プロローグ「新しい日常の始まり」
ちょっとした日常ファンタジーの始まりです。
―――その日の空は暗かった。というより、煙が登り、よく見えなかった。ただその奥に見える空の色は黒く、お世辞にも綺麗とは言えなかった。両親がこれを子に見せて嫌われても文句は言えないだろう。
「――...」 「―――...!!!」
だが地上にはまばゆいばかりの明かりが灯っている。私の周りには、空とは対象に、鮮やかな赤が周りを包んでいる。でも所詮コンクリート、町中の赤いコンクリートなんて気味が悪いだけ。
「―――あ」 「―――ぁ゛」
―それと、不思議と自分以外の声は聞こえなかった。周囲を見渡すと、人の体がゴロゴロとあるのに。それどころか眼の前には、話したがりそうな毛先の赤い好青年がいるというのに、なんとも不思議だ。
「――あぁ」「あ゛あ゛」
ひどく汚く、嗚咽の混じった泣き声だけが、私の耳を木霊した。耳障りが悪い。でもその声とは裏腹に、私の心はとても冷静だったと思う。
――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!
――夜明けはまだ来ていない。それでも、日はすぐ昇るだろう。私はただそれを望むだけ。大丈夫、泥を被るのは日が昇ってからでも遅くはない。それに太陽を守るには、日が昇っていないといけない。
私はただ、平穏を返してほしいだけ。
そのためにも、私は生きなくては。
待っててね。すぐ見つけてみせるから。必ず取り戻してみせるから。
彼女はその日から、姿を消した。




