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エース攻略戦(2)

ロロアは莫大なクレジットでアメルア軍を買収する。

それはアメルア軍にとっての希望の光か。


相変わらずエースでは、ZMとアメルア軍の攻防が繰り広げており。


フォレストパークの夜間の殺人的な寒波とアルミの嵐。

そして制空権を無視した燕型戦闘機バトル・スワローの攻撃がアメルア軍を大いに苦しめていた。



ガラクタが燃え、暗雲と腐敗臭が立ち込める中、網の目のように塹壕が張り巡らされている。

その中で、ヘラクレスの突撃隊がキラービーの支援もなく進軍する。


アメルア工兵:「了解ジャック。作戦開始時間だ!!ヘラクレス!!前進!!!」

ヘラクレスが縦一列になって塹壕を飛び越え、ゴミを掻き分けて前進する。

広げた羽根の後ろには兵士達が乗るも、明らかに士気は低く、塹壕内に隠れる兵士達はどこまで進軍できるか固唾を呑んで見守っていた。


兵士が塹壕から双眼鏡を出してヘラクレスの軍団を覗く。

「そうだ・・行け行け・・よし。2番目の塹壕に到着したぞ・・!!」


兵士達がヘラクレスから降りて、塹壕の中に入ってゆく・・。

そこはアメルア軍が最初に陣地を築いた場所であり、彼らの進軍が全く進んでいない事を物語っていた。


ここまではいつも通りだ。

おそらく夜になり、マーマレドが必要になるあたりでZMが奪い返しにくるだろう。


少し離れた所でいつもの作戦が始まった。

兵士を降ろすヘラクレスをよそに、別のヘラクレスが塹壕を跨いで可能な限り前進する。

ある程度進んだところでZMのプレーナによる攻撃が始まる、キラキラとガラクタだらけの地平線を照らし、兵士達も反応するようにヘラクレスの羽根の間から反撃をした。

圧倒的な制圧射撃にZMのプレーナが止む。

そこへ更にヘラクレスがZMの潜んでいるタコツボに頭を向けて照準を合わせる。


しかし不意にガラクタからZMが飛び出し、プレーナに気を取られたヘラクレスの脇腹を爆弾付きの槍で突き刺した。

正面から3番目のヘラクレスがプラズマの火柱を上げて爆発する。

そしてヘラクレスの列に今度は逆方向からホイップの重いバスターが浴びせられた。


「・・・・!!!」

ホイップの比重の重いバスターは5番目のヘラクレスの装甲をゆっくり溶かしながら侵食し、たまらず背中に乗っていた兵士達が飛び出した。

5番目のヘラクレスが煙を吐いて動かなくなり、1番目と2番目のヘラクレスが機関銃と大砲を撃ちながら撤退を試みる。

4番目のヘラクレスがホイップに向かって大砲を撃つも、破壊されたヘラクレスに場所を阻まれ動けなくなってしまった。

アメルア軍が動揺する中、ZM側の燕型戦闘機バトル・スワローが飛来する。

バトル・スワローは素早く滑空すると、頭の左右に付いた連射式のバスターをヘラクレスに浴びせかけた。


兵士が痛みのあまり両手を挙げて次々と倒れ込み、4番目のヘラクレスの無防備な背中にバスターが当たって大爆発する。

他のヘラクレスはなんとかバトル・スワローのバスターを受け流し、命からがら逃げ出した。

後を追いかける兵士も情けなく、スパークライフルをかなぐり捨てて逃げ出した。


(ウワーーー!!)

