51話
王城にまたもやってきました。
前回と同じ部屋のよう。
違うのは待っていたのがいい年したおっちゃんであったこと。
まあとなりに相変わらず美少女がいるのでそれは良しとします。
ミュゼですよ。ジャンヌ様は今回はいません。
「よく、娘を守ってくれた、礼を言う。本来なら謁見の場を使うところではあるが事情が事情だけにな。このような場ではあるが感謝している」
まあお忍びで襲われたって形だからね公にできんわな。
「ジョアンナ様はいかがなされていますか?」
「少し意気消沈しているようだが問題はない。これに懲りて無茶を控えてくれればいいのだがな」
無茶ですか、でしょうねぇ。
「デビュタントも終えておるのに落ち着きもせず研究などと、困った娘だ」
ノブレスオブリージュですよね。
確かに王族ならば自分の趣味を優先はできない。王族、貴族は国の駒だからね。
まあ人の事は言える義理でも無いのだが最低限の子爵子息としての責務くらいは負っているつもりである
でも日本人ってそれに共感するのは難しいんだよね。
基本身分制度はないし、皇族は象徴だし。
そのイメージだけで生きて我を通すのはひずみが生じるなぁ。
あとは特に何もなく褒美をもらって帰ることになった。
といってもほしいものと言われたので特になかったんだけどね。
ドロシーは以前みたいに騎士の鍛錬に混ぜてもらえるようにお願いしていた。
ファムもそれに倣うようで二人で週一通うことにしたようだ。
此方としては特にほしいものもないのでお金にしておいた。
二人にはあきれられたが、いいじゃないか。あって困るもんじゃないし。
その後帰ろうとしたがうちの娘さんたちはミュゼに引き留められ泊まることとなった。
現状では同行していないが確かにミュゼもパーティメンバーなので情報共有も大事。
なのでミュゼに二人を任せ帰ろうとしたら騎士団長に捕まりました。
どうやら騎士団の鍛練に混ぜてくれるらしい。
ワーイ、タノンデナイヨ
ラチられました。
「お前さん一人送るより明日三人一度のほうが楽なんだよ」
いい笑顔で言われてしまいました。殴ってやりたい。
連れてこられたのは新兵訓練班。騎士団は入団から一年基礎訓練をし必要なレベルにまで自身を磨かねばならない。
まだ最初の夏なのでひよっこレベルの騎士というわけである。
「体験入団のラウルだ。今年の学院首席剣士でもあり冒険者ランクDの冒険者でもある。これから半日、普通に扱ってくれ」
午後からの参加なので体力訓練は終わって模擬戦などがメニューらしい。やられちまったよ
新兵は20人ほど4班に分かれて模擬戦を行う。
そのうち一つにに混ぜてもらい、貸出鎧をつける
鉄の胸当てとかあんまり付けたことなかったけど重いよね。
普段が皮鎧だから余計に思う。
「キミ、もしかしてアルジェントって兄さんいない?」
ひとりの新兵にそう聞かれる
「はい、アルジェント・シャロンは兄ですが」
「そうかい!僕はアルとは学院で同期だったんだよ。」
楽しそうにそういうこの人はオルバニーさん。
どうやら結構兄と仲が良く、冒険者パーティも一緒だったそうだ。
「兄と仲が良かったのによく騎士団に入れましたね?」
「ああ、もう聞いたんだね王女様との確執。でも心配ないよ、あくまで目の敵にしているのはアル個人に対して。そのほかには徹底して公平だったよ。それにあいつの実績に対しても何も文句は言ったことがない。あくまで個人的にってことだけだね」
それに騎士団は個人的にどうこうできるものじゃないよ。実力は必要だけどね。
そういって模擬戦の順番が来たのか人の輪に入っていった。
「ラウル、お前の番だ」
訓練の教官に呼ばれる。行くとなぜか4人くらいが対峙している。
「騎士団長から聞いている。お前の実力では4人相手であっても問題ないと」
あのおっさん何言ってやがる!面倒ごとに引き込むんじゃないよ
