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「君はただの人形だよ。」


多分、自分でも気づいていたけれど理解したくなかった、目を背けていたい気持ちがあったから考えなかったのだろう。

名前がわからない。昔の記憶が欠けている。ほんとはわかっていた。

でも、生きているからそれでいいと安直な気持ちのまま数か月を過ごしていたけれど

人形と言う言葉に対して、自分の存在を否定されたかのような気持ちになってしまう。



あなたに質問するけれど、じゃあアナタは何者なの?何でそんなことを知ってるの?



「僕は君だよ。いわばオリジナルだ、君が偽物だとしたら僕が本物。」



今更になって混乱してきた。時差ボケってやつ?ていうかここはどこだよ。死んだはずじゃないのか。フィリア達はどうなったんだ。考え出すとキリがない。



「それは僕に全部を答えろって事かな。遠回しに頼むんだね。やっぱり君は異常だよ。」



「仕方ないから教えてあげる。君は特別製みたいだし。」



仕方ないと言いながらも凄く説明したそうだ。面倒くさがる僕の性格と全く似ていないし、本当にこいつは僕なのか。




「それも含めてだけれど、まず1つ目が、ここは止まった空間と時間の世界。未来のフィリアが作った。タグをつけた人間が死ぬとここに自動的に送られるように設定されてある。1個1個突っ込まれていたら仕方がないから続けるよ。」



「次に、君は模倣物だと言った事だけれど、その通り。君は作り物で僕は何人も同じ『僕』を作っている。制作番号で言うと617...だったと思う。うん。君は617人目だ。そうしよう。」



「何でこんな事をしているかは、魔王を倒すためだ。結果から言うと、僕たちは魔王に挑戦した。が、負けた。強いなんてもんじゃない。戦闘機に生身で挑んでいるようなものだった、今のままじゃ勝てないと踏んだ僕達は閉鎖空間を作って、1からやり直しを始めたってわけ。」



「その代償に、僕は姿を失った。模倣物を作れる変わりにオリジナルは消えたってわけだよ。だけど君も知っている通り、何度作っても所詮はオリジナルの劣化にしかならないんだ。だけど僕たちは挑み続けた。」



「フィリアは時間を操作して戻す代わりに、記憶と大切なものが一つずつ消えて、寿命が減る。もうほとんど何もかも覚えていないだろうね。もちろんほかのメンバーも居たけれど、対価で消えちゃった」



到底僕には信じられないけれど、そうなると辻褄が合ってしまう。

フィリアが僕を守っているのは記憶が消えてないからなのか直感なのか、カラスを見たときの反応は、きっと過去に一度見たことがあるのだろう。




「簡単に説明したけれど今までの流れはこんな感じ、信じても信じなくてもいいけどね。それよりもここからが凄く大事だ」





「君は、異常だよ。」





オリジナルの僕の声のトーンが変わる。低く重い、疑惑と疑念を交えた声だった。




「オリジナルの劣化品にしかならない僕だけれど、君は僕と遜色がない、むしろマナに関しては優れている。ねえなんで?」



聞かれてもわかるわけないだろう、今の今までコピーだって知らなかったんだから。




「僕のマナは第六感の強化だったけれど、君はそんなレベルじゃない。」



「君は、『こうなるかもしれない、こうあってほしい』と思った事がそのまま現実に起きてしまう。だから君の言うカラスが2回目で現れた、あれは5,6日目で戦う敵だったはずなんだ。だけれど君の『死ぬかもしれないって相当強い敵なんだな』という気持ちが事象を操作したんだろうね。」



「僕はここから見ていて正直期待したよ。何もかもが思い通りなんてまるで涼宮ハルヒみたいじゃないか。もしかしたらオリジナルの僕を復活させてくれるかもしれないと思ったけれど、死んじゃったね。いや、あれは自殺と変わらないね。」



笑い声が響く。悲しい笑声だ。きっと、劣化品の僕に対する嫉妬とかではなくて期待を裏切られてどうしようもなくなった声なんだろう。



「もう、どうすることも出来ないね。ここに来た以上、ここからは出れないんだ。

閉鎖空間って言っただろう?自動的に送られるようにタグ付けは出来ても、出ることは絶対に出来ない。空間を操作出来るフィリアしか絶対にね。そのフィリアも死んだ。もうおしまいなんだよ。」



「お前が全部、『何をしても意味がない』って思ってしまった時点で、人類の敗北が決まった。フィリアが最後に何をしようとしたかわかるか?最後に力を使って時間を戻そうとした。それさえもお前が止めたんだ。」



「突然変異に期待していたがお前が人類の滅亡を促進させた。ほんとにハルヒみたいだな。違うところはお前にはキョン達は居ないってことだよ。」



高らかに笑う彼は、僕とは程遠い。600回以上、希望と絶望を繰り返していて、大切な人が目の前で消えるのを何度も経験してる彼と僕では別人である。





―――だけれど




ねえオリジナル。僕には仲間は居ない。けれど、仲間の力は借りることは出来るよ。

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