終章
これでおしまいです。(とりあえず)
本当に書きたいモノを書いている途中で、いきなり天から降りてきた作品です。
(本当に書きたいモノがあるので)一気に終わらせたかった。なので、(かなり)テキトーなのかもしれませんが、とにかく本当に書きたいモノを書きたいので、(とても)一生懸命に(終わらせる為に)書きました。
終章 i'm looking for the one.
五人は有無を言わさず魔王に導かれていった。
第一門の手前に左に曲がり、そのまま真っ直ぐ行くと、行き止まりの崖に当たった。その崖の手前で馬車を置き、魔王は「降りますよ」と、言うと崖の小道を降り始めた。
「ちょ! ナニよココを降りるの!?」
テレコが魔王に言うも無視されどんどん先へと降りていく。他の四人もテレコと同じ気持ちだった。
「いったいどこへ行こうというのですか!?」
ブリトラは崖を覗いたが下は真っ暗で何も見えなかった。
「ワケわからなナイ」と、クロエモエは言うと崖の小道に踏み出した。
五人は何だかんだ言いつつも魔王に付いていった。
一時間ほどで崖を降りきると、ところどころ地面から白い煙が出て、先の見えない場所に出た。そこを躊躇なく歩き始める魔王。
「有毒ガスじゃないの!?」
エクストラが口を押さえた。
「大丈夫ですよ。ただの水蒸気です」と、魔王は後ろを振り返った。「ついてきなさい」
「本当ですぅ毒はぁありまぁせえん」
ジンジャーが鼻をクンクンさせた。
「狼がそう言うのなら大丈夫ダ」と、クロエモエが魔王の後に続いた。
「いや、大丈夫じゃないわよ! どこに行こうとしているのよ! いい加減にしてよね!」
汗だくのテレコは真っ白な霧に向かって叫んだ。テレコの横を「どんまいどんまい」と、クロエモエとブリトラが通り過ぎた。そして、ジンジャーが「おさぁきぃにぃ」とそそくさと霧に消えていった。
「ちょっと! 置いていかないでよぉ! ナニヨ! オカマなめないでちょうだい!」
霧は高温多湿で肌にまとわり付いてきた。これには魔王を含めて全員が不快になっていた。足元は5センチほどの厚さの泥で、歩くたびに靴はは埋まりグチョグチョと変な音をさせた。
「いつまで歩くんですか?」
エクスマリアがたずねた。魔王はしばらく無言で歩くと立ち止まった。
「ほら、見えてきましたよ」
目の前に大きな穴が、そう洞窟が現れたのだった。洞窟の奥からは、何かヒューヒューと音が聞こえた。
「さあ、行きましょう」
大きな洞窟はゆるやかな上り坂になっており、その洞窟を真っ直ぐ三時間ほど歩いた先に巨大な空間が現れた。
「ちょ! ちょっと! ナニよココ!?」
思わずテレコが叫んだ。テレコ以下、ブリトラ、エクスマリア、クロエモエ、あのジンジャーでさえ驚いた。それもそうだ、目の前には大きな龍が何匹もいるのだから。
「ドラゴン!?」
クロエモエが腰を抜かし座り込んだ。狐面で表情は全く見えないが、まだ十五歳には刺激が強すぎた。龍は伝説の生き物である。二百五十年前の勇者アルマスの戦い以降は全く語られることはなくなった伝説の生き物。見た者も全くいなかったので、龍は絶滅したという事になっていた。
クロエモエはふとテレコを見上げた。白目で口から泡を吹いていた。立ったまま気絶していたのだ。後の三人は寄り添ってブルブルと震えていた。
「こ、ここはまさか?」
クロエモエがハッとして魔王ににじり寄った。
「龍の巣では?」
「その通りですよクロエモエ」
魔王は平然としていた。そして、龍の中で最も大きな龍と見つめ合っていた。
常人であれば龍の目と合っただけで気絶してしまうハズだ。
急に大きな龍が笑い始めたたと同時に魔王も笑い出した。
「なんて愉快なのでしょう!」
ちっとも愉快じゃネエ。と、クロエモエは思いながら立ち上がった。その時だった直接頭に響く声を聞いた。
――我が名はウルスラ。アライの者と会うのは二百五十年だが……随分と弱くなったものだアライも。まあ、それはよい。とにかく貴様の命に代えてでも勇者を守るのだ。わかったな?