ZMの勝利の雄叫びが聞こえ、ヘラクレスの敗走を許す。

敗走する兵士を逃すのは武士の情けか。

しかし、潔く散るより戦うことを放棄した兵士を塹壕に留めておくほうがアメルアの士気を著しく低下させた。

敗走はクレジットのペナルティーの他、ハイリスクで低クレジットの作戦に選ばれる事があったからだ。




バトル・スワローは警戒するように暫く漂うと、破壊されたエースの竪穴格納庫に消えた…。


────


「バトル・スワローのご帰還だ!!」

「おうい!シャッパを持ってこい!!」

白いタオルを巻いたZM達が駆け寄ってバトル・スワローの頭を下に倒してハッチを開ける。

コックピットの中から煙があがり、明らかに長期稼働によるオーバーヒートを示していた。


「さぁ!水桶にはいりなせい!!」

ZM達に担ぎ上げられてスワロー乗りのZMがシャッパと言う揮発性の高い液の入った鉄の桶に浸かる。

他のロボ達はバトル・スワローに縁起物のしめ縄を締め直したり潤滑油を注いだり、整備に余念がない。


「大丈夫ですかい!?」

ZM-300(ミイさん)も駆けつけ、柄杓を持つと桶の液を頭からかけてやる。


「えぇ、ええ。大丈夫です」

パイロットのZMが頷き、頭から液に潜った。


「またすぐに兵隊さんが来るみたいで・・行けやすかい??」

「はい。頑張ります」


ミイさんとの会話をそこそこにパイロットのZMが桶から出ると、いそいそとバトル・スワローに乗り込んだ。

頭部が上がって元の位置に戻ると、お尻にあるジェットが勢いよく噴射して発進シーケンスに入った。


(ありゃ、人サンの下で働くのと変わらんね)


バトル・スワローが垂直に発射され、上空へ飛び出す。

さて終わったぞと桶を片付けるロボ達にミイさんは食ってかかった。


「・・今、聞き捨てならないことを何か言いましたかい??人サンがどうって??」

円筒形のメカニロボがミイさんに聞かれ、慌てて“知らない”とボディを横に振った。

「ジェットの音に誤魔化してボヤいた声、この音声センサーでバッチリ聞こえやしたよ??」


ZM達が気まずそうに頭を下げ、1体のZMが耐えきれなくなって遂に口を開いた。

「気分を害されたならすんません。ちょっと場を和ませたくて何にも本意と違う事を言ってしまいました・・!」


ミイさんはZMに歩み寄り、ゲンコツが届くくらいまで歩み寄る。

「潔く申し出た事は良い事です。しかし、どうです?場は和みやしたか?」

「は・・!?い、いいえ」


「そうでしょう!!言葉って言うのは、どんなプログラムよりも深く、心の真の部分に突き刺さるんです。そんな気持ちでバトル・スワローに乗ってみなさい。あなたはやるせないでしょう?」

「は・・はぁ・・すんません」


「言葉と心!気持ちと行動!全てが一致していないと人サンとの戦いには勝てないと肝に命じてください!!わかんやしたね!?」

「は・・!はい!!肝に銘じます!!」


「さ!気を取り直して補給部隊を向かい入れやしょう!!」


エースには物資輸送用の補給部隊が定期的に来ていた。

6頭の馬型メカニロボを繋いて引っ張る連結滑車のそれは『メルヴィア・エスクプレス』と呼ばれ、メルヴィア国内の共民主義派の議員がアルムシュア条約に則った上で人道支援の名目で送っていた。


その物資の中には食糧の他にジェネレーター。

そしてZMの各種パーツが入っていたのだが…。



──────


「リ!!リ!!リ!!レ!!レ!!レ!!ルヴァ・ロロア・リレー!!!(ロロア万歳!!)」

「リ!!リ!!リ!!レ!!レ!!レ!!ルヴァ・ロロア・リレー!!!(ロロア万歳!!)」


私の主催する宴は3日3晩続いた。

私は(クレジット)の力に驚愕した。

皆、私の情報を何の疑いもなくBBSをし、ビアを奢ると言えばそれに従い、私の言葉を有り難がった。



「ロロア姫!姫!」

酔ったボロボロの兵士が私に話しかける。

チズコフとワズニャンと仲が良く、同じ背丈で上唇が裂けた独特の顔は兄弟のようだった。


「ワズニャンから聞きました!救世主が現れたと…!私は、何をすれば良いでしょうか?地雷除去でしょうか?」

「あなたは私の後ろでみんなと一緒に援護射撃して頂戴!」


「へ?突撃は?」

「そんな自殺行為なんてしなくて良いわ!仲間と共に後方援護。それでいい!」


「は!?本当だったんですね!!ウワァーー!!ロロア!イヴァソラーノ!!!アッハーーー!!!」

「よ、よしよし」

兵士はヘルメットを投げると、私の太腿に擦り寄って子供のように大泣きした。


「それで・・エースをどうやって攻略するんだ??」

シードが聞く。

「まずはエースがどんな戦況なのか知りたいわ!!ジャック!!いる??」


『ああ!居るよ。ロロア、面白い事をしているね。正直言って、ここまで兵士を動かせるなんて予想していなかった』

「世の中クレジットだよ。何回もできないけど、使う時はバンと使わないとね」

『なるほどね。じゃあホログラムを出すぞ?さっき帰ってきた奴からしたらビアが一気に不味くなるだろううがな』

バーの中央にあるタワーから『エース』の巨大なホログラムが天井を覆う形で反転して出た。

その瞬間、賑やかだったバーが一瞬にして静かになり太腿で泣いていた兵士も震えながら頭上を見た。


中央には上階が崩落し、瓦礫と化した巨大なゴミ処理場があり、スクラップをそのままブルドーザーで流し込む地下施設に続くコンベアが数カ所口を空けていた。


スクラップの山と谷。

歩きやすそうな平地には、破壊された無数のヘラクレスや装甲車。

地雷原を無効化しようと幾つものクレーターがスクラップだらけの地表に出現し、最先端の塹壕にもアメルア兵が居るが、皆黒く膨張し、明らかに死んでから時間が経っていた。


私が居た塹壕はどこだったのだろう?


