王都にて(11) ~レオン目線〈2〉~
二日後。今は夜会の最中だ。夜会を開くと決めたときはまだティアを見付けられていなかったから候補になる者と会うことにしたが 今はもうティアと出逢えたのでこの夜会で嫁を決めることはない。だが流石に二日前に中止にするわけにもいかずこうして出席するはめになった。
思っていた通り退屈だ。王族と言う地位に媚びてくる者 見た目だけにすり寄ってくる者 紫の瞳に怯える者。わたしと言う人物を見てくれようとする者が居なさすぎる。そんな夜会に飽き飽きしていた頃 扉の外から中を覗いているティアの顔を見掛けた。その眼はどうやら目の前にある料理に釘付けの様だ。可愛らしくて思わず笑みがこぼれた。今日は会うことができないと思っていたのでこうして見ることができただけでも嬉しいものだ。このまま傍に行きたいが誰かに見付かると厄介だと思い侍女に頼んで対応してもらった。
次の日の朝ティアに会いに行くも出掛けていて会うことができなかった。昼からは執務室に籠り仕事をこなしていると何やら表が騒がしいことに気が付いた。暫く放っておくも収まる様子がないのでエドワードに見に行かせた。
「レオンに挨拶させろと言ってきた親子がいた。後クッキーを焼いたからと・・」
「そうか」
「いや、このクッキー・・」
「今忙しいからそんな報告はしなくていい」
余程自分達に自信があるのかこんな場所にまでわざわざ売り込みに来るとは呆れはてる。一つ大きく息を吐き執務を続ける。
やっと終わったところにエドワードが近付いてくる。
「このクッキー三つあるからって。味の保証はしないけどお詫びにって持ってきてくれたぞ」
「三つ?お詫びってなんの事だ?」
「俺とお前とセドリックの分だろ。この前逆上して攻撃してきたことじゃないのか」
エドワードの言っている事が良く解らなかった。どういう事だ。詫びられなければならない事などなかったはずだが。セドリックに目を遣るも解らないといった感じで首をかしげられる。そんなことをしているうちにエドワードはリボンをほどき食べようとしていた。
「意図が解らないのによく食べる気になるな」
「だからお詫びだって言っただろ」
同じ言葉を繰り返すエドワードにセドリックがため息を吐いた。
「一体誰から受け取ったのですか」
「ああ、言ってなかったか? リンからだ」
「「なっ?!」」
「どうして直ぐに言わなかった!」
怒って言うと“お前が言わせなかったんだ”と背後で騒いでいるエドワードを放置し 執務室を後にしティアの元へと急いだ。扉をノックするとティアが笑顔で出迎えてくれた。
クッキーのお礼を伝えると感想を聞かれてしまったがまだ食べていないとしか言えなかった。せめて一つ食べてからこれば良かった。落ち込んだわたしを気遣ってかティアは“じゃあ食べたら感想聞かせてね”と優しく言ってくれた。部屋に入る様に促されたが少し悩んで断った。
「ティア、明日時間があるならお礼にお茶でも一緒にどうだろう」
「お礼なんて要らないのに。でも折角のお誘いだしレオが良いのなら喜んで」
ティアがこの城に来た日以来 話ができていなかったのでもっと話したかったが 時間の事もあり明日落ち着いて話したいと思い誘ってみると了承してもらえた。お昼を過ぎてから迎えに来る事を継げて執務室に戻ろうとしたらティアが言いづらそうに口を開いた。何かと思ったら泊まるのが一人増えてもいいかというお願いだった。今日は出掛けていたと聞いたし また精霊でも増えたのかと簡単に承諾して部屋を見ると今まで見たことのない男が居た。思わずなかった事にしたかったが一度言ってしまったのを今さらそれを取り消すのも躊躇われた。胸にモヤモヤした気持ちを押し込めて今度こそ執務室に戻った。
セドリックに一人増えた事を告げ机に置いてあった包みを取り執務室に接客用にと置いてあるソファに腰を下ろす。リボンをほどいてみると四種類のクッキーが入っていた。四種類も大変だったろうと思いながらも自分に持ってきてくれた事が嬉しくて顔がほころんでしまう。一つ食べてみるととても美味しかった。考えてみれば誰かからこんな風に手作りの物を貰うなんて初めての事ではないだろうか。それが好きな子から貰えるなんて。
ふと視線を感じたのでそちらを見るとエドワードがニヤニヤしながら此方を見ていたが相手にせず放っておくと何やらまた騒ぎ始めた。からかおうとしているくせに相手にされないのは気に入らないらしい。わたしからすればからかわれるのに自分から関わる方がどうかと思うが。
セドリックが自分も貰っていいものだろうかと聞いてくるので貰っておくように伝えると嬉しそうにしていた。セドリックも変な下心なしで貰うことは滅多になかったので嬉しかったのだろう。だがわたしは何だか複雑な気持ちだ。
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