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第五十話 真実

前回のあらすじ:眠れない夜に遭遇した伊吹、眠気を確保すべく、艦橋のデッキに出た。

暫く星空を眺めていると、長嶋航空参謀がやって来た。

2人で星空の下語り合う2名、その会話の中で衝撃の事実が明らかとなる。

その事実とは、航空参謀はかつての伊吹の部下の継親であると言う事だった。

 2月14日… 09:28… 司令官室…


「伊吹ちゃん、覚悟…出来てる?」


「…だいぶ前から、出来てるよ」


 遂にこの時が来た。

 凪にあの事件を話す時が来た。


 凪があの時、長嶋や福田を撃墜したパイロットだとは思いたくない。

 しかし、凪の話し方から察するにきっとそうなのだろう。


「後2分」


 凪を0930にこの部屋に来るように呼んでいる。

 つまり、後2分。

 ボクと七海は、凪の到着を緊張しながら待つ。


 コンコンコン


「「!!」」


 ガチャッ


「どうしたの、急に呼び出して」


「まぁまぁ、座って座って」


 凪を椅子に座らせ、部屋に鍵をかける。

 凪は困惑した様子でこちらを見つめている。


「凪ねぇ」


 七海から話を切り出す。


「どうしたの、七海」


「凪ねぇってよ、4年前、海軍機の偽物、墜としたんだろ?」


 声のトーンが下がって、口調が荒っぽくなった。

 海琴が出て来た。…いや、これが本当の七海なのだが。


「うん、そうだね」


「…本当に、偽物か?」


「え?ど、どういう事?」


「だから、その海軍機の偽物。本当に偽物かって聞いてんだ」


「IFFじゃ敵だったから…偽物だよ」


「……そうか」


 IFFも偽装されていたのか。

 良くやるよ、そんな事。


「…機数は?」


「11機…うん、11機だった」


「ほーん」


「七海」


「何だ、凪ねぇ」


「何で急にこんな事聞くのかなって」


 確かに、凪の立場からすればそう思うのが妥当だ。

 急に呼ばれて、事情も説明されずに急に尋問される。

 恐怖でしかない。


「確認だよ、確認」


「そっか」


 凪はまだ冷静だ。

 さて、これがどうなるのか。


「それで、ソイツらはどんな塗装してたんだ?」


「青色だよ、F-2と同じ」


「んで、どんな飛び方してたんだ?」


「超低空飛行」


 …全部同じだ。

 当時は11機編隊で超低空飛行をしていた。

 塗装もF-2と同じ青色だ。


「日の丸は付いてたんだよな?」


「うん、付いてた」


「なぁ、伊吹…」


「……その機体、もしかして」


 ボクは棚の中にしまってある威風改の洋上迷彩仕様の模型を取り出す。


「コレだったりしない?」


 そして、それを凪に渡す。

 凪は少し困惑した様子で模型を見つめている。

 たちまち凪の顔は青ざめ、呼吸が荒くなっていく。


「凪、君達が墜としたのは偽物何かじゃない」


「嘘…嘘…」


「正真正銘、海軍機だ」


「凪ねぇ」


「………」


「凪ねぇ!」


「!!…?」


「…1番機と2番機を墜とさなくて良かったな」


「な、なんで」


「伊吹と、私の機だったからだよ」


「ボクが1番機、七海が2番機」


 凪の呼吸が更に荒くなる。

 それと同時に椅子から崩れ落ちる凪。

 その手には模型がしっかり握られている。


「嘘…私…私?私が?」


 凪は床にへたり込んで泣いている。

 啜り泣く声がこの部屋を埋め尽くす。


「凪ねぇ」


 海琴が凪を抱きしめる。


「…?な、七海?」


「私も伊吹も、凪が悪いって思ってねぇよ」


「………」


「悪いのは指示した野郎だ、凪ねぇは何も悪くねぇんだ」


「七海…」


「妹の胸の中で泣くのは嫌か?」


「…嫌、じゃない…」


 そう言うと、凪は顔を海琴の胸にうずめて泣き出した。

 啜り泣きでは片づけられない程の声を出して泣き出した。

 凪が泣いているのを見るのは初めてだ。


 海琴は泣いている凪を優しく撫でている。



 35分後…

 凪がようやく泣き止んだ。


「なぁ、伊吹。見せてやんねぇか」


「何を?」


「コレだよ、コレ」


 海琴は凪が持っている模型を指さす。

 成程、威風改の実物か。


「凪、見る?」


「……何を?」


「機体」


「…何の?」


「ボクの」


「…見る」


 格納庫… 10:07…

 格納庫に降りて来た。

 中には飛電に極電、最新鋭の機体が並んでいる。

 その奥、誰も気づかない様な所にブルーシートがかけられている機体がある。


 おや、天城少尉がこれから整備をする様だ。

 丁度良い。


「少尉!」


「!司令、今日はどんな御用ですか?」


