最強なら、悪役で - 大群は、アンデットで
桜さんの異世界ファンタジーです
「今回のには勝てそう?」
人が1人もいない国。そこで昼食を食べている時、女神が聞いた。
「多勢に無勢っていう。」
と、桜が返す。
「そうねー…手下一人一人が強いから、正面からじゃまず勝てないわ。」
「前使った戦法も使えない。」
「一回別のところ行く?そこでレベル上げして帰ってくればいいじゃない。」
名案とでも言うかのように提案したが、桜は首を横に振った。
「大丈夫。」
そういうと、桜は上空へ移動した。
何かの呪文を唱えた後、国中の全ての素材を集め、何かを作り出した。
家よりも大きい、何かを。
数分後、完成したのは、城だった。
城、と言っても和風な城。
遅れて女神が飛んできた。
「これはまたすごいの作ったわね〜。」
最上階から見渡すと、当たりが一望できるほど、高くてでかい城だ。
「なんかワクワクするわ!中見てきていい?」
「いいけど、電気ついてないよ?」
「これでなんとかするわ!」
『/[{□□}{○}] ⌘ ☍:hand front ・;』
女神は、照明器具を、懐中電灯を生成した。
最上階から階段で降りると、そこは既に真っ暗だった。
カチッと懐中電灯をつける。
「一度行ってみたかったのよね〜。」
と、呟く。
その声は懐中電灯でぼんやりと照らされた、暗い廊下に響き渡る。
女神は元気に歩き続ける。
少し進んだところで、背後に寒気を感じた。
振り向くが、何もいない。
「桜〜?」
と、声をかけた。
何も返ってこなかったので、気のせいだと思い、また歩き始めた。
襖を開けると、和室が見えた。
「おー!和室っていうのよね!畳の香りが心地いいわ!」
女神は畳の上に青向きで寝転がる。
天井に隙間があることに気づいて、じーっと目を凝らす。
そこには、誰かの目があった。
「ヒッ!」
っと声を上げると、それは見えなくなった。
「……気のせいかしら?」
気味が悪くなった女神は、廊下に飛び出した。
暗がりの中、女神はいつも見ている恐さとは、別の怖さを感じている。
廊下の先に何かがあるのを見つけた。
慎重に近づく。
それは、誰かの手だった。
「なぁんだ。城を作る時にくっついてきちゃったのかしら?」
女神はほっと胸を下ろす。
その時にはもう、後ろからギョロっとした一つ目の化け物が、目を覗かせていた。
「イヤァァァァァァ!!」
悲鳴を出しながら、女神は走り出す。
しかし化け物も一緒についてくる。
いつの間にかただの手だった物も、器用に走り出した。
「ヒィッ!こういう時なんて唱えるんだっけ!?えーっと…う…うわぁぁぁぁ!」
悩んでいる間に化け物は速度を上げる。
「ターンアンデット!ガディア!も〜なんで効かないの〜!」
泣きながら放っているが、効かない…と言うか発動しないのは至極当然である。
女神の魔法タイプの術式ではないのだから。
魔法で追い払うのは諦めて、全速力で桜がいる最上階に逃げることに専念した。
一方その頃、桜は廻り緑から遠くを見ていた。
空はすっかり暗くなったが、雲がかかっていて、星が見えない。
何を考えているのか、さっぱりだ。
そこへ、涙で顔をびしゃびしゃにした女神が抱きついてきた。
「っ…そ…そう言うのは後に…して。」
と、桜はわざとらしく顔を赤て、乙女っぽい顔をした。
「何顔赤てるのよ!そう言うんじゃないわよ!……じゃなくて。なんかこの城いるのよ!」
「何かってこれのこと?」
桜が手を2回叩く。
するとどこからともなく、手だけの化け物が現れた。
「そう!それよ!」
「これは私が作った。」
「つ…作った?」
「そう。死体にちょこっと弄った魂を入れて従順なアンデットを作った。」
「マスコットホラーの悪役がすることじゃない……。」
その時、何かを察したかのように、桜が声を上げた。
「きた。」
廻り緑から外を見ると、遠くから何十、何百、何千万もの大軍が向かってきている。
