#20 封印の祠防衛戦—参—
「レイ。大丈夫かい?」
アクタがうずくまるレイに近づいて手を取った。
「アクタ……無事だったの!?」
「ああ。君にも話したいことや聞きたいことはたくさんあるけれど、今はこの状況をなんとかしなくちゃね」
アクタに腕を引っ張られてやっとの思いでレイが立ち上がる。
「おやおや、アクタにマッチョじゃないですか? あなたたちはGHに除霊されたのでは?」
「ははっ、なんとかね。逃げたのか逃がしてもらったのか。それに、仲間たちを置いて勝手に消えるわけにはいかないからね」
アクタがピエロに向かってニッと口角を上げてみせた。
「その通りだ!! そして! ワタクシたちは君のことを倒すまで、この世を去ることはできない!!!!」
マッチョはピエロに人差し指を差しながら言った。
「仕方ないですねぇ。もうゲームは終わらせるつもりだったのですが。第二幕の開演といきましょうか」
ピエロの周りに泣顔ピエロ、怒顔ピエロ、笑顔ピエロ、楽顔ピエロが集まる。
「アクタ、マッチョ、気をつけて。ピエロは分身たちと視覚を共有しているかもしれないから」
「なるほど、そうだったんだね。……ところで、あそこに居る彼女は?」
アクタが神器の弓を構える美波の方を見て、レイに問いかけた。
「大丈夫。一応……味方だから」
レイの言葉を聞いてアクタは「そうか。それは心強いね」とにっこり笑った。
ピエロがレイたちの方へ向かって、腕を突き出す。
「さあ、俺の可愛いピエロちゃんたち。やってしまえ!!」
四体のピエロが祠へと向かって突進するように走り出した。
「えーん、えーん」
「ふんふんふんふん」
「わはははははは」
「すいー、すいー」
それらを、レイ、美波、アクタ、マッチョ、お嬢が迎え撃つ。
「マッチョさん! 後ろ!」
「任せたまえ! お嬢少女!」
「レイ! 援護します!」
「ありがと。アクタ、挟み撃ちされてるよ!」
「りょーかい! サンキュー、レイ」
レイたちとピエロたちは混戦状態となった。
「あんたらが視覚を共有しているならば、こちらも仲間同士で連携をとるまでだ」
春明がピエロに向かって、ヘラっと笑いながら言った。
「全く小賢しい奴らですねぇー」
ピエロは少し顔を曇らせる。
「おっと、流石のあんたも少し焦ってきたか?」
「いえいえ焦ってなんていませんよ。ゲームショーが盛り上がるのは大歓迎です」
「はっ、減らず口が叩けるのもここまでだ。すぐにこのふざけたゲームも、あんたのことも終わらせてやるよ。白虎!!」
春明が形代を上に投げると、そこに体長三メートルほどの大きな白い虎が現れた。地に着地した白虎が春明の背後で空気を振動させるほどの咆哮をする。
「それがあなたの切り札って訳ですか。いいでしょう! 受けて立ちましょう!!」
「行け! 白虎!!」
春明が叫ぶと、白虎はピエロ目がけて猛突進して行った。白虎がピエロの目の前で前足を振り上げる。そして、それを思い切り振り下ろした。
「おおう」
ピエロは白虎の攻撃をくるりと躱した。白虎は目でピエロのことを追いかけてすぐに次の攻撃に転じる。
「やめてください! 俺はおもちゃじゃありません!! おおう、わかりました。これが欲しいのですね」
ピエロは自分の赤鼻をもぎ取ると、ポフポフと摘んでからそれを春明に投げつけた。
「ほうら、取ってこい!」
白虎が赤鼻に反応して、春明の方へと駆け出そうと向きを変える。
「白虎、俺のことはいい! ピエロに攻撃を続けろ!! 亀!!」
春明が形代を手前に構えると、目の前に大きな亀の甲羅が現れた。赤鼻は、亀の甲羅に接触して爆発する。
「春明さん!!」
その様子を見ていたお嬢が叫んだ。
「こっちを見て、よそ見は嫌だ。えーん、えーん」
片腕しかない泣顔ピエロがお嬢にナヨナヨとしたパンチを繰り出していく。お嬢はそれを両腕をクロスさせて防いだ。
「全く、鬱陶しいですわね!!」
「ワタクシの溢れ出る、パワー!!!!!!」
マッチョは笑顔ピエロに打撃を連続で打ち込んだ。しかし、笑顔ピエロは何事もなかったかのようにピンとしている。
「むっ、やはりタフだな」
今度は、マッチョに向かって笑顔ピエロが連続で打撃を繰り出した。
「しかし!! ワタクシもまた、タフなのだよ!!」
攻撃を防ぎ切ったマッチョは、動じていないように腰に手を当てて笑い飛ばした。
そして両者、手を掴み合い拮抗状態となる。
「そのまま! 掴んだまま動かさないでください!!」
「むっ? 了解した」
美波が虹色の矢を放ち、それは笑顔ピエロの側頭部を貫通した。
「やった!」
「よくやった! GHの少女!」
「少女? 私はもうとっくに大人のレディですよ!」
笑顔ピエロはホロホロと消えていく。
レイは楽顔ピエロに正拳突きを繰り出していく。
「あぶあぶあぶあぶあぶ」
楽顔ピエロは呻き声を上げながら後退していった。
すると、怒顔ピエロがレイに向かって飛びかかってくる。アクタはそれを阻止するように、すぐに怒り顔ピエロの背後から、頭部に向かって回し蹴りを放った。
「ふん!」
しかし、怒顔ピエロはそれを軽く受け止めた。奴にとってアクタの攻撃は視覚外であるはずなのだが。アクタは顔を顰めさせる。
「嘘だろ、この蹴りを受け止めるのか」
蹴りを受け止めた怒顔ピエロが、ニヤッと笑ってアクタのことを挑発した。
アクタが泣顔ピエロの方を見ると、泣顔ピエロはお嬢と戦いながら目線はこちらに向けていた。
「なるほどね。視覚共有、本当に厄介だな」
「ぷんぷんぷんぷん、怒りのバイオレンス!」
怒顔ピエロがアクタに向かって拳を振り上げた瞬間、黒いオーラを放つ強烈なパンチによって、怒顔ピエロの頭が吹き飛んだ。
怒顔ピエロはホロホロと消えていく。
「レイ! 助かったよ! そっちのふにゃ顔のピエロは?」
「もう倒したよ」
ニッと笑うレイに、アクタは「さすがだね」と笑顔を溢した。
「おやおやおやおや、私のピエロちゃんたちが消えていく。消えていく」
ピエロが口元に両手をかざして、慌てた様子をみせていると、爆風の衝撃で舞い上がった土煙の中から春明が飛び出してきた。
「うぎゃ」
逃げようとした鼻無しピエロの体を、背後から白虎が咥え込む。
春明はピエロに鬼の形相を近づけた。
「おい、絶対絶命じゃないか。もう分身は出さないのか?」
「おおう、おおう、そんなに怖い顔を近づけないでください。わかりました。俺の負けです。俺の負け。この臭いお口を離させてください」
ピエロは首を横にブンブンと振りながら、弱々しい声で言った。
「はは、どうやらすぐに同じ分身を出すことはできないみたいだな。終いだよ。このゲームも、あんたも!」
春明がピエロに呪符を貼り付ける。
「我この悪霊を滅す、急急如律令!!」
「うぎゃあああああああああああああああ!!」
洞窟内に断末魔の叫びが響き渡った。