「いや、何。この子を見せたくてね」


「この子?あぁ、成程」


 少尉はそう言うと、ブルーシートを勢い良く引っぺがす。

 ブルーシートに包まれていた機体は、さっきまで凪が持っていた模型と同じ。

 威風改の洋上塗装仕様。


「コレがボクの乗機」


 ボクは機体をさする。

 前に見たのはいつだったかな。


 最後にこの子に乗ったのは4年前が最後だったかな。

 あの事案以来、この子には乗らなかった。

 第三飛行隊に異動になった時は二式戦に乗っていた。


 この子は現在、部隊には所属しておらず、二航戦が直接管理している。

 つまり、この子は独立している。


「尾翼のマークは何?」


「スワローエンゼル。燕のマーク」


 かつて、東京~神戸間を走った特急燕号。

 その牽引機であるC62の除煙板に描いてあったマーク。

 それを描いてもらった。


「海軍には部隊マークは無いの?」


「あるけど、尾翼には描かないかな」


「そうなんだ…七海は何描いてもらったの?」


「伊吹と同じ」


 ペアルック。

 尾翼のペアルックなんて聞いたこと無い。


「少尉」


「はい?」


「整備してて、どうだい」


「どうだい…と、言いますと?」


「その…気分って言うか、その…」


「気分は最高ですよ!今や世界にこの1機しか無いんですから!」


 少尉は目を輝かせながら話す。

 少尉にはあの事件の事は言っていない。


「そりゃ良かった」


 だから、少尉はこの機体を笑顔で整備する事が出来るのだろう。


「…どう?凪」


 凪は少し考えた後、こう言った。


「…うん、同じ」


「そっか」



 数分後… 司令官室…

 司令官室は重く、淀んだ空気が流れていた。

 誰も、何も話さない。時折、目が合う程度。

 そんな空気を凪が変えた。


「七海、伊吹と一緒に暮らしてみて驚いた事って何か無い?」


「え?そりゃ、アレだよ。アレ」


 アレって何だろう。


「お嬢様だよ、お嬢様」


「お嬢様…確かに、お嬢様だね」


「はい?」


 二人は一体何を言っているんだ。

 いや、七海に至っては昔からだけども。


「クローゼットの服とかやべぇぞ、The お嬢様の服が大量に入ってやがんだ」


「写真見せてよ」


「ホイ、コレ」


 海琴はスマホを凪に見せる。

 はて、そんなお嬢様な服を持っていたかね。


「…本当だ!」


「だろ?」


「…でも服だけって可能性も無くない?」


「そんな事ねぇ、伊吹はマジのお嬢様だぞ」


 虚偽の情報が淡々と流されて行く。

 でも、海琴だから問題は無い。


「私が高2の時、和倉温泉連れてってくれたろ?」


「あぁ、確かに行ったね」


 ボクが高3の時だ。

 懐かしい、確かあの時はパパから招待券貰ったんだ。


「アレ、全部奢ってくれたんだぜ?何もかも」


 そう言えば、そうだった。

 全部ボクが払ったんだった。


「そう言えばそうだったね」


「いくらしたの?」


「覚えてない」


「そ、そっか…」


 忘れた、そんな昔の事なんて。

 でも大した額じゃない。


 それにしても、湿っぽい話から急にこんな話に。

 まぁ、湿っぽい話よりこっちの方が圧倒的に良い。


「別にボク、そんなお嬢様じゃないって」


「ほーん」


 海琴はあまり納得していない様子。

 凪は苦笑いしている。


「所で、今何時?」


「1132」


 海琴が時計を確認してくれた。

 後、30分程度で昼食だ。


「お昼ご飯!」


 凪のテンションが急上昇した。

 さっきの号泣がまるで嘘かの様に。

 まぁ、泣いてる姿より、笑ってる姿の方が良い。


「今日のメニューは何かな」


「凪ねぇは飯の事ばっか考えすぎなんだよ」


「別にいいじゃん、ご飯の事だけ考えてても」


「そんなんだから私に負けるんだよ」


「はぁ?関係ないでしょ!?」


「おっと」


 どうやら私は姉妹喧嘩を目の前で見せつけられるらしい。

 良く考えたら、摩耶と喧嘩した事無いなぁ。


 コンコンコン


「どーぞー」


 ガチャッ


「司令、副司令がCICまで来て欲しいとの事です」


「え?うん、分かった」


 立ち上がり、自分の部屋を出る。

 部屋の外からでも、凪と海琴の姉妹喧嘩の声が良く聞こえて来た。

 どうか、私の部屋に台風が来ませんように。

お読みいただき、ありがとうございます!

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(付けると作者が凄い喜ぶよ)

よろしくお願いいたします!

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