72話
神星祭を終えて三日。そろそろ冒険者稼業再開である。
この休み中にCランクに上がるためにはこれから毎日依頼を受けよう、とおもったのだがこの間からの王族護衛やらなんやらがすべて日割り計算の指名依頼扱いになっていたらしく、ギルドに行くとギルマス室で事務処理でした。
「扱い上はこれでCランク依頼は達成だな。」
「というか、Dランク依頼分まで終わってますけどね」
本当だ、よく見たらぴったり必要数がそろっている。ドロシーとファムの分もきっちりそろっているのであとは昇格試験の模擬戦だけになっている。
「試験官って誰になるんですかね?カーンズさん?」
「いや、カーンズは今回は使わない。お前たちと仲が良すぎるからな」
質問にギルマスが答える。
あまり親し過ぎる者が試験官だと確かに信用できないものな。
「どうせお前たちの事だから今月中に試験を受けるんだろう?ちょうどダンジョン探索から戻ってきたパーティがいる。今回はそいつらに頼もうと思う」
「ダンジョン?!ダンジョンなんてあるんですか?」
勢いよく聞く。そのいきおいにドロシーたちは若干引いている.
聞けばこの世界にダンジョンというものは五つ。
初心者用というものはなく、基本的に上級者しか入ることを許されない。
何階層あるのか踏破もされていないダンジョンしかなく下層に行くほど強力な魔物、トラップなども多く慎重に挑まなければならない。
ダンジョンに挑むことができるのは探索者という資格を得た高ランクパーティのみ。
今回はその探索者のパーティが運よく王都で休息中だそうで彼らにお願いするらしい。
「まあ、カーンズなんかとは比べ物にならない実力者だからな。なにせ先の魔物の大発生の中で森から生還しているんだからな」
「へえ、すごいんですねぇ」
ギルマスの自慢にドロシーが相槌を打つ。
「だがな、変なこと言いだしてるんだよ。魔物が多すぎてかなり苦戦していたらしい。そうしたら森の中からすごい美人が出てきて魔物を一蹴しちまったってよ。リーダーはそれにひとめぼれらしい。王都への道を教えてくれたらしいからきっと王都にいるはずだって探し回ってる。まあ、だからこそお前たちの昇格試験も頼めたわけだからな」
「ああ、そうなんですか」
なんか乾いた言い方になってしまった。
ファム、ドロシー、ジト目でこっち見ない。ていうか似たような報告は受けたけどそんなことまで知らんがな。
昇格試験は明後日行わせてもらえることになった。えらく速いがそのリーダーさんが用事は早く終わらせて人探しを優先させたいからだそうだ。
でも一生探しても会えないよ?とは言えないのでどうしようもない。
待てよ?試験中にちらりと見えたりしたらどうなるんだろう?隙ができるか、それとも本気モードで一蹴されるかのどちらかも知れない。
「そういえば昇格試験って観戦とかできるんですか?」
「まあそんなに多くはできないがある程度の関係者くらいなら見ることはできるが、どうしてだ?」
「ああ、今回の試験を見せてあげたい人がいるんですよ。姉とかミュゼとかね」
「何企んでるの?」
後ろからドロシーが言う、ヤダナァナニモタクランデナイヨ
みんなから信用されていない視線を感じるがまあ気にせずに。
「まあヒルデ様に見てもらうのは構わないと思うわね。ミュゼもそれくらいなら見に来てもいいだろうし」
ファムは胡散臭そうに見ているがとりあえず同意してくれる。
「まあいいか、明後日の朝来てくれ、ここの鍛錬場で試験をするからな」
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その後少し打ち合わせをしてお昼過ぎに帰宅。
昼食を食べてからファムとドロシーにトレーニングルームにひっぱっていかれました。
「さて、洗いざらいはいてもらうわよ」
「今度は何企んでるのか、面白いことならきちんと混ぜてくれなくっちゃ」
キミタチ、俺が何もしないという選択肢はないのか?
まあ何かするので文句は言えないんだが、そんなにわかりやすいのかな?
というわけで
緊那羅王を二人の目の前で召喚。
もうばれてるし王都を守ってくれた神将であると紹介する。
ついでにそのパーティの人のことも問いただすが。
「すいません、人であったとは思うのですが特に気にしてはいなかったものでどんな風な人だったかは覚えていないのです。」
とのこと、感覚的には森で野兎が襲われていたので助けた、みたいなものだったらしい。
それに魔物殲滅で忙しかったので相手もそんなにしてなかったというが
「まあ、確かにこんな美人に助けられたら惚れるかもしれないわねぇ」
「綺麗で強いってやっぱり精霊様ってすごいのねぇ」
二人はしきりに感心している。
この世界神以外は皆精霊、眷属なのでドロシーへの説明も精霊ということで統一している。
というかなんでも神様で納得できる日本人感覚のファムや俺が異端なだけなのだけれどね。
「さて、これからが本題なんだけど、この薄紅を観戦させているとその試験をするリーダーはどんな反応すると思う?」
「そりゃ、いい所見せようと張り切るとか?」
ドロシーが上目遣いになって考えながら言うが
「貴方、試験官の集中力を削がせて試験に通ろうって考えてるんじゃ!?」
流石にファム、下地の知識が同じだけにズルもお見通しだな
「まああわよくば、はある。でもドロシーの言うとおりに逆にAランクの実力を十全に発揮する場合もあるんだよ。どっちに転ぶかはわからないな。」
いまいち信用してくれない目つきのファムに言った。
「それにこのままじゃそのパーティも行動がとれないだろう?それなら会わせてあげてスパッと振られればいいんじゃないか?」
ため息をついてあきれるファム。
「で、だ。その時はファムの侍女ってことで会場にいてほしいんだよ。最悪よく似た人とかごまかせるし、まあどうあがいても断ればいいだけなんだからな」
薄紅は困ったようにはにかんでいるが明確に嫌とは言っていないので協力してくれるだろう。
ドロシーはいたずらとわかったのか反対はなし。あとはファムの協力だけ。
「わかりました。私の家の従者ってことにしてあげる。但し、条件があります。」
条件?ファムにしては珍しいこと言いだすな。まあいい出来ることならんでもしてやろうじゃないか。
「明後日までにここにいる全員にソフトクリームを作ってね。食べたいのよ」
「おま、作るのどれだけ大変かわかっていってるのか?せめてアイスクリームで手を打って」
「ダメ、言ったらますます食べたくなっちゃった。バニラでいいからよろしくね」
一番いい笑顔で言いやがった。可愛いじゃないか。
バニラエッセンスってこの世界あるのかね?材料、その他探したら試験用の鍛錬できませんけど
「人となりは覚えていませんがそんなに実力者ではありませんでしたよ。主と比べると大したことはありませんが」
薄紅が言う。まあ強者なら覚えているだろうからそれはそうかもしれないけど、八部衆基準だからなぁいまいち信用できない。
しょうがない、明日は一日材料探しするから薄紅は少し二人の鍛錬に付き合ってやってくれ。
そう言い残しトレーニング室を出る。あ、部屋どうしよう?薄紅の召喚解除しないなら部屋も用意しなくちゃな。