見ると下級兵士が塹壕から出て地雷を解除しながら前に進み、すぐさまZMに補足されるとあっという間に制圧されてしまった・・。


上からホログラムで見ると本当にわかりやすい。

勢いづいたZM達が塹壕に駆け出すと身を乗り出し、完全に油断していたアメルア兵を数名倒してしまった。

アメルア兵からしたら下級兵士など死んでも気にも留めず、結果的にZMの恐るべき機動力と気転で全員が死んでしまったのだ・・。

 

私達はエース攻略の最初にも到達できては居ない・・。


───思った以上に地獄だよこれ────


私はお腹の底がズンと重くなり、誰かの持ったビアが

ガタガタと震えた。

見るとワズニャンで、心配そうに私を見ながら何度もシエルマルーア人の特徴である鼻から下に裂けた上唇を舐めた。


シードは腕組みしながらホログラムを見て、脂質でできた甘辛い粒を頬張った。

アモンはホログラムを見上げながら無意識に薬指の指輪を撫でる。


あれは何だろう?

私は『エース』向かう不思議な列を見た。


アメルア軍の塹壕を抜けるとZMの居るであろう陣地を越えて、地雷原を器用にジグザグに抜けた。

そして大きく遠回りした後に、瓦礫に開いたコンベアの中に吸い込まれていくのが見えた。

不思議と両軍とも攻撃せず、驚くほど簡単に入り込む。


「あれは何??」

『あれは君の国、メルヴィアの人道支援のキャラバンさ。『メルヴィアエクスプレス』と呼んでいる。国内の共民主義の議員の名で、物資を送っているんだ』

ジャックが言う。

「何を積んでるの??」

『主に“デンプン”だ。他にジェネレータ・・機械の部品・・あと・・』

「機械の部品??そんな物を何に使うの??」


「バグズだよ」

「え!?」

シードが私に言う。


「ある時、メルヴィアエクスプレスが間抜けにも地雷を踏んだんだ。そこに出てきたのか分解されたバグズの部品だったのさ。おそらくメルヴィアでバグズを分解した後、エースで再度組み立ているのだろう。バグズの部品にはスパークライフルに転用できるものも多いし、味方の”治療“もできるからな・・」

「なんで戦争を終わらせたいメルヴィアが、戦争の原因を運ばせているのよ!?」


『ロロア、戦争というのは喧嘩じゃないんだ。たくさんの人やロボ、頭脳が互いに鬩ぎ合うのは戦争なんだよ。その中には、それを間違っていると言うものや、敵を助けたいと思う者も居る。アメルア軍はメルヴィア・エクスプレスを脅威では無いと考えているよ』

シード:「バグズが増えた所で、俺らがバスター1発ぶちかましたら終わりだからな」



「・・じゃあ、私をバラバラにしてメルヴィアエクスプレスで内部に侵入するのはどう?法律的にも可能でしょう?」

『ははは。誰がエースでロロアを組み立てるんだい??』

「あ、そっか・・そっか」

私は自分のジュースを見た。

瞳の横に赤い点が表示される。

きっと『ユナ』も私と同機してこの絶望を共感し、この恐怖に引き攣るアメルア兵達を遠隔で見ているだろう。


ホログラムのエースは新しいアメルア兵が補充される。

皆、装備も着古したボロボロな者が多く、士気も低そうだった・・。

見るからに使え無さそうな兵士達は、地雷無効化ジャマーと呼ばれるT字の棒を持って装甲車から降りると塹壕の兵士達と合流した。

もう彼らはスパークライフルですら持たせてもらえないのだ。

「作戦で負け越すと、クエストの報酬レートが上がるんだ。アメルアの上の人はそうやって兵員を確保するんだけど、それほど危険なんだよ。つまり・・負ければ負けるほど高くなって、より切迫詰まった兵士が元を取り戻す為に参戦するんだ。でも僕らは弾薬すら満足に調達できないから、あんなふうに地雷探知ジャマーしか持たせてくれないんだ・・」

ワズニャンは呟くように私に説明すると、ビアを呷った。


他の兵士達も私を見ている。

もうビアもおつまみも賭け事もせずに、虚無の瞳で私を見ている・・。

彼らを変えるにはどうしていただろう??

