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拓海のホルン  作者: 鈴木貴
第4章 吹奏楽コンクールへ練習と準備の日々
128/132

128.怒号の音楽室—覚悟を問われる最後の合奏

「焦ってる時ほど、ロングトーンです。」


船田先輩が立ち上がり、静かにそう言った。


続けて、こう指示を出す。


「明日の午前中も合奏できる時間はありますが、実質、今日が練習最終日です。

本番のつもりで取り組んでください。

音出しも、昨日までは急ぎでやっていたと思いますが——。

今日は、出しやすい音からゆっくり、 上や下へ広げる感じで、丁寧に音を出してください。

30分、時間を取ります。 その後、ロングトーン練習をじっくりやります。」


そういえば——最近、ロングトーンをショートカットしていたかもしれない。

いきなりマウスピースを楽器につけて、 適当に音を出し、ロングトーンの時間を短縮していた。


音出しの時間に、譜面をさらうことを優先していた——。

あれがダメだったのか?


言われた通りに、出しやすい音から順に、上の音域、下の音域へと広げていく。


ゆっくり出してから、タンギングやリップスラーをやっていくと——。


調子が良い。


急がば回れ。

千里の道も一歩より。

塵も積もれば山と…これは違ったか。


その後、チューニングをして、 さまざまな調での音階ロングトーン。


これを2時間。

さすがに、へばる。

小休憩をはさみ、基礎合奏を1時間。


アイス休憩後——。


いよいよ、本格的に内田先生の合奏が始まる。


本番を想定した、課題曲と自由曲の通し練習——。


音を間違えると、キッと睨まれた。

ずっとそんな顔つきだった。 必ず、どこかのパートがやらかしているのだろう——。


演奏が終わった瞬間——。

内田先生は、これまで聞いたことのない、 ドスの効いた声で怒鳴った。


「音楽なめてんのか、ゴラ!」


音楽室が、凍りついた。

「疲れてますー。やっとの思いで出してますー——とか、どーーーでもいい。

そんなこと感じさせないぐらい、余裕を出せ!

今が全力か?

中途半端にやってるから、疲れを感じるんだ。

それとも——私の指揮が気に入らなくて、その程度の演奏なのか?」


そんなことはない——。

俺は、一体何を怒られているんでしょうか?


「まず、頭!全員、呼吸を見ろ!

棒の打点で鳴るように!


低音はコンマ1早めに!

あと、高音——。

今、指がもつれるってどういうことだ!


トランペット!

上がった音の音程が、全員違うってなんだ!」


全パートに、内田先生の怒号が飛ぶ——。


「ホルン!

オブリガードが全然面白くない!

もっと歌を伝える気持ちがないのか!

踊るような気持ちで、のびのびとやれ!

グリッサンドも——やるなら響かせろ!

ただ音出してますー、ほんとつまらん。

主張しろ、主張!」


うっ…。


内田先生は、一息ついて——しかし、まだ怒りの色を滲ませながら言った。


「今から5分、時間を取る。

その間に——今注意したことを、できるようにしろ!

その後、再度合奏!」


先生のキレた声に、部員たちは気合を入れて

「はい!」

と、力強く返事をする。


延々と、それが続く。


もう——途中から記憶がない。

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