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あなたに起こる奇跡 ~感染する知性『ミーム』が、今、あなたに宿る~  作者: kyon²


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2/10

『燕子花図屏風』からの衝撃

「なぜ、俺に?  そして、この身体に何が宿ったというのか?」


 その疑問が、脳裏を支配したのは、美術館の展示室で光琳の『燕子花図屏風』と、その先にあるクリムトの『接吻』を交互に見比べた瞬間だった。


 昨日も、みなとは、モニターの前でため息をついていた。

 画面の中では、無機質なCSSの記述が並んでいる。効率化、最適化、そして離脱率の低下。そんな言葉ばかりが飛び交う会議の後、彼はただの「情報処理装置」になったような気分で帰路についた。


 休日、気晴らしに訪れた美術館。

 そこで彼は、光琳の『燕子花図』と、クリムトの『接吻』を、ぼんやりと見比べていた。


「……なんだ、これは」


 喉から言葉が漏れた。

 液晶画面の中で整然と並んでいたはずの要素が、数世紀前の金地の屏風と、ウィーンの画家が描いた黄金の装飾と、完璧に重なり合った。


 ノイズだと思っていたものが、あるべき場所に収まり、調和する。

 脳の奥で、カチリ、と何かが噛み合う音がした。


 湊の視界から、美術館の白い壁が消えた。代わりに、世界を構成する「黄金の設計図」が、網膜に焼き付いた。


(……これが、俺に宿ったのか?)


 湊の指先が、無意識のうちに空中に図を描くように動く。彼がエンジニアとして培ってきたスキルと、宗達から連綿と受け継がれてきた「美の系譜」が、今この瞬間、結合した。



 金地の背景が、壁から溶け出し、展示室の空気を黄金色に染め上げていく。周囲の観客のざわめきが消え去り、私の鼓動だけが、数百年の時を越えて響くリズムと重なった。


 雷に打たれたような衝撃。それは、美術的な感銘などという生易しいものではなかった。

 頭の中に、無数の筆の運び、色彩の配合、そして「世界をどう切り取るべきか」という黄金の法則――いわば、この世界の設計図が、奔流となって流れ込んできたのだ。


 ――あぁ、そうか。 宗達が筆に託し、光琳が洗練させ、クリムトがその装飾の裏に隠した「あの魂」は、今、俺の指先に宿った。

 俺は、この黄金の系譜の最新の器として、選ばれてしまったのだ。


 ――「何が宿ったのか」を知った今、もう二度と、この世界を『ただの風景』として見ることはできない。

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