長年戦ってきたシードは、こうした苦境をどう潜り抜けて来たのだろうか?


私はシードを見た。

シードが私を見る。


きっとシードなら度重なる激戦で呆けた兵士の隣に座って元気づけていることだろう。

そして私はキリカルテから奪った膨大なクレジットでアメルア兵を買収しようとしたのだ・・まるでハイレートで兵士を使おうとするジャックのように・・。

これじゃあやっていることがA Iと変わらないじゃない。

シードとAIの違いは何だろう?

シードを始めとする歴戦のアメルア兵がやってきた事・・それは・・。


「みんな聞いて!!!!」

私はいても立っても居られずに立ち上がると、ホログラムが照射されているタワーの下に来た。

他の兵士達は、まるで低学年の子達のような不安そうな目で私を見る。


「ハ・・ハァイみんな!!・・・楽しんでる??・・楽しんで・・ないよね・・?」


(ハハハハハ・・)

兵士の中から渇いた笑いが起きる。


「みんなZM・・バグズがどんな兵士か知ってる??私は、あなた方アメルアがここに来る前にずっと戦ってきたの!ニュートリノ発電所での戦い。ホワイトスペクターの艦内でも戦ったわ。

ZM達はお互いを尊重し、励まし合い、作戦中に道に迷っていた私と話をしてくれた・・とても勇敢で、自分が破壊されると分かっていても惜しみなく突撃してきたわ!

みんなが考える殺戮をプログラムされた野蛮な兵器じゃない。皆が自分の意思をもって・・古い型番の仲間を尊敬して戦っていた!!もしも自分が破壊されても次に来る仲間の為に自己犠牲を惜しまなかったの」


「・・・・・」

アメルア兵達がビアを少し呑んで私の言葉を聞く。



「それで・・あなた達はどうかしら?あなた達は隣の人がどんな人か知ってる??私はジャックからデータを受け取ってみんなのデータがあるからみんなの事は知っているわ。・・あ、ごめんなさい」

アメルア兵の中で小さな騒めきが起きたのですぐに謝る。


「別に情報を漏らしたりスパイには使わない!

ただ、私の頭脳の容量と、サイフォノイスって言う私を差別する人たちに興味があったの。だから、少しの罪滅ぼしに私のプロフィールをみんなにBSSしたの・・。ワズニャン。チズコフ・・。あなたの経歴ももちろん知ってる・・」


チズコフ:「面白かった??」

チズコフの皮肉にワズニャンとマイキーが笑う。


「とても興味深かったわ!それで分かったの!!私を差別するサイフォノイスと言う人は、元々は勤勉に働く労働者だった!!ロボット達の対等で追いやられてしまった人達だったの・・!!!」


(その通りだ・・!!まだ君を信じちゃいないがな!)

アメルア兵の誰か叫び、見ると腕を組んだ兵士が睨みつけていた。

それを制するように別の兵士が腕を殴り、一悶着ある。

私はその兵士達に近づき話を続けた。


「私はこの2人を知っている!!だから私は言うの!!私は彼を憎まない!!ロボットが彼らに何をしたか知っているから!!そして、それを注意してくれた彼には感謝するわ!!!でも、どうして彼がロボットを憎むことになったのか知らなければならないの!!そして味方同士、暴力はもってのほかだわ!!謝って!?」

2人の兵士はお互いに謝り、私にも謝る。


「あなた方はアメルア人!!私は自由メルヴィア軍で、今の扱いはアメルア軍だわ!!

だからアメルアの可能性の高さや考えの柔軟さは理解できるし尊敬もできる!!

だからホログラムのエースの惨状を目を逸らさずに見てほしいの!!

これがあなた方崇高なアメルア人の戦い方かしら!!?

人としての未熟さ

兵士としての戦略の無さ

自分の利益でしか動かず、他人が撃たれても気にしない無責任さが生み出した惨状に見えない!?

だってそうじゃない!!

今のアメルアはあまりにもお互いを知らなすぎる!!

ここに居るシードが共に戦い抜いた戦友達とは質があまりにも違いすぎるのよ!!

なら!!

私達は変わるべきなの!!!

アルムシュアを戦い抜いたアメルア軍に戻りましょう!!

そしてみんな!!

私のプロフィールを見たわよね!?

私の願いはただ一つ!!

メルヴィアに平和を取り戻したい!!

もう一度言います!!

私は貴方を知っている!!

そしてみんなもお互いに理解してほしい!!

