ニコニコ悪魔
5/6 (土) 午後 医務室
「……くん……シントくん、起きなさい……」
誰かの声が聞こえる。
女性だ。大人びた女性の声。
なんだか体が重い。胸が締め付けられるような、息苦しいような。
でもなぜか心地いい。柔らかい感触がある。
微かにイイ匂いもする。なんだろう。
「シ・ン・ト・くん。おーきて」
重い瞼をゆっくり開き、声の主を確かめる。
「あー、起きた起きた。おはよー」
天井をバックに霧真者先生がはしゃいでいる。
「あ……おはよーございます……」
目を擦ろうとするが両腕が動かない。
仕方なくそのまま瞬きを繰り返し、視界をはっきりさせる。
僕に馬乗りになっている霧真者先生の姿が見えた。視線を下げると大股開きでタイトスカートもかなり上までめくれ、ストッキング越しの下着が丸見えだ。
速攻で目が覚める。
「せ、せんせい! おぱんてぃが見えてしまっています!」
いいながらも、ライトグリーンのパンティーを目の前で凝視しまくりんぐする。
この眺めはエロすぎんだろ! やばい、この先生はやばい! 見るな! 見たらあとあとロクなことにならんぞ! 見るんじゃない、俺の眼たちよっ!
そう思っても僕の目はますます見開き、目の前のグリーンモンスターを記憶に刻印し続ける。
「やだー、普人くんのえっちぃ。そんなに見られちゃうとせんせー恥ずかしいなぁ」
いいながらも不敵な笑みを浮かべ、俺の頬をなでなでする。
胸に感じる先生の、締まっていながらも柔らかな感触のお尻とフトモモも心地いい。
やめろっ、悪魔めっ! また無理難題吹っかける気だろ! 模擬戦1位なんて無理だかんな!
「それより普人くん、せんせいにウソつこうとしてたんだって? せんせいショックだなー。超ショックだなー」
なんで先生が知ってるんだ? 僕が嘘付こうとしたこと。
緩みきった顔が自然と真剣なものになる。
霧真者先生もそれを読み取り、まじめな顔になる。
「万屋さんがぜんぶ本当のこと言ってくれたわよ。報告書にはウソ書いとくから。あんまり女に恥かかせるもんじゃないぞ」
女とは霧真者先生のことだろうか、それとも万屋さんのことだろうか。
……たぶん両方だろう。
はじめっから先生を信じていれば、万屋さんと一緒に謝っていれば。
すぐばれるつまんない嘘は、結局誰のためにもならなかったか。
「まあ、庇われてうれしくない女もいないけどね」
落胆した様子に気付いた先生が、さりげなく大人のフォローを入れる。
「お気遣いありがとうございます」
僕は思ってることが顔に出やすい様だ。
「それでー、これからも万屋さんの魔物が暴走しちゃうと、万屋さん毎回困っちゃうよねー。先生も毎回呼び出されたんじゃ、すごく困っちゃいます。
ここはやっぱり普人くんの出番じゃないのかなー?」
確かにこんなことが毎回起きては、まともな学園生活は送れない。根本的な問題を解決しなければ同じことの繰り返しだ。
とはいえどうすれば解決できるのだろう。
「しかし、どうすればいいのでしょうか、霧真者先生」
先生の顔とおパンティーを交互に見ながら解決策を求める。
「そこは自分で考える。これだけ先生の下着見たんだから先生のお願い、引き受けてくれるよね、ね」
出たよ悪徳女教師。あんたが見せる気満々で見せたんでしょーに。
「解決してくれたらご褒美あげよっかなー」
なんだとっ!
「キャワイイ万屋さんから感謝されて、超キャワイイ先生からもご褒美もらえるなんて一石二鳥だよね。普人くんラッキーだね。You're A Lucky Guyだね」
さりげなく自分のほうが可愛いアッピルをされ、無駄に発音のいい英語で同じ内容を二度言われたが、言われてみれば確かにそうだ。
どのみち万屋さんのために越えなければならない問題でもある。
「は……い」
言ってしまった。
「じゃあ決定でーす。お願いね、普人くん」
先生が僕の上から降りようとする。
「あ、先生ちょっと待ってください。」
動きを止めた先生のパンスト越しのパンティをもう一度しっかり凝視する。
「……はい、okです」
「もう、普人くんはムッツリ助平ね」
先生はニコニコ悪魔といったところか。
「おーい、じゃあそろそろ右腕レントゲン撮りにいくから起きろよー」
ベッドのカーテンを開け、箱入先生が姿を現す。
「箱入先生、いつからいらっしゃったんですか……」
「霧真者先生と一緒に入ってきたぞ」
聞かれてた……ずっとこの恥ずかしいやりとりを。
「小林君もう下半身だけ起きてまーす」
霧真者先生が元気に報告する。
寝起きに間近であんなものを見せられた僕の股間は、患者用のローブにテントを張っていた。
「若いっていいな」
箱入先生が気の利いた一言を添える。
恥辱にまみれた姿を、いい大人たちにまじまじと見つめられている……
死にたい。
箱入先生に尋ねる。
「レントゲンって、前屈みでも撮れますか?」




