6話
「きゃぁ!」
森の中、突然声がする。男が振り向くと銀髪の美しい女が倒れている。
ズボン姿ではあるが、上はブラウス一枚。ボタンがはずれ豊満な谷間が覗いている。
何処のお嬢様かわからないが。なぜこんな森の中に?森の中には気配を感じない。突然現れたような気がするが人間が急に現れるなんてありえない。とりあえず何の力もなさそうな女だ。
女の色香に男は自らの役目も斥候としての矜持もすべて捨てて獣欲のまま女を押し倒す。ブラウスのボタンを引きちぎろうと胸に手をかけたとたんに意識が途切れた。
牛鬼の毒針が首に刺さったことに気づいたかどうか。
「この身体はご主人様の為だけのもの。貴様ごときが触れるだけでも万死に値する。ご主人様の恩情に感謝するがいい」
意識もなく牛鬼の糸に簀巻きにされる男に侮蔑のこもった目で言い放つ。
何処からともなく軍服の上着をとりだし羽織る。きちんとブラウスもボタンを留めなおし終わっていた。
「悲鳴を出させないためとはいえご主人様以外に谷間を見せるだなんて、嫌われないかしら」
ぶつぶつ言っている。それを簀巻きを作り終わった牛鬼が見ている。どこか可哀そうな子を見るような眼差しである。その視線に気づいたのか咳払いして少し赤い顔のまま彼女は言った
「さて、牛鬼。行きますよ。あとのゴミは一塊になっているようですからね。」
軽い足取りでその場から消える弐匹。あとにはもう人のいた形跡など全く残ってはいなかった
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「どうなってるんだ?」
獲物の馬車はなぜか止まっている。護衛は領兵のようだから間違いなく貴族だろう。
あの領は最近潤っているようだ。農作物は豊作、なぜか料理はうまい。
その秘密が領主にあるらしいということで子供を人質に取りたいらしい。
主の命とはいえ領兵が盗賊の真似など。おそらく一番被害が少ないであろうということで子供をねらう。
掠め取ることに躍起になるくらいならなぜ内政に力を入れないのか。いかん、あきれようとどうしようもない。我々のすることはなるべくけが人を少なく子供だけを攫うこと。それが唯一被害を減らす方法だ。
背後で人が動く気配がする。斥候に報告をもとめに行った使いが戻ってきたのかと振り返る。
言葉が出なかった、何だあれは?巨大な蜘蛛に牛の頭をつけた化け物を銀髪の女が従えている。
いや、それよりもすでにここに控えていた半数以上が倒れている。起きているのはわずか5人。
どういうことだ?10人以上を気づかれずに無力化したというのか?
隊長らしき男が剣を抜くと同時にそのほかも剣を構える。見たこともないモンスターであるがおそらく幻影であろう。すると女は魔術師。おそらくスリープの魔法だろうとあたりをつけ一斉に切りつけていく
隊長らしき男を中心に左右二人づつ同時五方向からの一斉の斬撃であった。
女はその美しい顔に似合わぬ凶悪な笑みを浮かべて剣を受ける。だが手ごたえはなく剣は素通りし姿が掻き消える。幻覚かと思うと同時二人が痙攣し気を失う。
蜘蛛のような化け物が後ろから首筋に爪を立てている。毒?と思った刹那逆翼のほうに鞭の大きな音が響く
そちらを向くと女が乗馬鞭を構えている。なんだ?なぜ鞭ごときで兵士訓練をした男が倒れる?
「貴様‼な・・」
言い終らぬうちに後ろから口、体巻き付いてくる。口をふさがれながらもそちらを見た。
意識が途切れるまでの間おそらく力の限り叫んでいたのだろう。
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「駄目ね、全然練度がなってないわ」
最後の男が気絶したのを見てため息をつく。もう少し骨があるのかと思っていたらまさか10人無力化するまで気づかないとは役に立たないにもほどがある。まあ気づいたからと思って初手は譲ってあげたのにかわして背後とられるまで隙がありすぎ。がっかりだわ。
牛鬼だけでも良かった気がするけどまあ私も尋問だけというのもストレスたまるものね。
まあこの最後の人が一番偉そうな人だし。あとはどうしようかないらないかな?
「とりあえずコレだけ置いておいて残りをどこか森の奥に捨ててきて。私はご主人様に連絡した後情報を吸い出しておきますから」
牛鬼は三人一纏めに括って順番に運び出した。
まあ能動的に殺さないけど生きる価値もないし死ぬのは勝手よね?
あとご主人様に念話入れたのになぜかあのアンバーがしゃしゃり出てきた。邪魔よ。私のそのポジション譲りなさい
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盗賊は無力化できたようだ。無事に出発する。
なぜかアンバーとダーキニーが言い争っていたような気がするんだが理由を聞いても教えてくれない。
まあいいか。
盗賊の潜んでいた辺りを通過するときに満面の笑みで手を振ってきた。
幻術でほかの人には見えないらしいので、とりあえず念話でお疲れ様、というと
チアダンスみたいに飛び跳ねて見送ってくれた。元気だねぇ。なんかアンバーがあきれてるけど。それがイヌ科とネコ科の違いなのかもしれない
そこからは無事に王都にたどり着いた。まあ本来貴族の馬車って襲うもんじゃないんだよね。
あ、因みにうちは子爵だそうです。そこそこ真ん中へんの位かな。とはいえ中央に食い込めるほどの爵位じゃないしやっぱり将来は冒険者一択かもしれない。
王都の家に着いたのはそれから一週間後。余裕を一週間ほどとってきたので一週間後に入学試験だそうな。
試験内容は、筆記と武技、魔法。おおファンタジーだ。
最高学年になったヒルデ姉さまにドロシーは最後の追い込み勉強を見てもらうらしい。
ん?おいら?流石にINT80オーバーは伊達ではなく一度読むだけで教科書丸暗記できました。
なので一週間のんびりしようと思ったら。ヒルデ姉さまにつかまり屋敷の料理人に新レシピの教授を命じられた。解せぬ




