濃霧異変 32 御方による懲罰
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この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
「随分と苦戦したようだね。ルージェ」
御方と呼ばれる少年は、帰還した臣下にそう声をかける。
その膝の上には《赤の騎士》雅姫がちょこんと座しており、目の前のことには興味無さそうに足をぶらつかせていた。
ルージェはビクリと震えて一瞬足を止めたが、意を決したように歩を進めて御前に跪く。
「手前勝手に割り込んだあげく、いいように翻弄され、同僚の手を煩わせました。申し開きのしようもありません。いかような罰も甘んじて受ける所存です。どうか我が身に厳罰を」
御方は優しい。きっと許して下さるだろう。
しかし、それに甘えてはいけないのだ。
ルージェは、今回御方から罰が与えられないようであれば、自ら己に罰を与えるつもりだった。
「どうしても罰が欲しいみたいだね。キミがまたひとつ経験を積んだと思えば、僕にとっては充分プラスなんだけど」
ルージェのせいで致命的なズレが生まれたというわけでもない。
御方としては、わざわざ罰を与える程のことでもないと感じていた。
しかし、他の臣下への示しというものもある。
本人がこう言っているのに罰を与えないというのは、流石に示しがつかない。
「今一度ワガママをお許しください。主様」
こうまで言われれば、もはや罰を与えないわけにはいかないだろう。
「わかったよ。そこまで言うなら罰を与える。次のご褒美は無しだ。いいね?」
「ッ! お父様、それはあまりにも――!」
咄嗟に口を挟んだアルヴィーラだったが、御方に一瞥されて口を噤む。
「……出過ぎたことを申しました」
「いや、いいよ。でもね、これからは少し忙しくなる。謹慎させるわけにもいかないんだ。他に適当な罰もないだろう?」
ルージェは御方の役にたつことを何よりの喜びとしている。
休みを与えるなどと言えば、逆に悲しむくらいだ。
故に謹慎は丁度いい罰になるのだが、今回の一件で背理神陣営の動きも活発になるだろうことを考えれば、重要な戦力であるルージェに抜けられるわけにはいかない。
「懲罰、謹んで賜ります」
ルージェは恭しく頭を下げた。
異論は無い。主様と過ごせる時間が減るのには身が張り裂けるような思いだが、それだけのことをしたという自覚はある。
丁度いい罰だと思うしかない。
ご褒美とは、御方の臣下達に与えられる恩恵だ。
行き過ぎない程度の要望を御方が叶えるという抽象的なものではあるが、これは御方に仕える者達にとって最大の名誉であり実益だ。
ルージェのような超越の域に足を踏み入れた者達にとっては、これは「御方の時間をいただける」権利として認識されている。物質的な物を求める必要が無いからだ。
雅姫が御方の膝の上で甘えているのも、ご褒美の一環だった。
「それともう一つ。ベロニカとの約束を大切に思っていることはわかる。だけどね、今後また誰かとの約束が増えるようでは僕が困る……かもしれない。だから、今後僕以外との勝手な約束を禁じる。これも罰とする」
「なっ!」
ルージェは思わず顔をあげた。
敬愛する主様の表情は、変わらず優しかった。
「だから、どうしても約束したい時はご褒美を使いなさい」
ルージェはその意図を理解すると、顔を輝かせた。
「はい!」
それはつまり、制限にみせかけた公認だった。
ご褒美を使わなければ約束出来なくなるのではなく、ご褒美を使えば約束していいという許しを得たのである。
これにはアルファやアルヴィーラも納得の表情だった。
そもそも彼女らにしてみれば、御方が許すと言うのであれば否やはないのである。
それがご褒美を使うということになるであれば、もはやワガママでもない。
「では、本件はここまでとする。じゃあルージェ、早速仕事だ。ジェイナースに行ってくれ。そろそろ異形なる者共が馬脚を露わす頃合いだ。これを殲滅せよ。いつも通り、世界はどうなってもいい」
異形なる者共の神は、殺しても何故か別の場所で復活する。
