ほぼ女子会
5/6 (土) 正午 学生食堂
「なーににしよっかなー」
今日は連休中ということで、学生食堂はお休みだった。しかし休日でも学園内で働く教師や職員、自主練に来る生徒たちのため、購買部は開いている。
「じゃあ先生はミックスサンドとチキン竜田バーガーと濃厚ブラウニーバーにしまーす」
女子生徒2人はなんとも暗い雰囲気だ。
「先生けっこういきますねー」
唯一乗ってくれるのは柵平君だけだ。さすがは人付き合いクラスナンバーワンだけある。
「でしょでしょー。みんなもちゃんと食べときなさい。私たちがおなか空かせても、小林君が早く治るわけじゃないんだから」
連休も終盤に差しかかった土曜のお昼近く、家で二日酔いで寝ていた私は箱入先生からの電話で叩き起こされた。
愛しの普人くんが大怪我したとあっては放っておくわけにはいかない。
慌ててスーツに着替えて医務室に直行したところ、女子3人組が廊下で待っていた。
いやー、しかし普人くんがこんなにモテるとは思ってなかったなー。不覚だったわー。しかも全員問題児の要注意人物ばかりだ。
柵平家は民間の発現者人材派遣業を営む大手中の大手企業。ウチの学園に多額の寄付も提供している大事なスポンサー様兼取引先の1つ。そこのご令嬢、もとい御曹司である友和君はかなり要領のイイ子だと思ってたんだけど、まさか普人くんと仲良くなってたとはねー。
そして代々異能者の家系で政財界にも顔が効くってウワサの宮ノ本家。そこのお嬢さんと、その宮ノ本家に預けられて育った万屋さん。この2人は今年の新入生のなかでもずば抜けて高い能力の持ち主で、上の連中が特に期待してるエース。
だけど問題は万屋さんが魔物を制御できてないこと。今回の件でも、その未熟さが原因なのは薄々感じている。
なにせ当の本人があれだけ落ち込んでるんだからほぼ間違いないでしょ。
レジのおばちゃんに学園の身分証を渡し、会計を済ませる。といっても教師も生徒同様タダなんだけどね。一応購入記録は取っとくのがここのルール。
自販機でいつものキリマンジャロブレンドの缶コーヒーを買って、校庭を眺める日当たりのいい窓際の席に座る。
ほかの3人も自分の分を買って、席に着く。
「ほいじゃ、いただきまーす」
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます……」
万屋さんだけやっぱり元気がない。普段は元気で明るいコなんだけど、まじめだから責任感じちゃってるんだろう。
「いやー、しかしこうやって集まると女子会みたいねー。先生1度やってみたかったのよねー女子会」
場を和ませようと何気なく言った言葉に、柵平君が口を尖らせて不満の目を向けてくる。
「あっ、ごめんなさい。”ほぼ”女子会だったわねー。おほほ」
そんな心配しなくてもダイジョーブですって、柵平お坊ちゃま。わたしはそんな口の軽い教師じゃありませんよ。
しかしどこまで持つかなー。本人もキビシイってわかってるみたいだけど。
「ところでみんな、連休中は何してたの?」
みんなの緊張をほぐすため、まずは世間話でもと話をふる。
「あ、僕は普人くんとちょっと模擬戦の練習を」
「あら、それは感心感心。模擬戦じゃあ大怪我する子も多いからみんな気を付けてね。じぶんの身はじぶんで守らないと」
随分小林君と仲いいみたいね。
「あたしは、両子ちゃんと基礎練したり、お買いものしたりしてました」
この2人も仲いい……ってゆーか、いつもベッタリでちょっと心配なのよねー。他の生徒とも仲良くしてもらいたいんだけど。
まあそれができるかは普人君次第ってとこかな?
「先生は何してたんですか?」
柵平君がすかさず尋ねてくる。
「わたしはねー、昨日は小林君と濃密な夜を過ごしちゃいました。彼、今日寝不足だったでしょ?」
ガタンッ
と隣りの柵平君と正面の万屋さんが飛び跳ねる。
「せ、せんせい! そーゆうの冗談でも良くないと思います。いちおう生徒と教師なわけですから、きょ、教育上よくないやつです! ……ほ、ほんとなんですか?」
柵平君焦り過ぎ。
「ほ、ほんとなんですか霧真者先生。ほんとに小林君とあのー、そのー……」
初心な万屋さんは恥ずかしそうにモジモジしてるけど、小林君のことが気になるみたいね。
「先生、不潔です」
ほほう、宮ノ本さんはクールに流すか。
「冗談よ、じょーだん。でもねー先生普人クンみたいなコ、好きだなー。ちょっと暗いけど、優しいし、一生懸命だし、顔もなかなかだから隠れファンも多いかもねー」
「そ、そーなんですか? あの普人くんが?」
「小林君、確かにやさしいから……」
若い、わかいなー2人とも。この程度で動揺しちゃうとは歯ごたえがないぞ。まあ簡単に諦めちゃうなら普人君は先生が頂くまで、うひひっ。
「あくまで先生の予想の話よ、2人とも。あの根暗がそんな人気あるなんて聞いたことないわ」
ぐぬぬ、意外な伏兵。冷静な宮ノ本さんに痛いとこ突かれてしまった。こーゆうツンデレタイプが意外とかっさらってっちゃうのよねー。気を付けないと。
ありきたりの世間話をしながら4人で昼食をとり、一息ついたところで本題に入る。
「それじゃ、世間話はこのくらいにしといて、そろそろ先生に教えてくれない? どうして小林君が骨折したのか」
だいたいは予想できるけど、一応本人たちから聞かないとねー。お仕事ですから。
再び重い空気になる。
はじめに口を開いたのは柵平君だった。




