胸が塞がる入学式! その7
直ぐにドミニクが事態収拾に割って入ってくれた。
まだまだ悪魔界の仕来りを理解出来ていないお子様であると説明してくれる。
だけど場の空気感は変わらなかった。
ここに居る連中は悪魔界のカースト制の中で上位に地位を築いている名門貴族の子息。
既に貴族としての帝王学は十二分に身に付いている。
甘い温情を得るような説明が受け入られる訳が無かった。
その日依頼…。
そう入学したその日から僕は孤立し嫌がらせを受ける身となった。
貴族間の付き合いは本音を何重にも隠して素顔・本音なんて見せやしない。
背後で暗躍するのも日常茶飯事の在りよう。
故にその悪辣さは巧みで陰湿の極致となる。
教室は全員が学級委員長の様な非の打ち所のない雰囲気。
現実悪魔社会にそのまま適合させることも可能に思える程に悪魔社会を教室内に作り上げている。
悪魔社会の縮図がここに在る。
その社会から悪意を向けられたらそれは正論・悪魔としての善良を背にした学級員長からジワジワ
と真綿で首を締め上げられる。
その空間自体が悪意の増殖炉であり、ターゲットにされたら焼かれるのみとなる。
人間世界でも悪意を感じる感性は人並み以上あったので悪意の中を知らない振りで当たり障りがな
い様に泳いでいた。
だから即、悪意は察知は出来た。
ただ通学馬車で発動させてしまったあの力を行使する訳にも行かず、ルシファ爺ちゃんの面倒見に対
する恩義も少し感じているし穏便に我慢我慢。
我慢は蓄積されるから受け流す術も考えないといけない。
目に見えない嫌がらせを無視しても心にはハラハラとストレスは積もるからさてどうしようか。
ストレスは精神スキルスの様なもので静かに心を侵食し食い破る。
蓄積しない様に日々、いや時間毎でさえケアが必要。
ストレスの浸食は本人でさえ認識、気付く事が難しい。
誰かに助けを期待するものではなく健全な内に自身の防御として自身でケア方法を確立する必要が
ある。
神、悪魔、神州八百万と其々から特例な約定を得てその仕様も既に把握している。
ただ、ストレスに対する耐性が抜けていた。
この学園生活で日が増す毎にそれは現れた。
朝起きて学校に行く支度を整える程に吐き気を誘発してその理由も分からないままに心が萎み、精神
が疲弊しているのに気付く。
自身の心の無意識の部分でストレスの病魔はスキルスの様に静かに侵食して来ている。
無意識だからルシファ爺さんの心を読む能力にも検知されない。
まさに当人にしか分からない病魔。
何とかする、自分を助けるのは自分しかいない。
疲弊していく中で現代世界での事象や言葉を思い出す。
心が疲れたら現実逃避、現実のインパクトに一定の距離、自身を隔離して切り離し癒すべし。
今なら分かる。
そうストレスの毒牙から自分を隔離する。
一瞬でも良いから無の世界が必要。
ある日の授業間の休み時間に探し求める扉を見つけた。
物理的に得られないのなら妄想世界に浸る事かと妄想癖が日常に浸透して来た頃、僕は見つけた。
ある日それを見つけた。
3階から4階に上る階段の踊り場の掃除用具ロッカーの中に空間の歪みを見つけた。
この踊り場は人(悪魔)達が忌み嫌う明るい陽光に似た天井灯が灯っている場所で掃除当番の区域
分けで誰も担当したがらない場所。
当然、悪辣なる嫌がらせ真っ最中の僕には割り振られるべき場所だった。
たった一人で掃除を行なっているとドリアードが様子見に立ち寄ってくれる。
でもそれも束の間で彼女が自分の掃除の持ち場に消えるとまた一人。
たった一人ということは実はストレスの影響を受けない憩のひと時でもある。
妄想でもしながら踊り場で過ごすのは実は非常に楽しいんだ。
いつもの様にロッカーを開けるといつもの掃除用具の向こうに白いドアノブが見えた。
いよいよ秘密基地の扉を!