知ったからには誰も見殺しなんてしないわ!!!

仲間だもの!!

みんなで掴みましょう!!勝利を!!!

私達は光の戦士!!

アメルア兵なのだから!!!!!」



「ウーーーーアーーーー!!!!!」

シードが立ち上がり、みんなに向かって手を挙げる!


アモン:「・・そうだ!俺たちはアメルア軍!!光の戦士!!」

マイキー:「みんなでお互いを知ろう!!そして潜り抜けるんだ!!この戦場を!!」

ワズニャン:「みんなで戦おう!!みんなでやろう!!」

チズコフ:「みんなでロロア姫の下で力を合わせよう!!」


「みんなで語りましょう!!みんなで私が突撃する活路を開いて!!」


あれほど見るのも怯えていた兵士達が一斉にエースのホログラムに向かってレーザーが放たれた。

(ここにはZMの銃座がある)

(ここには地雷が入念に仕掛けてある)

(ここは防御が固い)

(ここはヘラクレスが破壊された)

(ここは犠牲者が多く出た)

そうした議論がいくつも起こり、どうしたら私をエースに送れるか議論が始まった。


私のジェットは時速10キロに満たないけれど、地雷原を進ことができる。

私のバスターの火力は兵士10名分に匹敵する。



こうした情報が彼らを後押しして死刑宣告とまで言わしめたエースからいかに助かるかを前向きに議論しているのだ。

シードとAIのジャックも自らホログラムとなって出現し、タワーの前で率先して兵士達の質問に答えていた。

2人とも何だか嬉しそうで、ジャックなんて戦略AIなのに嬉しそうに感じるのは不思議だった・・。





チズコフ:「あのロロア同輩??」

「ん?なに?」

チズコフとワズニャンがテーブルに来て私に話しかける。


「ロロア同輩は、ビアを呑まれないんですか??」

チズコフの問いにマイキーが答える。

「ロロアは小学生だぞ!?ビアなんて呑めるかよ!」


「いや・・まぁ・・そうなのですが・・。これから俺らは死ぬ可能性もある。こうした命を賭けた戦いには仲間同士盃を交わすのがシエルマルーアのやり方でして・・」

「そうなんだ!」

私は運ばれてくるビアを見た。

一応、私も人間と同じ人工的な臓器が使われているけど・・ビアを呑んでも大丈夫なのだろうか・・??


「じゃ・・じゃあ俺が呑むよ!!」

「え!?」

沈黙を破ってマイキーがビアを持った。


「お!!マイキーもビアデビューか!?」

アモンがビアを持って嬉しそうにマイキーの隣に座る。

「あ、、いや。チズコフとワズニャンが盃を交わしたいって言うから・・」


「ありがとう!!盃を交わすにはこうします」

チズコフとワズニャンがビアのジョッキを両手の親指と中指で持つと、一気に呷った。

きっと数千年・・。

アルム派と呼ばれる空中都市に住んでいた時代からの

礼儀作法なのだろう。


「「・・うわー・・」」

マイキーとアモンが目をパチクリとさせながらそれを見る。


「プハァー!!アメルアのビアは美味しくて混じりっけのない!!久しぶりにやるとスィルバーニャですね!!」

マイキー:「お、俺だって!!」

アモン:「いいぞ!マイキー!アメルアを見せてやれ!!」

「大丈夫!?無理しないでね?」


私が見守るなか、マイキーはシエルマルーアの礼節に習ってビアを呷った。

アモン:「フーーー!!」

アモンがマイキーの呑みっぷりに歓声をあげる中、ついにマイキーがビアを空にした。

「ゲップ…!す・・スィルバーニャ!!」


「ははははは!!その調子です!!もっと行きましょう!!アンダレイ・ビア!!アンダレイ!」

「よーし!!俺も男だ!!もっと持ってこーい!!!!」


すぐさま次のビアが運ばれ、アモンも呑む事にしたようだ。


「エースの攻略と出逢いに!!乾杯!!!」

アモンとマイキーがビアを呷り、チズコフとワズニャンがそれに続いた。

私も乾杯に合わせてジュースを飲む。

ジュースだけでも苦しいのに、ビアを一気飲みして楽しいのだろうか?


