第9回 顧雍、左司馬となる
顧雍は、会稽郡の都尉である馬同の協力を得て、懸案であった会稽郡の治安向上に成功し、孫権に復命した。孫権が言う。
「元歎よ、私の期待以上の成果、よく挙げてくれた。」
「いえ、これも私を信用して全権を頂いたおかげでございます。」
「そうか。特に、時間をかけても徹底した王朗関係者による反乱軍の鎮圧、かたや、武を用いず、己の人間力だけで山越王と対等の関係を築いてきた交渉術、本当に見事であった。」
「身に余るお言葉、光栄でございます。」
「これだけの功績を挙げた者を登用しないわけにはいくまい。会稽の民からは、元歎を太守にして欲しい、という声が大きいようであるが、元歎、お前はこれより私の側で左司馬として働いてくれ。」
顧雍は拝礼して、退出した。
今までは、孫権軍の「会稽郡」の属官であったところ、今回の任命は「中央」での任命という位置づけになり、会稽郡丞よりは格上の官職、ということになる。
孫権は、軍事経験が無いにも関わらず、会稽郡の駐在している軍を動かし、そして山越に対しては武を使わず言葉で解決してきた顧雍の才能を高く評価した。そして、今のうちに軍政の経験を積ませることにしたのである。
顧雍は趙元に言った。
「本日、これより左司馬としてこの呉郡で精進せよ、との命を頂いた。」
「本拠地での左司馬と言えば、軍政の事実上の筆頭の様なものではございませんか。ご栄転、おめでとうございます。」
「うむ・・・。しかし、もう少し会稽郡に関わりたいと思っていたのだが。」
「会稽郡には、都尉の馬同様がいらっしゃいます。治安の維持、向上について特段心配する必要はないのではないでしょうか。」
「そうか、確かに馬同殿がいれば心配することは無いか。」
「はい。馬同様の威令は会稽郡駐留軍に行き渡っております。見事お役目を果たすことでしょう。」
「そうだな。こちらは、こちらでやれることをやっていこう。」
こうして、顧雍は左司馬として孫権軍全体の軍政を見ることになったのである。




