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次の朝、武瑠は謝ってきた。
夢見が悪くて混乱していたのだと。
私は気にしてないと告げた。
事務官の彼女から聞いたことは尋ねたくなかった。
あの子からもらった情報なんか確かめたくなかった。
終始すまなそうな顔をする彼にいつものようにがっつり系の朝御飯をたべさせて、送り出す。
彼の顔色がすこぶる悪いのには、気付かない振りをしてやった。
午前中にコンビニに行って求人案内と住宅情報の冊子を手に入れる。
見馴れた街を離れるのもいいかもしれない。
結婚した当初、よく通った喫茶店が目に入った。
感情表現が苦手な私に根気よく話しかけてくれて言葉を待ってくれた彼。
余りに待ちすぎてイヤになったのかな?
もっと自分から笑ったり、話したりする子がよかったのかな。
あの事務官の彼女のように感情をはっきり示す子が。
今さら思っても仕方ないことを思って自嘲する。
カフェオレを飲んだ後マンションに帰った。
主の居ない彼の部屋。
いつもなら鍵がかかっているのに今朝は閉め忘れたのだろう、かちゃりと音をたてて開いた。
そっと入った部屋の中には六法全書の収まった本棚とパソコン、折り畳みのベッド、今朝まで着ていた部屋着が椅子にかけてあった。
(あっ…。)
彼の匂いがした。
「私は夢を見ているの?」
武瑠の部屋にいるのに足元がフワフワとおぼつかなかった。
今朝、彼を送り出した場面が蘇る。
「ちがう、私は・・・武瑠を見つけた、この部屋で・・・!」
蘇ってくる恐ろしい現実にワナワナと震えた。
自然と流れてくる涙。
「どうして、戻ってきてるの!行かなくちゃ!」
冴は、この部屋を出ようとした。
その時、ズキッと米神辺りに激痛が走った。
目の前の部屋がグシャリと歪んで回る。
何が起こったのか、立って居られなくなって膝をついた私の口から出た武瑠の名前。
確かに、冴は彼を愛していた。
つづく