マイキー:「プハァー!美味い!アハハハハ!!」

ワズニャン:「主民主義リレー!!」

4人は満足そうに笑い、マイキーはトロンとした目で私を見た。


「なぁなぁ、なんでシエルマルーアからアメルアに亡命したんだ?他の共民主義国もあっただろう?」

アモンがワズニャンに聞く。


「あぁー。そうですね。結局、共民主義って言うのは全て平等なんですよ。何をやっても給料が変わらない。貧富の差が一切無いのです」

「良い事じゃないか?」


「それが本当に良い事ですかね?産まれてから死ぬまで何も変わらないんですよ?政治家達はその裏で私服を肥やし、それを共民原理派の政治家が粛清(クルチョク)する。そして行き過ぎたクルチョクの後に、私服を肥やす官僚が居て、汚職と裏金のオンパレード。

労働者の中でも、働かなくても給料を貰える事に気付いた労働者が居て、働かない人達…いわゆるアルダンスが生まれたんです」


マイキー:「うっぷ。・・アルダンスは、コーディアスでも悪口だ」


「ふふふ!そうでしたか!でも、シエルマルーアではアルダンスは深刻な社会問題だったんですよ。共民主義と言うのは国民一人一人の『働いてくれる』と言う信頼が元に成り立っていますから。

『働かない』と言うのはイレギュラーで、共民主義体制の根本を揺るがす物だったんです。

ソロス政権はそれを重く見て本来、権力者のみに行われてきたクルチョクをアルダンス達に向けたのです。

いいえ。

働くのを拒んだシエルマルーアの国民を…」


「そのクルチョクって何をするの?」

「BSSしますか?」


「うん」


私はチズコフの手を握った。

チズコフのナノマシンが動き、肌が透けて骨が見えるくらい発光する。

私の脳内にシエルマルーアの歴史が流れ込み様々な映像が流れた。


─────


政治家は心の純白を示す白い制服に“国民の声を平等に聞く”と言う意味の白い三角耳が付いた帽子をかぶっている。

頭上にはかつて存在したであろう空中都市の大陸の絵と、それを指差すように人差し指のイラストが描かれたシエルマルーアの国旗が掲げられており、政治家達も敬礼するように人差し指を斜めに挙げて政治の平等性を誓っていた。


