第十話 イベント前にいざ初配信
イベントが迫る…がそれはそれとして準備ができたから配信をする。
そもそも特別なにかこのために練習するようなことも無いし、その練習は配信しながらでもできる。
イベント前に初配信をするという人はほとんどいない。
というか配信する人自体が少ない。
するにしても雑談配信くらいだ。
理由はただ一つ。戦略バレを防ぐためだ。
オンラインマッチは当然出る。このゲームにはそれ以外の項目がないし。
だが配信となれば話は別。
自身の戦法が初見殺しであるもの。はたまたどんなことをしてきてもある程度の対応はできるようにしているもの。はたまた戦法を知られようが知られまいが一撃で全てを終わらせるもの。
その戦略の全てに『初見』というバフが付く。
このバフは殆どの場合初撃でそのバフ及びデバフは切れる。
だがこのゲームはBAD。そのバフはこのゲームにおいて初撃だけでは無くならない。それどころか一試合だけでは無くならない可能性すらある。
その理由はポイントボーナスによる拡張性の高いステータスと種類の多すぎる魔法にある。
そろそろ発売して一ヶ月が経とうとしているこのBAD。
流石に底まで時間が経つと全ての魔法の内容も大体把握してきているわけで。
だが知っているからと言って実践ですぐに分かるかと言われれば別。
片手剣だから火魔法というわけではない。むしろ他の魔法を使っていることのほうが多い。
俺のようにガントレットを使っている人は他にもいる。だがその人達も加速魔法かと言われれば答えはNO。
このゲームに特別これが強いと言うテンプレは未だ存在しない。
これに対してこれが有利というものこそあれど最強の組み合わせというものは日夜議論がかわされている。
話が逸れたが、まとめると初見というバフを捨てたくないと言う理由で配信を避けている人が多い、ということだ。
だが俺はする。
何故か。
俺の組み合わせは『初見』というより『初接敵』したときによりバフを得られるようなものだと思うからだ。
この加速ガントレット、戦い方を知っていると色々対策はできる。
だが実際戦うとそれを実践出来ない。
自分で軽く対策を考え、銀河に俺のステ振りをしてもらい、自分を完璧にメタったステで対戦したことがある。結果は惨敗。
頭で考えていたことは、とっさには出来ない。そう痛感した。
などと考えているうちに準備は完了。
あとはボタンを押すのみ。
深呼吸して、配信開始ボタンを押す。
「どうも〜風見でーす」
こんな感じで良かったかな?
・こんばんは〜
お、一人来た。
まぁまぁ最初はこんなもんだろう。
コメントしてないだけで見てくれてる人も数人いるし。
「まぁ見ての通りBreak Action Duelやっていきまーす
というか俺はこれをメインにやっていくかな。気が向けば他のもやると思うけど。」
・なるほど
・そろそろイベントだけど戦い方バレてもいいもんなの?
コメントしてくれる人が一人増えた。やったね。
「ぎn…フレンドとも話してたけど対策されたとしてもそれ以上の力でねじ伏せればいいだけだし。」
・わぁすごい自信
・ま、そこまで言うなら見せてもらおうかな?
「誰目線なんだそれ… ま、それはともかくマッチング初めるぞ〜」
始まるマッチング。なんか見られていると思うだけでいつもより緊張するな。
ちなみにだが、このゲーム配信中のプレイヤーは配信中のプレイヤーにしかマッチングしないというものがあるので、でたくない人はでないというものになっている。
今配信してる人は普段より少ないとはいえマッチングはするだろう。
〔マッチングが完了しました。〕
〔対戦相手:ハイル〕
〔ステージ:山岳〕
「よろしくお願いしまーす」
「あ、よろしくお願いします。」
挨拶されたのは初めてだな。
とか思いながら、体の力を抜き、外部からの情報をシャットアウトする。
視界の端に流れるコメントも、なんか話している(俺に向けてかはわからんが)のも意識から外す。
5、口を動かし、詠唱用のイメトレをする。
4、相手の武器は…剣と盾。オーソドックスな戦士スタイル。
3、相手は…まだなんかと話してるな。
2、手を握り、開き、力を込め、力を抜く。
1、いつものように。ごく自然に。トッ、と宙に浮き―
0。
「『アクセル』」
一気に距離を詰める。
・はっや
・なにこれ
・こんなんあったんだ…
コメントが加速する。人も増えたようだ。
まぁ今は勝負だ。
「『クイック』」
ハイルが横に剣を振る。
だがスレスレで俺が上に飛ぶ。
そのまま体を後ろに捻り、ハイルの方を向く。
そしてグッと空を踏みしめ、蹴る。
間一髪のところで躱され、拳が地面にめり込む。
「『火魔法・ファイアボ』」
「遅い!」
この至近距離で詠唱を始めた相手を見て地面についたままの拳で体を回し、足で顔面目掛けて蹴り上げる。
それによって距離が空く。
その間に体制を整え、来ているであろう攻撃に備える。
あ?来てないな。ま、それならそれで。
「『超加速魔法・ハイ・スピードブレイカー』ァ!!」
終わらせるだけだ。
自分の目の前の空間が割れる。
ギュン、と景色がブレる。
勢いそのままにハイルの顔面に拳。ノックバックに少し飛ぶ瞬間には次の拳。
たった3秒。
それだけで勝負は、決まる。
〔勝者:風見鳥〕
「と、こんな感じですかね?」
・???
・最後何が起きてたの?
・チートか?
「チートじゃありませんよ!?」
それだけは違う。そこは即座に否定しなければ…
「いやまぁほとんどチートみたいなもんだと思うが…」
「いや銀河お前どこから来たの???」
・銀河さん!?
・限りなくチートに近いPS…ってコト!?
・普段から仲良さそうだなこの二人
「おーう俺も配信中だぜ。まぁそろそろ終わるけど。」
「はえー。」
「興味無さそうだなオイ」
まぁ実際あんま興味ないし…
「あ、そうだ。こいつその内視聴者参加型の対戦やるらしいからよろしくな〜多分俺も行くけど」
「あ、言うの忘れてたわ。ありがと」
・さて、抗ってみるか…
・負ける前提じゃねえか
・まぁ勝てるビジョンが見えませんし
・そうか?案外行けたりしそうだけどな
「俺はそろそろ行くわ〜じゃあな〜」
「はいはーいまたな〜じゃ、もう一戦行きますか。」
そう言って俺はコメントと共に新たな戦いの扉を開く。
銀河はそこそこ有名な配信者です




