120話
翌日の昼過ぎ来客があった。
エレナさんである。
カインさんは一緒ではなく今日は一人で来てくれた
客間に通してお菓子を出す。
今回は普通にカステラである。
和菓子にも挑戦したいんだけど流石に小豆の代用品が見つからんのよ。
あんこがないとほとんどの和菓子が作れないからな。
しょうがないので日本人には伝統となって久しい洋菓子カステラである。
「本当に貴族なのね。カインもそうだけど貴方もどちらかといえば冒険者の方が似合っているわよ」
「わかってますよ、どうも身分制度ってものは身につかないですからね」
腹の探り合いである。
まあぶっちゃけ敵対する気ないんで本題に入りますか。
「きちんと紹介しましたかね?こちらはファム・チャーリス。当代のアルケー様の巫女です。今日、訪ねてくるあなたの力になるようにとお告げを受けてくれたのも彼女なんですよ」
「よろしくお願い致します。ファムです。ある程度のことはお告げで伺いましたが詳しい事情をお聞かせいただけますか?」
「あの、どこからお話すればいいか・・・」
「そうですね、お互いの信頼も大事ですからね。大丈夫ですよ。僕もこのファムもあなたと同じ転生者です。ご安心していただいて結構ですから最初からお話しください」
驚いているようだ。どうやら彼女は自分以外の転生者と会ったことがないらしい。まあ普通はそうだよな。俺だってどこかの誰かに会わなければここまで転生者と知り合うこともなかったかもしれないな。
「私の正体については聞いていますか?」
二人とも頷く、アルケー様のお告げのせいにはしているが実際はサトリによって暴かれている事実なんだけどね。
「小さなときから前世の意識はありましたからそれだけが違和感と思っていたんです」
彼女は話し出す
「五つくらいだったと思います。突然前世の意識が戻ってきたんです。でもそれだけ。特に何をしていたわけでもない一般人でしたから何ができるわけでもありませんでした。」
「田舎でしたので身を立てるなどということも考えることもありませんでした。引っ込み思案でしたので仲の良い幼なじみもなく年頃になれば近所の中年男のところに嫁に行かされました。」
ファムは真剣に聞いている。封建世界の田舎の集落ではまだまだこういうことが多い。
必要なのは子供を作ることだからね。集落の人口維持のために結婚をしないという選択肢はないとおもう
でも現代人感覚だと納得はしづらいかもしれないなぁ
「でも初夜の時に私の世界は変わりました。処女を失うと同時に情報が入ってくるんです。身体も組み替えられていくのを感じました。」
「夫となった男は気にしていないようでした。処女を抱いたことだけで満足できたのでしょう。でも私はそんなことを気にしている余裕もなく初めて上がってきた衝動を抑えるのに必死でした。」
「衝動?」
聞き返すと頷くエレナ
「そうです。私はずっと抑えていました。目の前の男を殺したいという衝動を」
その目はどこか暗い狂気が宿ってきたように見えた。
「ラミアとしての自分が元の人間としての自分を塗りつぶしていくんです。恐ろしい感覚ですよ。ただ私は前世の自分というものがあったので逆にラミアに塗りつぶされなかったのかもしれません」
「大なり小なり転生者にはアルケー様の加護がありますからね。そのおかげかもしれませんね」
ファムが言う、それに頷くエレナ
「ただ、暴力的な感情を抑えるのは難しかったのです。もう一度押し倒されたときにその男の顔を掴んで壁に投げ捨ててました。」
彼女は続けて話す。
明らかに人ではない腕力を目の当たりにした彼女はそのまま村から行方をくらませる。
それから数日飲まず食わずで山の中を徘徊していたところ偶然カインと出会ったらしい
「始めてカインを見たときに驚きました。一切衝動を感じなかったんです。そして話を聞いていくうちに彼がラミアの被害者であると聞きました。それで納得したんです。ラミアの欲求はやはり男を喰うためのものということに。」
彼と一緒なら人のままでいられる、そう思い無理を言い彼のパーティに入れてもらったそうだ。
半魔物の力もあり今ではパーティの中核にまでなったそうだが、異変は半年前に起きたそうだ。
「フェノムダンジョン近くの森で異色なラミアに遭遇したんです。姿は人型でした。金髪に長い髪。薄いドレスのようなワンピース姿、およそ森の中に似つかわしくない姿でした。」
「それでラミアとわかったんですか?」
「テレパシーのようなものでしょうか。彼女が話しかけてきたんです」
娘よ、私の為に食事を持ってきてくれたのか、と