どうやって勝つんだろうかと、考えていた女神は、最悪だけど、桜ならやりそうな事を考えつく。
「まさかなんだけど……。」
「そのまさか。」
大きな城。死体から作られた化け物。
何も関係無い訳なく。
桜が手を開いて、腕を上げる。
「第一軍、出陣!」
腕を勢いよく下げると、城から数えきれないほどの動く手が出てくる。
まるでゴキブリの大群のようだった。
主人公の軍勢から、ざわめきが聞こえる。
しかし誰かが声を上げた事で、一斉に士気が高まった。
動く手と、主人公軍がぶつかり合う。
流石、手練れているようだ。どんどんと動く手が減っていく。
桜がまた指示を出す。
「第二軍、出陣!回り込め。打つべきは軍長だ。」
すると、城から一つ目の化け物が飛び出す。
主人公軍はそれに臨機応変に対応する。
それにしてもどうやって戦っているんだろうかと、女神は双眼鏡を取り出して、覗く。
動く手は、相手の顔に覆い被さって、窒息死させていた。
一つ目の化け物は、目玉をパックリと開き、そこから触手を出して、相手を掴み、丸呑みしていた。
「うへ〜……。」
あまりの敵モンスターな戦い方に、女神は引いていた。
「第三軍、四軍、出陣!第五軍は第一軍の数が少なくなれば出陣しろ。」
ある程度の指示を出し切った桜は、女神に説明をする。
「あれが倒した人間の経験値。誰の物になると思う?」
「あれ自体じゃ無いの?」
「正解は、私。だから今もレベルアップしてる。」
そう話した後、桜は徐に宙に浮く。
そして、言い放つ。
「戦え!愚民ども。」
「何それ?」
と、ついてきた女神が聞く。
「言ってみたかったやつ。」
「あんたにもそう言うところあるのね……。」
「そろそろ。」
桜がステータス画面を開く。
レベルが700になったところだった。
「これで主人公よりもレベルが高くなった。」
そして、桜は声を上げる。
「全軍撤退!」
ゾロゾロと、桜軍が帰っていく。
その時、屈強そうな主人公が、大軍の中から、前に出てきた。
周りには、典型的なハーレム要素満載の仲間が3人いる。
「どうした?勝てないから怖気ついたのか?」
主人公が言い放った。
「あなた、人を沢山殺したのよね!最低だわ!」
「そうだそうだ!」
「まあまあ、倒せばいいじゃない。」
と、主人公の仲間が言う。
「そこ、動かないで。」
桜はそう言うと、何かを野球ボールのように主人公めがけて飛ばした。
透明でわからなかったが、女神はそれは魂のかけらだと分かった。
主人公に命中すると、主人公の体が震える。
「大丈夫ですか!?」と、仲間が近寄った。
刹那、その仲間を主人公が切り捨てた。
「え?」
主人公も、何が何だかわからなかった。
自分の体が勝手に動き、周りの人間を切り刻む。
「う…うわぁぁぁぁ!誰か、誰か俺を止めてくれ!」
何人かが近寄り、主人公を止めようとするが、焼け石に水だった。
戦場は血で溢れ返った。
その頃、桜は空中で虫取り網を振るっていた。
日が登った頃には、主人公と、桜と女神以外誰もいなかった。
「殺してくれ……。」
と、小さな声で、膝をつきながら主人公が言う。
目からは希望が消えている。
「殺してあげなさいよ。」
と、女神が言う。
「まだまだ。」
虫取り網から、魂を取り出した。
「これに憎しみと憎悪を入れて……。」
主人公の周りに、配置した。
全て置き終わると、主人公がいきなり発狂し始めた。
「ああああああ!許してくれ!許してくれ!」
「あんた何したのよ……。」
「今、あいつは仲間から責められる幻覚を見てる。憎しみと憎悪が詰まった。」
「いつそんなことできるようになったの?」
「私があの二つのスキル以外を取らなかったとでも?」
桜がステータス画面を見ると、《ソウルエディタ》と言うスキルがあった。
主人公が苦しみ悶え、声を上げて、目から血を流しているのをしばらく見ていると、急に声を出さなくなった。
主人公が死んだのだろう。
二つ目の、世界が消滅した。
続く……




