【3日目】「私が殺る」
教室の中で羽ばたいている黒色の物体。まるでカラスのような形状をしているが、全身が真っ黒で目や鼻などがない。あまりに異質な見た目に体が拒否反応を起こして逃げろと勧告してくる。
でも残念ながら逃げる訳には行かないしここで逃げたら明日は、明後日は生き延びれない。皆でこいつを殺す。やるしかないんだ。
話を切りだしたのは、意外にも相ノ木だった。
「あれ、どうやって倒す?」
返答に苦しみ皆が口を紡ぐが、カラスは考える時間など与えてやるかと言わんばかりに翼から羽を飛ばして来た。
刺さっても少し痛いで済みそうだが、毒なんて入ってた日にはおしまいだ。僕は『木』を発動してみんなの前に壁を作る。なんとか防げたが....
「ぼくっちナイス!侑太、さっきみたいにぶん殴れないの?」
ゆうたが答える前に、フィリアが口を挟む。
「それはやめた方がいいわ、木を見なさい。」
そう、フィリアの言うとおり僕も反対だ。
僕が羽を防いだ壁は.....『腐っていた』
腐敗臭が漂い、ドロドロと溶け始めている。もしアイツに触れても同じ事になるとしたら侑太は二度と拳を握ることは出来ないだろう。
「じゃあどうすんのよ!出来るものならアナタがなんとかしてよ!」
今は喧嘩している場合じゃないと僕が止めに入る。
「私が殺る。」
相ノ木がそう言うと....いや、言い争いをしていた時から準備をしていたのだろう。
相ノ木の周りだけとてつもなく温度が下がっており、空気中の水分が凍って結晶となって光っている。信じられないくらいのマナの純度にフィリアも目を見開いている。
「僕くん、見てて。」
周囲の冷気や氷が集まって、とてつもなく大きな『拳』が形成されていく。尋常じゃないマナの量だ、しかも驚くべきなのは彼女だけのマナでは無くて空気中に存在してるマナみたいなものも拳に集まってきている。
「しんじゃえ、『氷拳』」
そこには
カラスよりも一回り以上大きな拳が形成されていた。
ヤバい、これはヤバい。僕達まで巻き添えを食らい兼ねない。
逃げろと声をあげようとしたが遅かった。その巨大な拳には不格好な速度でカラスに突っ込んでいて発声する暇もなく、その爆風やら衝撃を身体で受け止める。
そこにあったのは、無様に潰れ、完全に氷と化したカラスの遺骸だけだった。どこへ行ったのか、黒板もイスも机も全てが吹き飛んでいる。レベルが違う。親友より、そして恋人よりも弱い僕が情けなく恥ずかしく思う。
「す...すごい」
はじめに声を上げたのはフィリアだった。あれだけ否定していた彼女も流石に感心している。
「わたしの必殺技。1回使うともうマナが切れるから本当に奥の手」
必殺技という名前負けしてないくらい圧倒的な威力だった。これからは怒らせるのはやめよう。
「君たちは化け物か...政府が言うことは本当だったんだな...最初はアホらしかったんだけどな。日本の高校生が要だと」
....今凄く重要な事を聞いた気がする。そのまま話を流させるかと僕は質問をぶつける。
「先生、それどういうこと?」
「ああ、実は....」
その瞬間、凍っていたハズのカラスが絶叫した。
つい反射的に耳をふさぐ。
「どうなってんだ!まだ生きてんのかよ!」
「あれを食らっても生きてるってどういうこと?前の巨人みたいに本体が居るってことなの!?」
違う、カラスはそれだけの個体で動いている。僕の直感がそう言っているのを皆に伝える。
「多分...違う、アレはアレだけで存在している。ただ、殺すにはもっと威力が必要なんだ...それこそ塵一つ残さないレベルの何かがいる」
「無理に決まってんだろ!あの氷を食らっても生きてんだぜ、どうやって倒すって言うんだよ!八方塞がりじゃねえか」
...八方塞がりではない、一つだけ方法はある。今はこれしか思い付かない....けど...これは...
「僕くん」
「フィリア、僕は」
「使って」
「フィリア!僕は!」
「使いなさい!」
身体が動かなくなる。...これで二度目だ
フィリアに無理やり『操作』されていると気付くのに時間はかからなかった。




