第10話 登校
朝、誰もが憂鬱そうな顔で決められた道を歩く。
一部では楽しそうにキャッキャと騒ぎながら歩く人達もいるけど誰だって朝は憂鬱だと思う。
僕もその一人だ。
元々学校は好きではないしいつも行かなくても良い理由を模索しているけど結局はそんな都合の良い方法なんて思い当たらず決められたレールにそって歩くしかないわけだ。
しかし今回学校に行きたくない明確な理由がある。
いつもは何となく行きたくないって自分でも下らないなと思う理由だけど今回は明確な理由があるんだ。
「はぁ…憂鬱だな」
「何が憂鬱なわけ?」
「え…?いや別に…」
「別にじゃないでしょ!あんたは本当に言いたい事があるならねぇ……はぁ……」
彼女、雪坂空音の存在がだ。
彼女は肩から力を落とす様に項垂れる。
なんと彼女、僕が休まないように(サボらないように)わざわざ家まで迎えに来て親の許可を貰って家に上がり込んでいた。
まるで昔のギャルゲー幼馴染ヒロインみたいだ。
しかしそんな甘ったるい物を期待する程僕は馬鹿じゃ無い。
僕は昨日、学校を休んだ。
あの後親に無断で学校を休んだ事を怒られその後滅茶苦茶心配された。
今から病院に行こうと言う親を必死になだめなんとか今に至る。
「寧音の事なら気にしなくてもいいわよ…って言っても今は無理だろうと思うけど…その、そういうものだって踏ん切りを付けるしかないわよ」
「……そうだね…」
「ねえ?アンタはどうしたいの…?こうしたいとかあるの?」
「どう言う事?」
「もう一人のアンタ…アイツは復讐するみたいな事を言ってた…アンタはどうなの?」
「僕は…正直何もしたくないよ…何も考えたくない」
「そ…まぁアンタがそれでいいなら私は何も言わないわ…アンタが後悔しない様にすれば良いと思う」
「………」
意外だ…。
正直女々しい!シャキッとしろとどやされると思っていた…だからこの反応は予想外だ。
「なに意外な物を見る目してんのよ、私だって空気くらい読むわよ」
以前にも言ったけど空音は人気者だ。
校内ではダウナー系の面倒くさがりキャラで通っているけど友達も多いし告白も頻繁にされている…らしい。
噂で聞いた程度で実際は知らないけどまぁ多分間違った情報じゃ無いと思うくらいには空音は美人だ。
だから尚更僕なんかに構うのかが分からない。
「空音はさ…どうして僕に構うの?」
「はぁ?」
「あっいや…」
「ただ聞き返しただけでどもらないでよ…はぁ…別に対した理由じゃないしどうでも良いじゃない」
「……だよね…」
会話終了。
でもこのままじゃ良くない…間が持たない。
何か話題は…。
「僕は…やっぱり復讐するべきなのかな?」
って何を聞いてんだよ僕は…さっきしないって言ったばかりなのに…。
「あんたねぇ…さっきしないって言ったばかりじゃん」
「あ…うん…」
ですよねぇ…そう言われるよねぇ…
とうぜんだよねぇ…。
「でもまぁ…したいなら応援はするわよ」
「え…でも…」
僕の復讐を応援するって事は実の姉、寧音さんの恋を否定する事だ。
それは妹的にどうなんだ?
「アンタが寧音の事を好きなのは知ってるしアイツもアンタの気持ちには気付いてた筈よ」
「え…?」
「でもアイツはアンタの気持ちを知りながらそれを弄んだ…許して良い話しじゃ無い!」
てか空音は僕の気持ちを知ってたって事?
なにそれ超恥ずかしい。
そして空音の発言に聞き逃してはならないワードはまだあるんだ…それは…。
アイツもアンタの気持ちには気付いてた筈って所だ。
「…気付いてた…」
「そうよ…根拠も確証もぶっちゃけないけどね」
「え?ないの?」
「無いけどわかるのよ…一応私達って姉妹だから…なんとなく…分かるのよね…」
「そ…そういうものなんだ…」
姉妹だからって相手の気持ちが分かるものなのか?
正直以心伝心なんて有り得ないと思う。
そもそも僕の勘だけど雪坂姉妹は仲が悪い。
以心伝心なんて言葉とはもっとも程遠い。
空音の言う何となく分かるってのはただの勘に過ぎないのだろう。
所謂女の勘…みたいな?
そんな事を話しながら僕等は揃って学校に向かった。




