濃霧異変 30 超越の域に踏み込んだ者達の戦い
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この作品は東方Project様の二次創作です。
※オリキャラ多数
※独自設定多数
※キャラ崩壊そこそこ
※投稿不定期
以上の点に注意してお楽しみ下さい。
ルージェの伸ばした霊水の触腕が、今に背理神の喉元へと迫る……その瞬間。
背理神は編み出して以来使い道が無く死蔵していた技を繰り出した。
「無窮死生崩壊」
それは生と死を同時に与え続けることで対象の生死の概念を破壊して崩壊させるという、一定以上の出力で放てればまさに必殺と言える効果を発揮する技だ。
他の分霊にはとどかないため、一つでも分霊を用意されていれば殺しきれない。
だが分霊を用意出来ないような格下相手にはそもそもこんな手の込んだ殺し方をする必要が無いため、今まで死蔵してきたのだ。
しかし分霊を用意していないルージェにとっては、本来であれば即死級の一撃だ。
「(出力が足りぬか……)」
今の背理神は絞りカスのような分霊に過ぎない。
即死させるだけの出力は到底望むべくもなかった。
だがそれでも、放っておけば癌細胞のように確実に相手を壊していく。
命中すれば「手傷を与えた」と言えるだろう。
そうなれば、気位の高いルージェは冷静ではいられなくなる。
直接は精神に攻撃を通せない以上、こうやって相手の感情を利用する他ないのだ。
「(だが、あやつが攻撃に集中したこの瞬間を逃すのは……そう、もったいないというものよ……!)」
「っ!」
ルージェもようやく気付いたようだが、もう遅い。
気付いたとて対処出来ないだろう。
今のルーシェに出来るのは、自分が構築してきた精神防御を信じることのみ。
だが、対象の概念に直接働きかけるこの技ならば……。
本来なら触れなければ発動出来ない技だが、あの霊水はルージェの霊力のみで構成されている。
ほとんど拡張された精神体と言ってもいい。
接触の条件を満たせる。
「(仕方ないか! これは受けとめる!)」
ルージェが覚悟を決めたその時。
「ドンピシャリ! 流石はお父様!」
「!!」
神域の外から、一人の乱入者が現れた。
それは最速を求められて世に生まれた者。
《極克の最速機神》アルヴィーラ。
霊水に触れる寸前だった背理神の腕が半ばから斬り飛ばされる。
さらに間髪入れずに放たれた追撃を背理神はかろうじて権能で受け止めた。
「わきゃっ!?」
攻撃を受け止められたことで、アルヴィーラは情けない声をあげて派手に吹き飛ぶ。
慣性制御機構と慣性中和機構で対策してはいるものの、「最速」の攻撃の反動は完全には消せないのである。
「っ! 良くやったアルヴィーラ! そのまま神域を!」
危うく搾りカス程度の分霊に手傷を負わされるところだった。
もはや1対1に拘っている場合ではない。
アルヴィーラが来た以上、あと数手で詰ませられるだろうが、その前に妙なことをされてもつまらない。
「(一気に終わらせる!)」
「お任せあれ!」
アルヴィーラは吹き飛んだままそれに応えた。
「神域展開。簡易神域:律刻芻閉宮」
アルヴィーラの神域が、ルージェの《魔想権幻》と背理神の《背反宮殿》を飲み込み、空界を黒く染め上げる!
「これで……王手!」
律刻芻閉宮は極めて珍しい時間に干渉する神域だ。
神域とは通常なら自分の空界を作り出すものだが、律刻芻閉宮は時間軸を作り出す。
空間を横の広がりだとすれば、時間軸は縦の広がりと言える。
空間に作用する神域と時間に作用する神域は、交差こそすれ激突はしない。
二つの異なる神域は通常ならぶつかって押し合うが、それが空間に作用するものと時間に作用するものならば別だ。この二つは両立する。
空間系の神域で時間系の神域を阻むことは出来ず、その逆もまた同じなのだ。
アルヴィーラはこの性質を利用して、有無を言わさず背理神を自分の神域へと引きずり込んだのである。
「万象よ――停止せよ。《律刻》!」
カチリと、何かがハマる音がする。
時間の流れが急激に鈍化し、空間にある全てのものがグンと重くなっていく。
時間が本当の意味で停止することはない。
時間の中心、すなわち時を司る超越神クロノアのいる時針枢刻宮から放たれ続ける《齎刻の小波》の影響だ。
しかし、限りなく遅らせることは出来る。
瞬きするのにも体感時間で一億年かかるとすれば、それはもはや停止と変わりないだろう。
「(動けぬ……か)」
ここに来て、基礎的な能力差が響いている。
例え1億分の1まで減速されようと、ルージェには問題にならない。
余波で博麗大結界に傷を付けないようにとてつもなくゆっくり動いていた彼女にとっては、むしろ調整が楽になって有難いくらいなのである。
しかし背理神は違う。この分霊にそこまでの速度は出せない。
速度の差は、もはや埋めようが無かった。
「遠き悠き空寂の御座より御力を借り受け、永劫の果てまで滅びを与えん――」
ルージェはアルヴィーラに防御を任せ、トドメの詠唱を始めた。
「ちょ、ちょっと!? それ、制御は大丈夫なんですか!?」
言いながらも、アルヴィーラは護衛のためにせわしなく動きまわる。
背理神の淡々とした抵抗も《極克の最速機神》の前には意味をなさない。
「散りゆく者は理想を託し、継がれし理想は果てと進む。限りなく重なる屍は、理想を指し示す道標なり!」
極限まで鈍化した時間の中では網膜にとどく光量も減り、世界は色褪せていく。
そんな薄明の中で、なお色を呑みこむ暗黒色の法陣が現れた。
「闇より暗く、原初よりも古き無限の虚無。虚彩、虚構、虚言、虚編、虚園、虚栄、虚存……虚空。万象を呑み込む虚無の空界」
ルージェは答えない。自信が無ければ、こんな所で彼女ですら長い詠唱を必要とするような技を使うわけがないのだ。
「果てなき虚無の屍の山へ墜ちるがいい!
《虚惨屍墜焉》っ!!」
大変長らくお待たせ致しました。申し訳ありません。
まだ投稿ペースは戻せないとは思いますが、ぼちぼち書いていければなと思ってはいます。
気長にお待ちいただけると幸いです。




