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私、クララ・ベネットは、辺境の実家に帰っていた。
王都にある婚家の公爵家には離婚届を置いて来た。
この離婚届は強力な魔法がかかっている。
夫が届けを確認してから24時間以内に妻が離婚届の破棄に同意しなければ、自動的に離婚が成立するという物だった。
実家に戻って3日目だ。
離婚は成立したのだろう。
……した、はず。
ちょっと自信ない。
もし、離婚がまだ成立しないとなると、夫が離婚届をまだ見ていないということだ。
つまりは、愛人の家にまだいて、一度も公爵家には帰っていないという事。
さすがに一か月以内には一度くらいは家に帰ると思うけど……。
この離婚届、強力なのはいいんだけど、離婚が成立したのかどうか、分かりづらいのが難点ね。
魔法使いが言っていた、
『離婚が成立したらお知らせが行くオプションもお付けできますよ』
と言う言葉を秒で断ってしまったことを今頃後悔する。
でも、オプション高かったし……。
魔法使いのお店の隣がドレス屋さんで、可愛いドレスが並んでいた。
もう王都には二度と戻るつもりがないから、思い切って資金の限界までドレスを買って辺境まで戻って来たわ。
「可愛い! さすが王都のドレスね!」
と、姉のヘレンと、二人の妹ジュリアとマルタには好評だ。
買って良かったわ。
もう一人の妹のソフィーにも早く見せてあげたい……。
やっぱり辺境で五人姉妹で楽しく過ごしてる方が私には合ってたのよ。
何で、王都の公爵様なんかと結婚しちゃったのかしら?
たぶん、ドラゴンの所為ね。
まあ、そんな事は今はどうでもいいわ。
ともかく、離婚は成立したの——?
◇
離婚が成立していたら、後から離婚成立書類やら何やら、色々な物が届くから、最終的には分かるらしいんだけど。
なにぶんお役所仕事で届くのが遅い。
王都で知り合った離婚した令嬢は、半年後に届いて、次の夫の子供を身ごもっていたらしい。
まあ、彼女の場合は、自分で王城に行って問い合わせて、離婚成立を確認した後だから問題がなかった。
私の場合は、辺境で簡単に確認しに行けないから、半年後に身ごもって離婚が成立してなかったら目も当てられない。
いや、相手はいないけど。
「王太子と公爵様が奪い合ったクララお姉様なら、離婚後も辺境ですぐに新しいお相手が見つかるのに、離婚って大変ですわね」
妹のジュリアが言う。
「取り合ったて言うの? フレデリック……王太子にも、結婚は申し込まれたけど……」
「一緒に辺境を訪ねてきた親友の二人から、同時に結婚を申し込まれるなんて取り合われてるじゃない!」
姉のヘレンが言う。
……同時に申し込まれたからって、私は迷ってなかったし……。
フレデリックには悪い事をしたわね。
……もっと私と話したかったみたいなのに、私はすでに夫のコンラートを選んでいたから、ほとんど話せなかった。
一緒にドラゴン退治の冒険している間は、フレデリックとも話したけど……冒険が終わったら様子がおかしくて話も出来なくなったのはフレデリックの方なのに……結婚を申し込まれるとか。
もし、あの時にフレデリックを選んでいたら……って、あれだけ情熱的に迫ってきたコンラートだって結婚してすぐに愛人の家に入りびったって帰って来なくなるんだし、誰と結婚しても同じよね。
「私はこの辺境で五人姉妹でドレスの着せ替えして遊んでいる時が一番楽しいもの」
「ふふ、私もそう思うけど、おばあちゃんになってもそうしてるわけには行かないし」
「別にいいと思うけど……」
「あーあ、二人の王子様に取りあわれてもコレかぁ! 羨ましかったのに!」
末の妹のマルタが言う。
「……ソフィー姉様なんて、羨ましすぎて部屋に引き篭もっちゃってるし」
ジュリアが言うけど、
「ソフィーは元から病弱であまり外に出て来れなかったじゃない……」
「でも、病弱だからこそ、二人の男性の結婚を申し込まれた姉と自分を比べて悲観してるんだと思うわ」
……それはあるのかも……。
優しいソフィーが離婚すると言って戻って来た私にまだ会いに来てくれない。
「だから、今度の夜会にはみんなでまた行きましょうね、クララ姉様!」
「王都で買って来た新しいドレス着ていい?」
ジュリアとマルタは、男性よりドレスがいいらしい。
「私には一番いいドレスを貸してね!」
ヘレン姉様は本気だ。
夜会は良いけど、それまでに離婚成立してるかしら?
そんな話を姉妹たちとしていたら、メイドが駆け込んできた。
「大変です! クララお嬢様! コンラート・ランカスター公爵様がお見えです!」
「え!?」
夫のコンラートが!?
ちょうどいい、離婚が成立してるか確認できる!




