拾いました
朝食品を買いに街へ行こうと家を出ると黒い塊が落ちている。真っ黒な髪に黒い騎士服、黒いマントを纏い倒れている。周りを見渡すが誰も居ない。
「あのー…大丈夫ですか?」
返事が無い。見える限り怪我とかはして…ないな。んー…どうしよう。しがない令嬢に運べるかな。悩みながら見ていたら、近所に住むカロンがどうした?と聞いてくれる。
「人が倒れてて…このままにしておけないから、私の部屋に運んでもらえないかな?」
コレ幸いとばかりに一緒に運んで欲しいとお願いをし、小屋もとい私の部屋に連れて行く。黒い人はズッシリとなかなか重たい。1人で運んでたら終わってたわ。
「ここでいいのか?アリス大丈夫なのか?見つかったら怒られないか?」
「んー見つからないようにするよ。ありがとう。」
カロンは私の心配をしてくれる。私は一応伯爵家の娘なのだけれど、まぁわかりやすく虐げられている。1人で小さい小屋に住まわされ家族の扱いをされないという、虐待のお手本のような扱いをうける。そういう本があるのかと思うくらいだ。前妻の娘はこう扱いましょう!みたいなね。自分で言いながら笑ってしまう。
本邸には父と義母、そして義妹2人が住んでいる。幼い頃に母が亡くなり急に引っ越してきて、あっという間に乗っ取られた。図々しい親子だ。
騎士様が身につけていた剣を外し靴を脱がす。しかし…どうするかな。とりあえず運んだものの困ったなー。ベッドで横になる人を見ると…え!待って!めっちゃ男前じゃない?えぇ…助けたお礼に嫁に貰ってくれないかな。それか雇ってもらう?こんな家からは早く出たい。よし!丁寧に扱って恩を売ることにしよう。
着ていたマントを脱がし水を汲んできて汚れを拭く。そういえば倒れていた原因はなんだ?空腹?呪い?眠りの王子様かな?口づけすれば起きる?冗談はさておき、お医者様に来てもらいたいけど…こっそり呼べるかな?
「ぐぬぬ…腹痛で死にそう。死んだらこまるだろうからお医者様を呼んでください…あぁ死ぬぅ…」
私は本邸に行き迫真の演技でお医者様を呼ぶことに成功した。ちょろい。来てくれたお医者様にお願いをして黒い人を見てもらう。
「これは…寝てますね。疲労で倒れていただけでしょう。しばらくしたら目を覚ますと思いますよ。」
お医者様に黙っててもらう様にお願いし、お礼を言い見送る。疲労か…あまり恩売れないな。相場命くらい助けないと嫁には貰ってもらえないだろう。雇ってくれるか?いや…残念だけど多少のお礼を目指し看病をする。とりあえず上着も脱がすか…騎士服を脱がし倒れていたので、汚れていて汚いので一応洗う。あ!しまった!私今日ベッド無いじゃないか…床?嫌だな。まぁ床で寝てたらさらに追加で恩売れるか。
夜になり私は少しの固いパンを食べ床に寝転ぶ。あぁ…これはいよいよだな。人として末期だ。
「ゴメン!私のためにこんな床でなんて!」
は?何?朝からうるさい。目を開けると黒い人が起きて私の横に跪いている。男前が困った顔をしながら凄く謝っている。罪悪感いっぱいの演出が効いたようだ。床で寝たせいで体がそこら中痛いが眠った甲斐があった。
「私など良いのです。お腹はすいてませんか?」
「…ありがとう。何かあれば頂きたいです。」
ぐぅとお腹が鳴る黒い人に、どうぞっとスープとパンを出す。私舞台俳優になれる。今のところ優しくか弱い令嬢を装い恩を売る計画は完璧だ。何か贈り物くらいはしてくれるだろう。
「体調はいかがですか?昨日家の前に倒れられてたので私の家に運ばせて頂きました。私アリスと申します。」
「大変助かりました。私はレイモンド·コベットで騎士団に所属しております。昨日まで北の方へ討伐に行っておりまして、あまりにも疲れて眠ってしまったようです…本当にありがとうございました。アリス嬢は命の恩人です。」
頭を下げお礼を言ってくれる。なんか命救ったことになってる。ラッキー。黒い人はキョロキョロと周りをみて、お家と伺いましたがお1人でお住まいですか?と。
「あ…ここは伯爵家で本邸は向こうなのですが、私は立ち入る事を許されてなくて…ここに1人で住んでます。幼い頃からずっとなのでもう慣れました。」
涙を浮かべながら言ってみる。なんて酷い扱いを!訴えた方がいいですよ!と怒っている。言った事はあるのですが、後で恐ろしい目にあって…と怯えた風に泣く。
「こんな所へ置いておけない!私とココを出ましょう?騎士団か家か…まずは我が家で1度最善策を考えましょう?上司にも相談します。」
「私一緒に行きたいです!」
まさか計画通りに進むとは。思い描いていた展開に1人ニヤリと笑う。




