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 ぼんやりと、緑色に光る丸い明かり。大きさは、直径が私のちょうど肩幅ぐらいで、周りに壁などはなく、目の高さのあたりで宙に浮いていた。

 丸いといっても球体ではなく、オセロの駒のような形をしていて、裏側を覗くと先にはまた闇が続いていた。ということは、ここはこの世界の端ではなかったわけなのだが、明かりの前に立つと、そんなことはどうでもよくなっていた。

 ──これは出口だ。この明かりをどうにかすれば、現実の世界へ戻れるはずだ。

 そう思いながらも、本当は明かりの正体がわからないことに恐れを抱いていた。しかし、この世界でようやく見つけた闇以外のものだ。待っていても何も起こりそうにないので、とにかく何かしてみようと思った。


 指先で、ほんの少しだけ触ってみる。SF映画か何かのように、指先が明かりの内部へ入り込んでゆくのを想像していたが、明かりは固体だった。触れる瞬間、もし電気でも流れていたら……と思ったが、それどころか何も起こらない。

 今度は手で押してみると、向こう側に押し込める感触があった。

 ……そうか! これはボタンなんじゃないか?

 そう思うと同時に、私は両手を使って明かりをぐっと押した。すると、パァッと足元の床が光った。

 ──なんだ!?

 十畳ほどの範囲の床が白く光っている。私は驚いて、光っていない床の所まで飛び退いた。足を着けた先にまた柔らかい感触があったので、床の硬かった部分だけが光っているのだろう。


 しばらくすると、だんだん光の中に何かの形が浮かび上がってきた。

 ──ん? ……私のパソコンじゃないか。すると、まわりの景色は事務所か?

 パソコンに対面している私の目線が、映像として現れたのだった。その中の私は、起ち上げただけのパソコンをじっと見つめていたが、少し経つと顔に手を当ててうつむいた。

 ……! これは……ここに来る前の私じゃないのか!?

 たぶん、間違いない。映っている顔や仕草は、さっき思い返していた記憶の私だ。

 それに気付いた、次の瞬間。光の中のパソコンの画面に、両眼に時計が嵌め込まれた顔が映った。

「なんだ、こりゃ……?」

 ──いや……待てよ。なんだか見覚えがあるぞ……!

 ──そうだ! 私は今朝、事務所でこれを見た!

 ようやく記憶が蘇りはじめてきた。──そう、この顔を見つめていて、あっという間に時間が過ぎたのだった。


 映像の私は、画面の顔の左側の時計をじっくりと観察している。途中で腕時計に目をやり、今度は右の時計に視線をずらした。

 ──思い出してきたぞ……。このあとチャイムが鳴って、昼飯を食いに行くんだ。

 なぜあんな奇妙な出来事を忘れていたのか、不思議には思った。だが今はそれよりも、ここに来た理由を知るほうが先だ。このまま映像を見ていれば、なぜこんな世界に来たのかがわかるかもしれない。

 私は映像を眺めながら、自分の記憶と照らし合わせようとしていた。

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