しかし『原理派』と『推進派』の2つの派閥が分裂し、どちらが共民的か自分達で作ったプログラムのAIに問うた。 

AIを用いた非難合戦はやがて我慢比べに発展し、ついにシエルマルーアの法の名においての汚職行為と国家反逆罪の処刑に該当するのではないかと言う考えに発展した。


いつしかこれを『粛清(クルチョク)』と呼ぶようになり、自分達の意にそぐわない別派閥の者達に向けられる事になる。


議会は崩壊し、白い装甲服の兵士達が議員達にスパークライフルを向けた。

議員達が驚きながら抗議の反論をする。

しかし帰ってきた返答は、冷酷なバスターの嵐だった。


年代が変わり、一台の浮遊型乗用車が銀行の前に停車する。

白い制服を着た政治家が付き人も無く出てきた。

おそらく地下の駐車場に停めると駐車記録が残るのだろう。

これが政府の指示でない事は明らかだ。


シエルマルーア人は労働に従事するためか、白い共民服を着た市民が2列になって行進する。


すると列の間から男が出てくる。

列は、仲間が列から外れても気にする事なく前進を続ける。

彼らが恐れるのは会社の遅刻であり、他人が列から離れようが気にはしなかった。


「・・・!!」

政治家の男が驚いた顔をした瞬間、極限まで絞ったペンシル型の小型のスパークピストルで撃ち抜かれてしまった。

一瞬の閃光の後、男が何事もなかったかのように列に加わる。


政治家は乗用車に俯きながら寄りかかると、滝のような鮮血を鼻から出しながら死戦期呼吸をした。


────


場面が変わり『エスピーカ』と呼ばれるシエルマルーアの歴史的な広場が映った。

エスピーカは、空中都市で使われたと伝説のあるオベリスクが真逆で地面に突き刺さっていて、抜けないように幾重もレンガで補強されて金色の説明板があった。

そこは政府の手が及ばない神聖な場所であり、シエルマルーアの何らかの働かない市民達、いわゆるアルダンス達の掃き溜めとなっていった。

共民主義社会では労働する事は基本であり、労働を基準とした法律の前に労働に従事しない者をどうするかと言う法律は持ち合わせていなかった。

シエルマルーアではこうした労働者を何かしらの法律と結びつけて罰してはいたが、エスピーカの前では法律が届かず。

まして、一つの会社の集団ボイコットやサボタージュには対応できなかった。


そのような状況の中、2台の装甲車がエスピーカの前に停まった。

装甲車には毒々しいサーダ将軍のステンシルシールアートが噴き付けられていて、選ばれた軍人は半分機械化されたエリートだった。

エスタガレー・サーダは軍人の家系で産まれた厳格な共民原理主義者であり、腐敗した共民政治を軍事力と言う形で粛清クルチョクした第一人者だった。

その卓越した行動力で国民の支持を集め、やがてシエルマルーアは軍が支配する巨大な軍事国家に変化する。


サーダ将軍の親衛隊を示す赤いベレー帽を被った兵士が出てくるとエスピーカの広場に駆け出し、アルダンスに向かってスパークライフルを向ける。

前方にいたアルダンスは立ち上がり、皆で手を繋ぎながら兵士達を見た。

ここは神聖なるエスピーカであり、共民である国民は守られなければならない。

彼らはどこかで、自分達は撃たれないと自信があったのだろう。



兵士達は何も言う事なくスパークライフルを放ち、アルダンスは激痛のあまり背伸びをしながら反り返ると、手を繋いだまま倒れ込んだ。

銃声を聞いたアルダンス達が驚き、慌てて立ち上がる。

しかし、立ち上がる為に中腰になった瞬間に次のバスターがアルダンスの胸を貫き、他のアルダンスの右目に入って頭蓋骨内に留まった。


ジェネレータを一本使い切る程の高出力の赤いバスターは次々と他のアルダンスの身体を貫通し、バスターが貫通する度に死体が動いた。

それは赤い流れ星のように残光を残し、白い共民服の間を抜けるのだった・・。



──────


「ううぃいーーーっぷ!」

マイキーが空のグラスを倒して私は我に帰った。

見るとテーブルに空のグラスがたくさんあって、アモンはいなくなっていた。


「ちょっと!マイキー、大丈夫!?」

「うん。ヤバいよロロア。ピリタス」


「は!?ピリタスって精神安定剤のアレ!?」

「うん。あれを売ってくれる奴がいて…えーっと誰だっけ?チズコフ?さっきの誰だっけ?」


チズコフ:「さっきの人、マイキーさんのお友達だったんじゃないんですか!?」

「マイキー?何をされたの?」


「ビアを呑みながらピリタスを打つと何もかも忘れられるって教えて貰って、打ってもらったんだ。フワフワして最高の気分だぜ…!ふう」

マイキーはそう言いながら眠ってしまった。


「ハァ。・・・」

私はマイキーを見ながら呆れる。

もうマイキーはアモンや他の酔いどれと同じ“男”になってしまったのだ。

「どうですか?ロロア姫。シエルマルーアの歴史は?」


チズコフとワズニャンが私を見る。

「一言で言うと血に塗れた歴史ね…。でも、クルチョク自体は悪い事では無いように見える・・。むしろ正しい事だと思う」


チズコフ:「ほ?それはなぜ?」

「だってそうでしょ?あなた達が戦う理由は何?結局はお金の為でしょ?でも、そのお金が無い原因を作ったのは誰かしら?」


アモン:「それは…自業自得じゃないか?みんな個々に理由はあるかもしれないが、特に俺なんか…」

「戻ってきたのねアモン。でも、それは違うと思うの。アモンもチズコフもワズニャンもマイキーもシードですら同じ。

国が保護してくれないからよ。

国が保護してくれないから、アモンは自己責任に追われ、アモンもチズコフもマイキーも自力で市民権を得る事しか考えられず、シードは兵士のまま心を囚われている。この戦争・・いえ、フォレストパークが出来た時から政治家やお金持ちの利権のボードゲームでしか無いのよ。私達は駒にすぎない。