殺してしまうと居場所が分からなくなるため、力を削いで撃退するに留めるのだ。
「はい! では、行って参ります!」
ルージェは上機嫌な様子のまま転移していった。
実の所、虹の九騎士は人手が足りていない。
九騎士はその名称の通り九人だが、異形なる者共の神は確認されているだけで12体、さらにはどうやらその上にもう2体いるらしいのだ。
ましてや、九騎士は何も異形なる者共の神にのみ対応するわけではない。
飛び抜けて強い九騎士は、さらに下の案件もこなさなければならないのである。
奴らは御方の配下では九騎士でなければ対応出来ない程の相手で、同時に全個体が暴れているわけでこそないものの、その対応はおいついていないのである。
今この場に九騎士が四人もいることですら、どれ程ぶりのことなのか定かではない。
「アルヴィーラも、忙しいところを呼び出して悪かったね。ありがとう。元の任務に戻ってくれ」
「はーい! 帰ってきたらご褒美ですからね! お父様」
アルヴィーラもそう言い残して転移していく。
「アルファもお疲れ様。よく休んで。褒美は何がいい?」
九騎士でも一筋縄ではいかない相手と戦った後は休息が必要だ。
異形なる者共の神と戦った後は、少し休ませて力を回復させなければならないのである。
しかし彼女は今回、休息を挟まぬまま派遣された。
褒美を与えるには充分だろう。
「では、メンテナンスをお願いします」
その答えに、御方は呆れた表情を見せた。
「またそれか。前にも言ったけど、メンテナンスくらいご褒美じゃなくてもするよ。他に望みはないのかい? 無欲は時に主を困らせるよ」
御方が先回りしてそう言うと、アルファは表情を変えぬまま答えた。
「では、当機に伴侶を」
その要求は、彼ですら想像しえなかったものだった。
「どういう風の吹き回しかな。キミはそういうことに興味が無いと思っていたけど」
流石の御方も即答を避け、意図を探りにかかる。
「人の営みというものを、学びたいのです」
「ほう。詳しく」
御方がそう促すと、アルファは語りだした。
「当機はこれまで、人々の営みを壊さぬよう、なるべく被害を抑えるように戦って参りました」
その声に不満は無い。
「しかし、当機は具体的に人の営みがどういうもので、どういう意味を持つのかを知らないことに気付いたのです」
アルファは元々は機械族だった。
機械族は広義における《人類種族》の中でも、具象神に次いで自我の薄い種族だと言われている。
機械族という種族は全ての世界に存在するわけではないが、存在する世界においては、一貫して古代人間族によって造り出された精緻を極めた兵器に魂が宿ることで始まる。
元々機械族には感情を宿す器官が存在しないため、感情が表に出にくい。
肉体に依存する通常の機械族はそれに引っ張られて自我が薄くなるのだ。
かつてのアルファもまた、そうだった。
「それで伴侶ね。かなり段階を飛ばしている気がするな……」
位階を重ねてアルファは精神生命体となり、肉体依存からは脱却している。
それでも長年染み付いてきたものは中々抜けず、今も感情表現を苦手としていた。
考えてみれば、アルファにはこれまで主と同僚と部下しかいなかった。
家族や友人と言えるような者はいなかったのだ。
その辺りの機微を理解していなくても仕方がないだろう。
「伴侶の前にもう少し段階を踏もうか。まずはアルヴィーラと友達になるところから始めよう」
元々アルヴィーラを創った理由の中には、アルファの友達になれる者を傍に置きたかったというのも含まれているのだ。
「友……達……? お言葉ですが主様、公主様は―――」
「僕の娘だから、主家筋だとでも言いたいんだろうけどね。あの子は確かに僕の娘だけど、九騎士として創ったんだ。キミとは同僚で、同格だよ。まずはその堅苦しい呼び方をやめて、名前で呼んであげたらどうかな」
アルファは無表情のまま僅かに思考してから頷いた。
「了解しました」
その返事に御方は少し安心する。
可愛い娘と大切な忠臣が仲良くなってくれれば、これ程嬉しいこともそうそうないだろう。
「うん。さて、じゃあメンテをしようか」
大変遅くなりました。次回から霊夢視点に戻る予定です。