「まあ私としてもそんな無茶はしたくない、騎士団長の眼鏡違いで実力が伴っていないと認めるならばこの後は見学だけにしておいてやる」
「いいですよ、4人ですね。こちらから仕掛けてもいいんですか?」
不思議な顔をしている。まあそうだろうね。
ぽいっと放り込まれたいたいけな少年にわざわざ一番体格のいい4人を選んで威嚇してくるんだもんね。尻尾巻くと思われるとむかつくんだよね。
「あ、こちらが先手だと奇襲とか言われますもんね。先手はそちらからどうぞ」
教官と先輩はようやく喧嘩の購入意思が伝わったらしく怒りの形相で号令を出し、4人が突っ込んできた。
ダメだよ。固まり過ぎ。
便宜上剣の届く速さの順番に1から4番というが、1と2が接近しすぎ逆に4は遅すぎという布陣。
これじゃ魔物すら連携で倒せないよ。
1を体裁きで体勢を崩す。それだけで2とぶつかり無効になる。
それが3の進路を塞ぎ、先に4と対峙。剣の振りがぶれている。
怖がられてる?あっさり巻き込み払いで剣を奪い懐に入る。そのまま空いた左手で胸部に発勁。
吹っ飛んでいくけど鎧の上からだし大してダメージないだろ。
で、ようやく3が切りかかってくる。隙の見つけ方と言い切りかかるタイミングといい上手い。
「この中で貴方が一番の実力者ですね。」
疑問でなく断定でそうつぶやくと彼は少し口角を上げて打ち込んできた。
数度受けてから少し離れ対峙する
両手に剣を持ち直し正眼に構える。見たことのない構えに一瞬戸惑ってくれる。
それだけでよかった。あとはその一瞬に打ち込むだけ。剣の腹の部分で小手打ちする
「いいですか団長さん?、こんな感じで」
扉の方に向かって言う。開き団長さんともう一人強そうな騎士さんが出てきた。
驚くのは教官さんである。気づいていましたよ覗いていたの。
「いや、大した実力だな、ラウル。」
笑いながら言う騎士団長さん。ジト目で睨みながら
「この分も指名依頼であとで入れておいてくださいね」
ちゃっかりしてやがるな、と言いながら了承はしてくれたようだ。
タダ働きなんて御免だよ。
「さて、ただのDランク冒険者に4人がかりで勝てなかったわけだ。どう思うね?」
「そ、そいつが強すぎるだけです普通の者ならまずこちらに勝てるはずがないのですから」
教官さんは慌てている。まあちょっと規格外は認めるよ。八部衆直々の乱戦指導だったのでね。
でも
「騎士は決して相手の強さを言い訳にはできぬものだ。高みを目指し学ばねばならない。ましてや野にこれだけの実力を持つものがごろごろいるのだぞ。」
足音がして後ろを見ると新兵さんが皆整列している。
最後に相手をした新兵が一歩前に出て敬礼をし
「実力不足を痛感いたしました。なお一層の精進をいたします」
全員一斉に敬礼をする。いいんじゃない。きっと強くなるよ。
その後満足そうな団長さんに引きずられ執務室に。因みにもう一人いたのは副団長さんらしく教官さん共々指導内容を再考するらしい。
「すまなかったな、茶番につき合わせた。」
部屋に入りお茶を進められた。紅茶なので自分で入れて団長さんに渡す。
メイドさんじゃない人の入れた紅茶ってうまくないんだよ。これは料理スキルではないようでうちのメイドさんに習ってうまく入れられるようになりました。
「茶番っていうか起爆剤扱いですよね。」
最近騎士団新兵の質が上がらないのが悩みの種だったらしい。この10年くらい大きな争いもないことが原因かもしれないがやはりだからこそ気を引き締めなければいけない。だがどうすれば実感するのかと悩んでいた。
ところが女性騎士の方はこの一か月で急に士気が上がってきた。調べてみるとドロシーが鍛錬に交じったことが直接の原因だった。
ひたむき真摯に強くなりたいという少女に指導するうちにその熱がうつってきたとのこと。
そこで今日は急きょ捕まえ放り込まれたと。
俺は羊に言うこと聞かせる牧羊犬ですか?




