がいる。
「無駄足だったと?」
「そこまで言わないよぉ。ただ、今回は手を出さないでおこうかな、って話だ」
◆◆◆
「……鶴宮さん、本気ですか?」
「僕はこういう時にジョークを言えるほど器用じゃない。割と本気だよ」
「今鶴宮さんが軍を抜けたら、戦力不足以前に、暴走が加速する気がするのですが?」
一度戻った軍から、再び職を辞する。
それを聞いた直属の部下たちは、背筋が凍る思いがしていた。
「軍を辞めて、どうなさるおつもりですか? まだ学校襲撃の件も終わっていないのに!」
「あれは僕が関与しなくても、じきに終わる。少なくとも、1週間以内には」
「あなたの予想は今回ばかりは当てにできませんよ! いっつも肝心なことは最後まで黙ってるじゃないですか!」
「そうしないと、僕の思った通りには進まないしね。それに、今僕の考えを言ったところで信じてもらえないだろう。ただ、はっきり言えるのはさらわれた生徒は、本当にさらわれている。少し頭を捻れば、君たちの言う不可解な現象にもすぐに説明がつく」
異能力がある世界、何が起こるか分からないのだから。
絶対に起こらないことがあるとすれば。
死者の蘇生。
時間の移動。
記憶の操作。
これだけは、異能力をもってしても今だ実例がない。
そもそも、この能力が発現した人間は、いない。
「それでも、黒幕までは突き止められない。相当な綿密さだよ。手掛かりがぷっつり切れている」
「だから、軍を辞めてまで探しに行くんですか? でも軍にいたほうがそういうのはやりやすいんじゃ」
「いや、疲れたし、上にへこへこするのがバカらしくなってきたから」
まともな大人の回答ではなかった。
◆◆◆
「秋山の様子がおかしい?」
「ああ。さっきなんかメールが来たみたいで、それから落着きがないじゃん?」
「言われてみればな……」
伊藤に相談してみると、彼も同意見のようだった。
わずか数分前。
秋山さんはメールを読むと、青ざめてトイレに駆け込んでいった。
戻ってきたときも、その表情は暗いままだった。
声を掛けようにも、まるで人を避けるように距離を取っている。
「二瓶から脅迫でも来たのかな?」
「……一番仲のいい奴に何を脅迫するんだよ? 秘密の暴露大会か?」
しばらく見ていると、意を決したようにこっちに来た。
いや、俺に一直線に来た。
「ちょっといい?」
あれ、怒ってる?
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