前へ目次 次へ PR 2/7 荷紐 私は何を恐れて生きているのだろう? テレビで有罪から無罪になった男が、叫んでいる。 会見で、その男の家族が、 「やっと」と、ハンカチで涙を拭う。 フラッシュがあちこちで焚かれる。 眩しい光が行く末に重なる。 リモコンで画面を黒くする。 その指は震えていた。 カーテンを閉め切った部屋で自分の呼吸音だけが広がる。 窓を開ける。 子どもの笑い声。 「また、はじまる」 明日、荷紐を用意しないと。 あの日の喉仏の感触だけが、消えない。