クロエモエは何度もうなずいた。
「さあ、行きますか」
魔王はそう言うと後ろを振り返り、気絶するテレコの前まで来てじっと見た。そして、テレコの頬にビンタを食らわした。
「い、いたぁい! ナニすんのよもう!」
「行きますよ」
魔王はきびすを返すと、居並ぶ龍を前に平然と先に進んで行った。
五人は恐る恐る魔王の後を付いていく。龍たちの視線を感じながら奥へと進む。どんどん奥へと進む。すると突き当たりに階段が現れた。
魔王は躊躇なくその階段を登っていった。五人も魔王に続き階段を登っていった。
階段は真っ直ぐに伸びていた。何時間が経過しただろうか。最初は文句を言っていた五人も最後はフラフラになって小言のひとつも言えなくなっていた。そして、その階段の終点の扉を開いた時に一同はその先の光景に仰天した。
そこは、現魔王の玉座の後ろだったのだ。現魔王は全身真っ白でぱっと見は若者の姿をしていた。金髪に優しそうな瞳をしていて、魔王というには少し方向が違いような趣があった。
「さあ、あなたたち……」
――魔王が後ろを振り向いた時だった。魔王の横を影が通り過ぎたのだ。
その影は玉座へと矢のように走っていった。プラチナブロンドの髪の毛が現魔王に飛び掛った。
玉座にいる現魔王の首筋に銀のナイフを突き立てエクスマリア・アスラムナインは叫んだ。
「お前たち動くな! コノ男前の命がどうなってもいいのか!」
現魔王の側近はうろたえ口々に「卑怯だぞ」と言うのだがイマイチ状況が飲み込めずにいた。
何故、いきなりこのような状況になったのかわからず側近たちは首をかしげていた。
「ブルーベーリーの香りがする」と、現魔王はつぶやいた。
「なに!?」と、エクスマリアはナイフに力を入れた。
「いや、恐らくだけれど君は朝にブルーベーリーサンドを食べたハズだ」
現魔王の言った事は当たっていた。だが、そんな事はどうでもいい事だったのでエクスマリアは無視した。そして、側近達に要求を突きつけた。
「コイツの命が惜しければ、金目のモノをよこせ!」
「それはつまり?」
側近たちはまだ状況がつかめていない。
「コイツが殺されてもいいのか!?」と、エクスマリアは叫ぶと、ブリトラに「ブリトラ! 指輪や首輪とにかくなんでもいい! 奪うんだ!」
「はあ? で、でも、えっ、えええっ!?」
ブリトラはワケがわからずその場であたふたし始めた。
「いいから早く! 私はオーロラシティを買い戻さなきゃならないのよ!」
「わ、わかったわよ」
ブリトラはエクスマリアがなんでこんな行動に至ったのかを何となく理解した。自らの行いで、失ってはならないアスラムナイン家の街を取り戻すのがエクスマリアの使命なのだ。
ブリトラは側近のもとに行き指輪や金目のものを出すようにうながした。側近はここで初めて現魔王を人質に、身代金を要求されていることに気が付いた。
「卑怯なり! このままで済むと思うなよ!」と、指輪やらもろもろをブリトラに渡した。
「はいはい」と、言いながらブリトラは金目のものを集めた。
「ここにいるはあの英雄タイガーの孫であるジンジャーと、アライ・ジ・サムライスウォードの子孫であるクロエモエ・アライであるぞ!」
エクスマリアは騒がしい側近に向け大声を張り上げた。
効果は抜群で側近たちはうろたえ始めた。タイガーとアライの名前は魔界では恐れられる存在だった。
「そして、私がモトリーとアルマスの子孫であるエクスマリア・アスラムナインです!」
エクスマリアがそう言うとロイエの間は静まり返った。側近は目を丸くさせ一言も喋らなくなった。アルマス、モトリーといえば魔界で一番の敵である。
「へえ~君があの勇者の子孫なんだ?」
現魔王は目を細めた。
「そうよ、驚いた?」
エクスマリアが意地悪く微笑んだ。
「いや、驚いたよ。君のほうからやってくるなんてね」
「どういう意味?」
「こういう意味さ」
