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三幕~花の墓標~閑話「オオヤマネコ~ネコ」

 お待たせしております。四幕開始の準備中です。間が空いてしまうので、閑話載せます。

 案外これからの話に関係してます。三幕のエピローグの頃の話です。

閑話一「オオヤマネコ」


 ブシクの町外れを散歩していて、オオヤマネコの子どもを見た。伸びやかな身体は五十Cくらいある。茶色に黒い斑点が入った背中、後ろ足はネコとは思えないしっかりした太さで、走れるのが当たり前だと感じた。しっぽは縞ではなく、耳しっぽも先だけ黒い。ネコのように爪の出し入れが出来る手。じっと見ていると、自分もあんな風に走ったり、木に登ったり出来るのかな、やってみたい、と思った。


 イアリロがこちらを凝視してる。どうかした?

 あれ、なんでこんなに視点が低いんだろ、首を傾げると、自分の手が視界に入った。

 なるほど、ビプネンが川辺に見に行った気持ちが分かる。鏡代わりになるもの…… あぁ、イアリロの瞳だ。


 一緒に石に腰掛けてたから、ちょうどいい高さだ。腕と肩に手をかけて、見上げるように、イアリロの瞳を覗く。あぁ、綺麗な碧の瞳に、オオヤマネコが映ってる。大きな黄色い目はいつもと変わらないな、耳は大きくなって、動かしやすくなった……

 わっ! イアリロ、急に触れないで、驚くから。


「ご、ごめん。でも、撫でちゃだめ?」

 え? い、いいけど……


 イアリロに撫でまくられて、赤ちゃんの様に脱力して、抱き上げられてる。続きは部屋でね、ってまだ触るの?


「あら? ルーと散歩してたんじゃないの?」

「うん、ルーだよ、可愛いでしょう?」

「え?」エレーナが固まってる。そうだよな、驚くよねぇ。ビプネンやゾーヤで慣れてきたから、そんなものか、と思ってたけど。

 何度か同じようなやり取りをして、イアリロに部屋に連れ込まれた。……寝台?


 嫌な予感がして、逃げようとしたら、そっと首の後ろを摘ままれた。え? 動けない?

「ごめんね、でも可愛い過ぎて」イアリロのキスが降ってくる。頭、背中、手足、イアリロの撫で方は、まるっきり愛撫だ。腹やしっぽまで撫でられたら、もうだめだった。


 夕食前、ゴランが無言でイアリロの頭に拳骨を落とした。横で下を向いてる俺の頭には、ぽん、と手を載せただけなのに。イアリロ、ごめん。



閑話二「ねこ」


 夜、ゾーヤが遊びに来た。

 最近モノケロスやウロスといることが多いから、嬉しい。掌を寄せるとひょい、と載ってくれる。指でそっと頭を撫でると擽ったそうに笑う。可愛いなぁ……。


「ねこ」ん?

「ねこ、見たいの」あぁ、昼の話を聞いたのか。

「ねこになったらいいの?」うん、と頷く。でも、結構大きかったから、怖くないかな。

「じゃ、小さめのになってみるね」パァっと顔を輝かせるゾーヤを机に下ろした。癒される……自分の顔が緩んでるのが分かった。


 ねこ。家ねこでいいな。眼を閉じて思い浮かべる。ペットを飼った事はないけど、近所のアメショー(アメリカンショートヘアー)によく遊んで貰ってた。喉を撫でると上がる首、ピクッと動く三角耳、つぶらな金の目と柔軟な背中、滑らかな白と黒の毛皮。ペシっと叩かれた前足、肉球とそれを押すと出てくる爪、オオヤマネコほど太くないけど、高く跳べる力を秘めた後ろ足。よく動く長めのしっぽ……


 嫌な予感がして飛び退いた。イアリロがうっとりと手を伸ばしてる。フゥっと唸ってやった。ゾーヤと遊ぶんだから。


 ゾーヤが顔に抱きついてきた。舌先でちょん、と顔を舐める。ねこの舌ってけっこうザラザラで痛いくらいだからね。

「わぁ、あったかい」全身で甘えてくるから、前足でつついたり、しっぽを巻き付けたりしてやる。そうだ。


『背中に乗れるかも。やってみる?』

「うん」満面の笑みで念話に答えて、座った背中によじ登って来る。ゆっくり立つと、軽いけど乗ってる感触はあるね。

『歩くよ、しっかり背中に掴まってて。大丈夫、俺は全然痛くないから』本体は蠍だもんね、すぐに姿勢が安定した。

『ちょっと冒険しようか』窓から飛び出すと、イアリロが慌てて覗いてる。

『モノケロス達の所に行ってくる』伝えて走り出す。この体も身軽でいいな。


「可愛い!」エレーナと行き会った。そうだ、昼にオオヤマネコの姿で会った時は、もうイアリロに抱かれてたんだ。

 すりっと足に顔を寄せると、頭の天辺を掻いてくれた。そこそこ、気持ちいいんだよな。

「ゾーヤ、お友達とお散歩?」

「ルー、だよ?」

「え?」また驚かせてごめんね、にゃあっと鳴いて、先に進もう。

 同じやり取りを数回。手を振るレーシーにはしっぽで答えて、厩に行き着いた。


『なんだよそれ』え?聞いたことない念話だけど。

「ウロスも、乗る?」あ、ウロスの声なんだ。

『おれは乗れないだろ。あぁ、ゾーヤくらいならいけるか』にやっとしたな?

 ウロスが光って、ゾーヤの対のような小さな男の子になる。可愛いなぁ、と目を細めていたら、ひょいとゾーヤの後ろに飛び乗って、俺のお尻を叩く。

「ほら走れ、走れ」よし、悪戯坊主め。懲らしめてやる。


 急発進すると、二人が背中にしがみつくのが分かった。厩を一巡りして、呆れ顔のモノケロスにしっぽを振る。

 覚えたての風魔法も使って、厩の屋根から母屋の屋根、見張り台の屋根と高い方、高い方へと登る。一番高い所で休憩だ。


「わぁ、凄いね」ゾーヤの弾んだ声。

「ふん、ここへ来て最初に登ったぞ」悔しそうだね、ゾーヤを喜ばせかったのかな。

「ウロス、明日、出かける?」そうだ、リュドミラ達に付いていってくれって、イアリロに頼まれてた。

「すぐ会えるさ」うん、ゾーヤと待ってる。


「ルー、危ないから降りておいで」

 暫く夜景と夜空を楽しんでいると、見張り台までイアリロが迎えに来た。冒険とデートは終わりだね。


 ご覧頂き、ありがとうございます。人物紹介、要約と四幕、今週中に載せますので、今少しお待ちください。

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