第49話 不安な心配事
政府公認の実験組織。
そんな物が実際に存在する事実に僕はどんな反応を示せばいいか分からない。
あれから無事に家に帰り着いたけど食欲が湧かない。
何を食べても喉を通らない、まるで胃袋がなくなってお腹に大きな穴があいたような息苦しさだけがずっと続いてる…。
親に相談しようと思っても喉から声が出ない。
相談…していいのか?
相談したら親が殺されたりしないか?
流石に大げさか?
でも何か厄介な事に巻き込まれて迷惑をかける事にならないか?
そもそも黙ってる事が迷惑に繋がるのでは?
そんな終わりの無い思考がグルグルと続いてる。
お風呂に入っていても全く落ち着かない…。
前の僕ならこんな時どうしてたっけ…?
そうだ…あの人…寧音さんに相談していたんだ。
僕はいつも寧音さんに相談して…彼女に助けられて…でも今は…。
グルグルと頭が思考を繰り返す。
それでもいい考えなんて生まれる事は無くて…。
思考はあの女性の言葉…先程の会話を思い出す。
「はっきり申しますと従う事に多くのメリットがあります、私は従う選択が賢い…無難な物になるとおもいますがね?」
「……どんなメリットがあるんですか?」
「このプロジェクトにご協力してくださるのなら貴方を政府直属の雇用社員として扱います。多額の給料も支払いますし多数の保証も用意します。あとこれまで通り学校にも通ってもらいます、貴方の仕事は普通に学校に行く、それだけで構いませんので。」
「そりゃまた…よりどりみどりですね…」
政府直属の雇用社員。
多分父さんの手取りの数十倍は支払われそうだ…ただの一般人の子供がテレビで見る政治家と同じ金額をもらえる…まさに阿呆みたいな話だ…尚更現実味がない。
「それだけ貴方に価値があると言うことですよ」
「僕じゃなくてもう1人の僕に…ですよね?」
「同じですよ、もう1人の彼を目覚めさした、それだけで貴方にも価値がありますよ」
そんな会話をしたあと
「それではまた近い内に」
とあの人達は言い残して何処かに消えた。
あの人達が光沢のハーレムメンバーにいたのも多分僕と光沢を監視する為なのだろうか?
多分そうだろうな…
光沢に惚れている様子も無く黒圭に惚れてる感じにも見えなかった…
「いや…黒圭の能力が効いてない!?」
今にして思うと多分あの人達は…
色々考えながら部屋に戻ると丁度そのタイミングでスマホが振動を始めた。
確認すると空音だった。
「空音…か…」
変な話だ…。
少しまえまでは空音の顔を見るとつい視線を反らして避けていたのに今や安心感すら覚える…。
僕も変わったものだ…。
スマホを通話モードにして電話に出る。
「はい…」
「ようやく繋がった!アンタ今日何処に行ってたのよ!」
「あぁ…ごめん、どうも黒圭が出てたみたいで覚えてないんだ」
「そうなの?…まぁそれじゃ仕方ないわね」
思わず嘘を付いてしまった…。
でも全部が嘘じゃない。
半分は嘘だけど半分は本当だ。
覚えてない所もある。
しかし彼女は僕の事を心配してくれていたんだな。
昔は追い掛け回されて怖いと思ってたけど今にして思うと空音は僕を純粋に心配してくれてたんだ。
今にして思うと純粋に僕の事を心配してくれていたのは空音だったのかもな…。
空音にこの事を話すか…どうするか…。
「………」
「どうしたの…?」
「え?いや…」
「なんか隠してる?」
「え…?そっそんな事は…」
「嘘ね!アンタ隠し事してる時黙り込む癖があるじゃん」
「………」
空音には敵わないな…
黙ってる選択もあるのかもしれない。
でもクラスメイト全員が関わる事になるなら空音だって無関係じゃない。
空音にも共有しておくべきなんだと思う。
僕は空音に今日出会った2人の事を話す事にした。




