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胸が塞がる入学式! その3

 

 いく種類もの視線を感じながら奥の席に座る。

 ルシファ家の家の重みを感じる。


《《ヒシヒシと重たい》》


「感じるか!うんうん良い孫じゃ」

 いきなり思念が割り込む。

 僕の心の動きを唯一読める存在であるルシファは常に心を読んでいるんだった!


「不安がることは事は無い。全員学友、危害を加えて来るわけでもなし楽しく過すのじゃよ」


 危害は無いんだよね~。

 今、僕の椅子の柄に顔を横たえて〈ギロギロ〉と下から僕を見ている女の子は危害を加えるつもり

 は無いんだよね…。


「ビクビクしなくてもエエ〜、それは死霊ネクロノミコン一族、せいぜい取り憑くくらいじゃよ」


 取り憑くってそれって大変じゃないのよ!


 〈ギロギロリ〉真下から顔を見上げられてるのは気持ちの良いものではない。


 時折〈ギギギ〉と首が一回転して〈ギロギロリ〉と見上げられる。

 気色が悪い…。


 一番最初に迂闊にも顔を凝視してしまったのでどんな顔かは分かっている。

 意外に美少女。

 だけど口が糸か何かで縫い合わされている。

 髪はショートボブで瞳は大きく黒目がちで綺麗。


 これも挨拶の一種なのだろうから挨拶をちゃんとすべきだろう。


「おはよう」

「良い朝だね」


 すると〈ギギギ〉と首を一回転して

「朝は嫌い」

「私たちの時間は終わり、陽が落ちるまで眠りつく合図」

「朝は嫌い」


 そうか悪魔系だから日中は苦手か。

 でも学校は朝から登校だから日中だよね。


 いや待て待て馬車の中はカーテン閉め切って蝋燭の灯だけだから元々暗い世界だ。

 外も霧に覆われて曇天模様だし快晴の天気なんて無いのかもしれない。


 薄暗い世界観。

 何方かと言えば落ち着く感はあるとふと考える。

 明るい陽射しの元だと気持ちは良いけど体力を消耗する。

 寒さ湿り気のない暗がりならば此方の方が良いかも知れない。


「暗闇は心地よき、安らぎ」


 確かに学生の時寮の裏手の山に深夜一人でわけ入った経験を思い出す。

 小山の入り口は街の仄かな灯りさえ届かない漆黒の闇が待つ森林。

 森林に入ると真っ暗闇となる。

 やがて目が慣れてくると闇夜が放つ灯りを感じる。

 小山を黙々と歩くといきなり眩い光が飛び込んでくる。

 日中に寮から見えていた小さな広場。

 そこに出た。

 飲み込まれそうに大きな満月が月光を注いでいた。


 静かな体温のない月光。


 僕はそれを浴びて身体が安堵するのを感じた思い出がある。


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