表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拓海のホルン  作者: 鈴木貴
第4章 吹奏楽コンクールへ練習と準備の日々
107/132

107.演奏は全身運動

響きを意識した合奏練習で、課題が見つかった。


息を吸うタイミングや深さ、喉の開き具合が変わり、アンブシャーも自然と変化した。

疲れる箇所も変わってきた。


今までは唇や口の周りが疲れていたが、今回は頬から首、肩、背中、お尻、太ももにかけて、

軽い筋肉痛を感じた。


「自分は間違った体の使い方をしているのでは?」

と不安になり、合奏後、松下さんに相談した。


松下さんは、

「ざっくり言うと、演奏に必要な筋肉を今まで使っていなかったんだよ。

今回の合奏で初めて使った筋肉が痛くなったんだと思う。」

と説明してくれた。


さらに、

「関節や奥の筋肉、筋、そしてそれらを支える筋肉も今後変化していくはず。

一見関係なさそうな足の指まで変化する。

演奏に伴う体の変化に敏感になることは、とても重要なことだから、

ぜひ勉強しておくといい。」

とも話してくれた。


ホルンを演奏するのに、足の指の筋肉まで影響する…?


「はい」

と返事はしたものの、まだ混乱している様子を察したのか、松下さんが続けた。


「ボディマッピングっていうのを検索してみるといいよ。

あるいは、図書館で本を借りてもいいし、うっちーが何か持っているかもしれないから相談してみたら?」


「ボディマッピング…ですか?」


「そう、体の地図のこと。」


「なるほど、そういうことですね。」


「うん。演奏するときに、体のどの部分がどう動いているのかが分かってくると、音も変わってくる。

合理的に練習してほしいんだ。

昔の軍隊みたいに、『できなかったら100回でも200回でも練習しろ!』っていうやり方は、もうナンセンス。

合理的に、論理的に、体も精神も育てば、音楽はもっと豊かになる。

音楽と自分が一体になったら、今よりもっと楽しくなるし、伝わる演奏になるよ。」


「そんな考え方があるんですね…知らなかったです。

今まで、疲れてもロングトーンをひたすらやっていたんですが、

あまり上達しなかったのは、理論を知らなかったせいでしょうか?」


「いや、それは単純に初心者だからだよ。

ロングトーンの練習は、多少疲れてもやるべきものだから、間違ってはいない。

それに、前に来たときより確実に上手くなってるから大丈夫。

急いで理論を理解して、それに沿った練習をしてみるといい。

今、ちょっと無茶なことを言ったけど。」


と笑顔で言われた。


「はい」と答えながらも、無茶振りされたとは思わず、

むしろヒントと希望、そして自信をもらった。



自宅でタブレットを開き、ボディマッピングを検索する。

「演奏のために体を育てる」と書かれていた。


鍛えるのではない。


いかにリラックスした状態の体を作るか。

そして、その状態で演奏できるようにするか。


「自分が吹いているとき、どこに力が入っているのか?」

「それは正解なのか?」


読めば読むほど、混乱し始めた。


ただ、ひとつ分かったことがある。


俺は、演奏のとき、何も考えていなかった。


リフティングのような感覚で基礎練習をしていた。

無駄ではないけれど、もっと効率的に練習していたら、

もっと早く上達できたんじゃないか?


もがく時間より、音を合わせることや響かせることに、

もっと時間や労力をかけるべきだったんじゃないか?


…まあ、今からでもやるけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