一部のお金持ちのね!」


「・・・あ、ああ。それは分かりきった事ではありますが・・だからと言って私達には戦う事しか方法は無い訳でして・・」

「だから、それが良くないのよ。大丈夫よチズコフ。

フォレストパークの戦いが終わったら、私がなんとかしてあげる!メルヴィアを、、世界を変えないと!」


「ロロア姫…!!もしかしたら本当に姫様に…?ひょっとして女王になる日も近いかも!?」

「どうかな…」


私は天井を見た。

天井には天の川が描かれ、その星と星を繋ぐように神々が描かれていた。


私の有り余る容量、そして右手のバスターの破壊力・・。

───お父さんは私をどうしたいのだろう?────


私はふと考えた。


ユナ:『私がパパに聞いてみようか?』

突然ユナからメッセージが脳内に入る。

ずっとオンラインだった事に驚き、そういえばそうだったとふと思った。


・・・。

ユナが“パパ”と呼ぶことに、砂を噛み締めるような違和感を感じ

ユナ:『私も、バスターは弱いけど・・。エース攻略に参加させて??』

とメッセージが来た頃には、そんな考えは抱いてはいけないって考え直した。


『ユナ?あなたがいなくなったら誰も私を拾いにいけなくなる。だから、出番がくるまで待ってて?』

『うん!』


私はふと、手付かずのビアを見た。

指に掬って少しだけ舐めてみる。


ユナ:『まっっず!!ちょっとセラ!!何をしたの!?』

『ビアって言う大人の飲み物らしいわ!!』


ユナ:『げぇーーっ!』

───ユナが味覚の同期を遮断しました────


どうやら私達は自在に感情や五感の共有や遮断ができるらしい。

だとしたら私はこれから始まるエースでの戦いをユナに背負わしたくなかった。

そして…。


「アモン…?」

アモン:「あ?なんだ?」


私はアモンに話しかけた。


「アモン。報告が遅れてしまってごめんなさい。アモンはエースでの戦いが終わったら結婚するんだよね?」


「あ?あぁ。生きて帰れたらな。今じゃエース攻略はハイクレジットのクエストだ。上手くやりくりすればギリ除隊できる」

「ふふふ。残念だけど、あなたはエースに行かないわ」


「は?ん!?・・・なぜ!?」

「マイキーとシードと話をしたの。キリカルテの残りのクレジットと私のクレジットがあればあなたは除隊できる」

「そんな事にしたらロロアはどうなる?」


「私はアステロイドだから他の人みたいに治療を受ける必要が無いし、メルヴィアに平和を取り戻すまで居るつもり」

「・・そ・・そんな・・!?マイキー!お前はいいのか!?」


マイキーがテーブルに突っ伏しながらVサインをする。

シードは相変わらず、アメルア兵の豪傑達と楽しそうに話をしている。

「ほ・・本当に言ってるのかロロア!!本当に俺は除隊していいのか!?冷やかしじゃないのか!?!?」

「うん!!新しい人生を歩んで?アモン!」


「ヒィイーーー!!!」

アモンは悲鳴とも絶叫とも言いにくい声で叫ぶと、しゃがんで泣き出した。

「アモン!元気だして!チズコフ、ワズニャン。他のみんなも解放してあげるから!!だから私を前線に送り届けてね!!」


チズコフ:「はっ!!ロロア姫!」

ワズニャン:「ロロア・イヴァソラノ・・!!!他の同輩にも伝えます・・!!救世主が現れたと・・!!!」


──

ワズニャンはいてもたっても居られずアメルア軍として戦う他のシエルマルーア人やコーディアス人のコミュニティーに教えて回った。

彼らは主民主義の国々とは違って独自の連絡網を持っており、お互いに助け合いクレジットを共有しあっていたのだ・・。

やがてそれはエースで戦う最前線の共民主義国の兵士達の耳に入り、全てのアメルア軍の耳に入る事となった。

『じきに救世主ロロアが大軍を率いてエースにやってくる』

やがて、その噂は彼らの希望の光となり排他的なサイフォノイス達を沈黙させた。


軍事A Iであるジャックもアメルア軍達の希望の声を尊重し、無理に攻撃の命令をしなかった。



────


破壊されて放置されたヘラクレスが塹壕に跨って中折れする。


もう一両は大きく爆発したのか、上半身のカブトだけが転がっていた。


“タコツボ”に隠れていたZMが恐る恐る身を乗り出す。

古びたKー1スパークライフルを肩に下げ、砂まみれの双眼鏡を覗きこんでアメルア軍が居るであろう塹壕を確認した。

アメルア軍の塹壕では装甲車が何両も停まって忙しなく兵士が乗り込んでいた。



「ミイさんの旦那。ミイさんの旦那。聴こえますか??」

『もしもし??なんでしょ??』

「敵さんが撤退してます。もしや負けを見越して逃げ出しているのでしょうか??攻撃もしてきません・・!マザーアカナの生誕祭でしょうか??全体が休戦状態なのです!そんな事あるとおもいますか??」


『あっしの調べる限り、そんなデータはありやせんが・・』

「不気味です・・一体なんでしょう・・」


ミイさんは最前線のZMから次々とアメルア軍の撤退の報を耳にした。

ZM達は湧き立ち、もしや大国アメルアに勝てるのでは!?!?と希望の声すら聞こえた。


ZM−300(ミイさん)は腕組みしてドシリと構え、勝利に湧き立つZMのように喜んだりしなかった。

「あっしはとても嫌な予感がします・・まるで津波が来る前に潮が一気に引くような、そんな不気味さがあるんでさ・・。

確かに敵さんは撤退してきますが決して油断はせぬように。皆もわかりやしたね??」

ミイさんはジっとモニターを見ながら、アメルア軍の動きを考えた。



















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