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未来予知  作者: 李人
12/13

12.未来日記

「すっごい人多い! さすが、桜ヶ丘高校大目玉のステージ!」

 宮本の声に体育館の中を覗く。

 用意された椅子は全て満席。むしろそれだけでは到底足りず、奥や横に立っている人もいる。

「予約席予約席……あったよお二人さん!」

 前へ前へとずんずん進んでいく宮本の後ろをついて行くと、柊が取っておいてくれた予約席を見つけてくれた。

 予約と書かれた紙をどかし、椅子に座る。

 ステージの目次を持った先生が目次を配りに来てくれたので、三人分受け取り二人に配る。

 お礼を言い、貰った目次をパラパラめくり確認する宮本。

「香穂が出てくるのは二番目だね~。きっと裏で緊張してそう」

「大丈夫だろうか」

「佐久間君の中で香穂はどれだけ貧弱なのさ」

「千君お待ちかねの要人は五番目。最後は毎年軽音部の音楽で締めるらしいから要人のは最後の一つ前だね」

「お待ちかねって……」

「楽しみにしてるって約束してたじゃない」

「まぁ、そうだけど」

 話をしていると辺りが暗くなってきた。

 真っ暗になるとステージの一ヶ所に光が集まり脇から司会者が現れる。

 先程の宮本のように目次を話し、一番目のステージをするメンバーの紹介を始めると同時にカーテンが開かれる。

「どうもー! 一番手の演劇部、カッコBカッコ閉じ、でーす!」

 柊が言ってた、演劇部の片割れだろう。

 副部長らしき人が紹介をして、すぐ劇に入る。

 内容は殺伐系、でも時々面白味も入れるという飽きのこないものだった。

 三十分ほどで劇は終わり拍手で締め、カーテンが閉まる。


 次は佐藤のいるチアダンス。

 明るいポップ風の音楽と共にカーテンが開いていく。

 佐藤自身が言っていた通り、上に登ることも下で支えることもなくピラミッドの横で踊っている。

 音楽に合わせて動く躍りが全員揃うところはしっかり揃っている。一体感が素晴らしい。

 さすがはチアガール部だと感心した。

「you go win!」

 全員で声を合わせた決め台詞。

 感動と鳥肌を残し、カーテンが閉まる。

 そこでまた司会者が出てくる。

 次はダンス部。準備の時間稼ぎだろうか。

「ただいま」

「おかえり佐藤」

 先程までステージに上がっていた佐藤が制服に着替えてきた。

「良かったよ! 香穂!」「お疲れ様」

「ありがとう、緊張したよ~」

「凄かったよ」

「佐久間君……ありがとう」


「それでは準備ができたようですね! 始めましょう~!」

 司会者の一言でステージを向く。

 そのまま三番手のダンス部、四番手のファッションショーが行われ、いよいよ柊の出番。


「は~い! 一番手の演劇部Bの片割れ、演劇部Aで~す!」

 練習の時に見た通り、緑色の髪に蒼い瞳をした部長が一番手の副部長同様挨拶をする。

 姫役だというのを悟られないようにするためか、ドレスは着ずに体操服を着用している。

「頑張って練習したんだ! 見てってね~!」

 それだけを残して脇に隠れる。

 カーテンが開き、一番初めに出てきたのが衣装を着た部長の役である姫と剣士。

 練習で一度は見たこちらの演技。

 昔、城を抜け出した姫が出会った違う国の剣士。

 二人は友達になったが、それは剣士の芝居。その剣士に姫の命を狙われていると知った姫直属の騎士である柊。

 騎士は剣士に牙を向け倒すが友達を殺されたと思い込んだ姫は騎士を解雇してしまう。

 それからまた姫が剣士の仲間に狙われ危険に晒される場面があるが、柊ではない他の騎士では手も足も出ず、命の覚悟をしたところで解雇されたはずのその騎士が助けにくる。

 最後、誤解も解け姫とも仲直りできる騎士。という大雑把に言うとこんな内容だった。

 内容は覚えているが、今の演技の一つ一つに目を奪われる。

 衣装を身に纏っただけでこんなにも違って見えるのか。

「あなただけは必ず守り抜いてみせます、例えこの身が滅びようとも」

 自分の身を顧みず、姫を守り向く騎士・柊の決め台詞。

 胸が疼いたような気がした。

 男役を務めるために意識しているいつもより少し低めの声も。柔らかく微笑む瞳も。指先の一本一本でさえ。

 王子だとか騎士だとか、女だとか男だとか関係ない。

 柊要人だから格好いいと思うし、自然と輝いて見える。

 俺は演技中、ただ一人を目で追っていた。

「ありがとうございました!」

 その声と拍手で演技が終わったのだと我に返る。


 続けざまに流れ出す軽音部の音楽。

 ここまでくると、もう椅子など関係ない。

 誰からともなく立ち上がり、ステージまで走り出す。

 人の波に流れる間、目の端でうまくそれを避けステージから離れていく宮本を捉えた。

 その姿が気になって人波が落ち着いたところで抜け出し、後ろを付けていく。


 しかし途中で見失い、追うのは諦めて自分のクラスに戻った。

 誰もいない、静かな一年三組の教室。

 ふと展示物が置いてある机を見ると、展示した覚えのない日記が置いてあった。名前欄には“宮本歩夢”と書いてある。

 かなり古びていて何度も何度もめくったのであろう、端がくしゃくしゃになっている。

 よっぽど大切なモノなのだろう。

 もしかして、宮本はこれを探して走っていたのではないだろうか。

 だとすれば、渡さなければ。

 使命感からか、いつもは思い浮かばない言葉がスラスラ思い浮かぶ。

「渡しに行こう」

 置いておけば、宮本は取りに来るのではないか?

 勝手に持ち出していいモノなのか?

 行動とは裏腹で頭は至って冷静に物事を述べている。

 そして宮本の日記に触れようとした時、いたずらに風が吹き日記がめくれる。

 日記の日付には一月五日。

 今は十月。

 日記には、今ではない未来の日付が記入されていた。


 十月である今にとって、一月なんて三ヶ月も先。

 なんで、こんな未来の日付が日記として書いてあるんだ?

 悪いと思いながらも他のページを開く。

 十一月一二月一月……。過ごしたんだと分かる。

 ホオズキが来たこと。四人と出会ったこと。楽しかったこと。

 本当にこの日にこれがあったんだと思わざるを得ない内容だった。

 そしてその日記は、三月の初頭で終わっていた。

 最後のページはところどころ湿っていた。

 これは、涙の跡……?

「千君」

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