第64話 空音の意思
先程僕は自分や光沢と同じ様な存在だと自称する女子、花望さんに話しかけられた。
先の連絡の件もあり〇〇大学に行くのはもはや決定事項だ。
さてどうしたものかと悩んでみた所で答えは1つしかないのだ。
「空音…少し時間ある?」
「なに?」
もとより空音に話す以外の選択肢は存在していないのだから。
僕は空音に先程の話…それと兼ねてからの考えを打ち明ける為に彼女に話しかけた。
「少し良い?」
「大丈夫だけど?」
空音はダルそうに問いかけて来るが目は真剣だ。
僕の目をみて何かを察した彼女は席を立つと先んじて教室から出て行った。
それに続いて僕も彼女の後を追う。
相田君や朝咲さんは僕等に軽く手を振り「ごゆっくり〜」なんて言ってくる。
何がごゆっくりなのか…。
多分…いや絶対に変な想像されてるんだろうな…。
教室を出る時の何とも形容し難い空気を背にして僕達は人気の少ない校舎裏にやって来た。
いつもここは静かで秘密の話しをするのにうってつけだ。
「それで…何があったの?まさかまた変な奴に会ったりしたの?」
「うえ!?なんでわかったの?」
「え?もしかして当たってるの?……はぁ…なんでこんな時にだけ当たってるのよ…もう」
「え?もしかして適当?」
「適当に決まってるでしょ…そんな簡単に変な奴がウロチョロ出て来たら普通に嫌よ」
「あ…あはは…それはそうだね…」
「で?その変な奴って具体的にどう変なのよ?」
「単刀直入に言うと同類に会った」
「同類…?っまさか!?」
「うん、僕や光沢と同じ様な子…確か6組の花望芽郁って人」
「あぁ…花望さんかぁ…あの人が…」
「花望さんの事知ってるの?」
「名前くらいはね、そこまで仲良くも無いから詳しくは知らないわよ…明るくて可愛いから人気もあるって花織から聞いた事があるわ」
「そ…そうなんだ…」
「で?その花望さんが何言って来たの?」
「以前黒圭の存在を知ってる事やバグって言う超能力者の研究とか実験してるって人達に話しかけられ話をしただろ?多分その人達の関係者なんだよ花望さんは…光沢も僕と同じみたいになったし…その事を改めて話したいから…〇〇大学にまで来て欲しいって言われたんだよ」
「ふーん………てかさ?どうして花望さんがそんな仲介…橋渡し役みたいな事してるのかな?」
「え…?どうして…?」
「だって変じゃない?私達を籠に閉じ込めて実験用のネズミみたいに観察してる様な連中よ?花望さんは私達と違って向こう側と関係を持ってるみたいだしなんか違和感あるのよね」
「な…なる程…」
確かに言われて見ればそうだ。
花望さんは僕や光沢と自分が同類だと言ってた…空音が言うように向こう側の事情にも詳しそうだった。
自分から協力してるって事なのか?
「何はともあれその集まり?にあんたが行くなら私も行くわ」
「あっうん、実は言うと空音も来る様に言われててさ」
「私も?」
「空音は僕の事を知ってるからその…巻き込んじゃってて…ごめん」
「別に謝まんなくてもいいわ、私が私の意思で首突っ込んでるんだしね、それに私にだっていつ黒圭や闇沢みたいのが出てくるか分からないし良い機会よ、それよか〇〇大学よね?」
「え?うん。」
「〇〇大学は姉の志望大学なのよ…」
「っっ!!…それってつまり…」
「あのカス男のいる大学と同じって事よ」
「そっか……そっか!」
「圭?」
「色々あったけどさ…復讐しようにもあのエセ家庭教師は大学生だし近づくにも距離があるからどうしょうかなって思ってたんだよね…でもこれで大学の敷地内には楽に入れるしようやくあの男にやり返せるよ」
「………。」
「どうしたの?」
「ううん、ただなんかね…昔のアンタなら復讐なんて怖い事したくないって泣き寝入りしてたのに…変わったなぁって思ってね」
「………、そだね…黒圭のお陰かも知れない…本当は復讐してやりたい…僕と同じ…いやそれ以上の苦しみを味あわせてやりたいって本心ではずっと思ってたけど怖いしなんだかんだ僕みたいな奴にそんなの無理だって…出来る訳無いってずっと思ってたんだ…でも…。」
「……でも?」
「僕はもう昔の僕じゃない…泣き寝入りなんてしないし怖いからって逃げたりしない…僕はアイツ等に復讐するんだ…」
「……そっか…うん。良いと思うよ」
「そ…その為には…その…」
「何よ…?ハッキリ言いなさいよ?」
「……空音にはずっと見てて欲しいんだ…」
情けないと思う。
ここまで言っても結局は他人に縋る。
僕は臆病で怖がりで性根の所は何も変わらない…変わってない。
誰かに背中を押して欲しい。
大丈夫だよと支えて欲しい。
そうしないと前に向けないから。
勇気を出せないから…。
苦手な…苦手だった空音に頼る。
でも彼女は僕の欲しい言葉はくれない。
「いやよ…」
「だ…だよね…」
彼女はいつだって自由で我が強くて自信家で…だから僕の望む言葉なんてくれない。
「アンタだけに任せてなんておけないし私も手伝うわ…アイツ等に自分達が何をしたかって分からせてやるの!じゃないと私のイライラが紛れないもの!」
「え…ええ!?」
彼女はいつだって僕なんかの想像を軽く超えていくのだから。




