王都にて(9)
『全く恋の進展がなかったわ』
ティアはぶつぶつ怒っている真珠を見ながら扉を開けた。
「ただいまぁ」
部屋に入ってくるティア達を見て悠翔達は驚いた。先程孤児院で会った魔族が一緒に居たからだ。魔族は悠翔に向かってニヤリと笑った。悠翔は露骨に顔をしかめ部屋から追い出そうとするが階段から落ちるところを助けてもらったと聞くと嫌々ながらも追い出すことを諦めた。部屋には微妙な空気が流れるがティアがそんなことを気にすることもない。
「ところでおじさん。どうしてお城に居るの」
「もちろんお前を見張るためだ」
「ふーん。暇なんだね」
魔族がニヤリと笑いながらティアを見るが 特に気にする事もなく素っ気ない返事をする。流石に魔族もこんな返事をされるとは思わず暇じゃないと突っ込み返す。しかしそれにティアが返事する事もなく無視していると感じた魔族が何やらすねだした。
「おい、無視することないだろう」
別に無視した訳ではないく返事をする様な事でもないかと思ったのだが 気に入らなかったらしい。一体どうしたいのかと思い黙って見ていると気を取り直したかの様に上から目線で話し出した。
話を纏めてみると喧嘩を売ってきたのが面白く 一人で居るもの退屈だから一緒に居てやるとのことだった。だがこちらとしては一緒に居てもらう必要もないので断った。すると納得いかないと食って掛かってくるので一緒に居るメリットはと聞くとどんなことからも護ってやると自慢気に言われた。生憎護ってくれる人は沢山居てるので特に必要としていない。他はと思い暫く待ってみるも思い付かないようだ。何とか諦めてもらうように説得しようかと考えていると何やらぼそぼそ言いだした。
「う、羨ましかったんだよ。・・そいつが。手を出すなって庇われて。しかも嬉しそうに笑ってた。そいつとは数回しか会ったことはないが笑ってるのを初めて見た。俺も誰かと一緒に居たらそんな風になれるのかと思って。一人きりは辛い」
どうやらこちらが一緒に居たい本当の理由のようだ。しかし一人きりとはどういう事だ。魔族とは一人で暮らしているのだろうか。その謎を解いてくれたのは悠翔だった。
どうやら彼は魔王の息子だそうだ。つまり王子様。なら大事にされていそうだが魔力が強すぎたため敬遠されているのだそうだ。人間なら解るが魔族なら喜ぶのではないのかと思ったがどうやらそうではないらしい。魔族は魔力の高い者が玉座に着く。つまりこの王子は現魔王より魔力が高く何時王になってもおかしくないのだが現魔王がそれを良しとせず忌み嫌われているのだそうだ。故に可愛がることも供をつけることもなく放ったらかしにしているのだそうだ。
他人に奪われるならいやかもしれないが自分の息子なのにそういう態度はどうなんだ。ティアは話を聞いて一人怒りだす。自分が嫌われてもおかしくない状況で家族に大事にしてもらえたティアは親が子供を大事にしないこの手の話は大嫌いだった。
「分かった。一緒にいよう。家族になってあげる」
「いいのか」
先程は偉そうに自分から一緒居てやると言ったくせにティアから言われると聞き返してきた。その顔は嬉しそうな不安そうな何とも言えない顔だった。ティアはその顔を見て悪いことは起こらないだろうと判断しもちろんと笑顔で答えたがその代わりと条件を二つ出した。一つは魔族であるのを言わないこと。つまり瞳の色も変え いざというとき以外は魔力を使わない。もう一つはみんなと仲良くする事だ。魔族はその条件をあっさりと呑んだ。
確かに大した条件ではないかもしれないがそんなにあっさり受け入れるとは思っていなかったので驚きだ。それだけ悲しい思いをしてきたのだろう。そう考えるとティアは遣る瀬ない気持ちになった。魔族の様子を伺うと小さな精霊達と固くなりながらも話していた。
自己紹介してもらったら王子と呼ばれていて年齢は二十五歳とのことだった。魔族も精霊も年齢不明だし悠翔と知り合いみたいだから同い年位かと思ってたら全然違う。本当におじさんではなかったのには驚いた。
悠翔は少し抵抗があるようだか我慢してもらうことに。どうしてそこまで嫌がるのかと思えば昔悪戯をされた事があるのだとか。何倍も年下の子に悪戯をされるのものどうかと思うが。因みにどんな悪戯なのか聞いてみると落とし穴に落とされたとか美味しいと言われて食べたものが激辛だったとか。確かにされたくはないが大の大人が小さな子供を嫌う程の事なのだろうか。しかし周りが何とも言っても本人が嫌なものは仕方ない。
ソファに座っている悠翔の膝を跨いで同じ目線になり腕を伸ばして頭に巻き付ける。
「大丈夫。これからはわたしが護ってあげるから」
「うん、そうだね。もう大丈夫だね」
目を見開いた悠翔はゆっくりと目を閉じ頭をティアの肩に置き そっと腕を回して抱き締め返した。
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