下
最後です!
「ライ、どうして」
「エミリー、あのときはごめん。僕はエミリーに甘えっぱなしだった。エミリーに並び立てる自信がなくてあんな、試すようなことを言ってしまった」
あのとき、がエミリーをフッたときのことをいっているのであろうことはすぐにわかった。
「エミリー、君に頼ってもらえるような人間になるために、この五年、いろいろやったんだ。筋肉はあまりつかなかったけど」
ライを見れば、以前とは全く違うことが一目瞭然だった。ひょろっとしていた体つきは引き締まり、表情には精悍さがある。
「ライ…」
ライは花束を差し出して笑った。
「エミリー、僕は君のとなりに並び立てる人間になれましたか…?」
そして、花束以外にもライが差し出したものがひとつ。
青い宝石のついた指輪。
「っはい…」
イエスを伝えれば、指輪と同じ色の青い瞳が少し潤んだ。
「お二人。フラれたどころか告白を遮られた挙げ句隅っこで散った哀れな私への配慮はないのかい?」
「ふん、お前の気持ちを考える義理はないね」
「ら、ライ?!相手は公爵様だけど!?」
エミリーは多いに焦った。なんてことを言うのだ。いくら弄りやすそうであれども公爵は公爵。敬うべき存在だ。
「大丈夫、大丈夫。ディドロは友人だから、べつにいいんだ」
「おい」
「それに、一応僕の方が今は権限あるかもね。実質は」
意味深なことをライはいい始めた。なにやら嫌な予感がする。
「ライ。そもそもお前はなんでここにいるんだ」
「…ライ?どういうこと…?」
どういうことだと説明を求める二人の視線に負けたのか、ライは両手をあげた。
「エミリー、僕は今、戦場を取り仕切る仕事をしていてね…。「それ、将軍って言わないか?」うるさい。ディドロは静かにしてて。エミリーが目を覚ましたと聞いていてもたってもいられず、現地の魔術師に転送してもらった。」
「ライ…どうやって戻るつもりだったのよ…」
「た、たしかに…それは迂闊だったかも…」
転送してもらったはいいが、転送先に転送のできる魔術師がいなければ転送では帰れない。
「バカだろ、ライ」
「ディドロは黙っとけ」
ライのディドロへの扱いがひどい。ハラハラする。
「…ねぇ、ライ?」
「どうしたの、エミリー?」
「私の秘密、聞いてくれる…?」
私はついに、そのひみつを話すことにした。
「私は…魔術師なんだ」
ライは静かに私を見つめている。優しい視線に促されるように続きを話す。
「ずっと黙っててごめんなさい。だけど、バレたら絶対に引かれる自信があったからいえなくて」
「どうして?」
「私…殺戮の狂女ってよばれてたから…」
エミリーは目を伏せた。
「え、エミリーが?!」
「ごめんなさい…」
すると、ライはエミリーの手を取ってキラキラとした瞳で彼女を見つめた。
「すごいよ、エミリー!僕ら最強の夫婦だよ!僕は剣を、君は魔法を。ほら、なんだってできるね?」
「ライ…!」
ライとエミリーは完全に二人の世界だ。
「ふん。二人で戦場にいってくればいいじゃん。フラれた私の横でお構いなしにイチャイチャしちゃってさ。」
公爵は完全にいじけモードなのだった。
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それから。
「はあっ、はあっ…お母さん、もう無理…魔力切れる…」
「わ、私も…」
「あら、ケリーにエリー、もう疲れたの?そしたらライにバトンタッチで武術ね」
「「え、ええ…」」
母親譲りのの金色の髪、父親譲りの青い瞳の少女二人はげんなりした顔をした。
「お父さんは大歓迎だよ?」
黒髪を靡かせてライはニッコリ笑った。
「それに、セリはまだ頑張ってるよ?」
父親に果敢に攻める長女、セリを見て二人はちょっと引いた。
「いや、セリ姉はちょっと…」
母親譲りの赤い瞳、父親譲りの黒髪が舞う姿から少し目をそらした。
「うん、まあ、セリはちょっと規格外な気がしないでもないけどね…。」
ライは苦笑いしつつも、いとおしげに娘たちを見つめた。
「ライ!ケリーに、エリー!休憩にしましょう!ほら、セリも!」
三人の子宝に恵まれた二人はなか睦まじく、今も暮らしている。
ーfinー
ここまで読んでくださってありがとうございました!
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感想など聞かせていただけたら嬉しいです。
ライとエミリーの娘、セリのお話も完結しました。よろしければそちらもどうぞ。
甘え下手セリと甘やかしたい公爵家次男
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