エクスマリアは背筋が凍りついた。ほんの数秒前まで現魔王の首筋にナイフを突き立てていたのは自分だったハズだ。それが、今は自分が現魔王に首筋にナイフを突き立てられているのだから。
「立場が逆転だね」
現魔王が爽やかに微笑んだ。
「どうして!?」と、言いつつもエクスマリアはわかっていた。魔王がそう簡単に倒せない事くらい。かつての勇者でさえ七日七晩かかったのだ。
「いずれはやらなければならないコトだったけどね。まさかここで一気に始末できるとは。ボクは運がいい。英雄の子孫をここで根絶やしにできるとは。アハハハハ」
現魔王は高笑いをした。魔王として勇者と英雄を倒すことは魔王としての責務でもあったからだ。先代魔王の恨みを晴らすことができる。祖母の仇なのだ。
「笑いが止まらない!」
そう言うと現魔王は銀のナイフを高々と振り上げた。
「待ちなさい!」
魔王が声を張り上げた。
「ん?」
現魔王が魔王をじっと見た。そこには貧相な若者が立っていた。が、現魔王はその若者が掛けているメガネに見覚えがあった。
「んんっソレは!?」と、現魔王が驚きを隠せない。
魔王がゆっくりと現魔王のほうに歩いてくる。
「そこまでです」
魔王は現魔王の目の前まで来た。魔王の表情は無表情だった。
「キ、キサマは何者だ!?」
「ばあやに向かってキサマとはなんです?」と、魔王がふいにメガネのフレームの中央を右中指で押し上げた。「御久しぶりですねボウヤ」
「なっ!?」
現魔王が銀のナイフを手から落とした。その表情は思考が停止したのだろうか目は宙をさ迷っていた。
「さて、エクスマリアを放しなさい」
魔王がそう言うと、現魔王はエクスマリアから離れ彼女を自由にした。当のエクスマリアは目をパチクリして何が起こったのかわからない様子だった。
「今回は顔見せだけです。またいずれあなたを倒しにきますから」
魔王は現魔王にそう言うとニッコリと微笑み「帰ります」と、玉座の背後の隠し扉に向かった。
側近達が一斉に動き出すのを現魔王は「動くな! 追わなくていい!」と、制した。
これを機と見るやクロエモエはジンジャーに指示を出し、立ちすくむブリトラを担いで撤収させた。クロエモエは大きなテレコの手を引っ張り階段を駆け下りた。
みんな疲れた足を引きずりながら階段を下りる。そんな中で魔王が口を開いた。
「さて、みんな力不足なのはわかってますよね?」
誰も返事をしなかった。
「では、これから何をすればいいか答えは出ましたね」
魔王は誰も返事がなくてもそれが答えである事はわかっていた。
あれから十年後……
魔王は五人の仲間たちと共に魔界の七つの門を突破し、魔王城の『ロイエの間』にて現魔王と対峙した。
ここは天井までの高さが百メートル、広間周囲は千メートルはあろうかという圧巻の巨大空間『ロイエの間』である。そこの中央に煙と共に現れた六人。
身の丈一八〇センチ強はある全身白銀重甲冑の小太りのオカマ純白のテレコが「どこよここは?」と巨大な盾を振り回した。それを「落ち着きなさいよ」と、たしなめたのはすぐ左隣にいる、紫の法衣を着た美のエクスマリア・アスラムナインだった。
テレコの右隣には、頭に大きなトンガリ帽子、真っ黒なウィザードコートを着た『魔法使い』ブリトラだ。手にした杖に向かい呪文を唱えていた。まばゆい光が周囲を包み込む。
そのまた横には頭に狐面を被った長い黒髪の女がいた。ハーフフレームのメガネを掛け、黒地に赤の模様が入った和服を着崩した女は弓を引き、前方の標的を狙っていた。『坂東武者軍団』頭領のクロエモエ・アライである。
そして、その四人の背後に真っ白で大きな狼がいる。ジンジャー・イェンである。その、ジンジャーの背中に、相変わらず貧相なたたずまいをした若者が乗っていた。
魔王である。
ふと、魔王のメガネが光った。
「さあ、行きましょうか」
やっと本当に書きたいものが書けます。
これで成仏できます(笑)
なんとも言えないアレな作品ですが、読んでくれた方には感謝感激。ありがとうございました!




