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ポイズミー・マッシュルーム

ロロアのキリカルテの探索は続く。


その先に居るは、イレギュラーであるポイズミー・マッシュルーム。

ロロアはどう戦い、何を感じるのか・・。

胸のフィンが高鳴り、私の吐息しか聞こえない。


赤外線センサーには男が付けた足跡が地面に残されており、時間が経つとみるみるうちに青くなって黒く視認しずらい状態になる。

『ここで深追いするのは危険よ。まずはエレベータの問題から解決しましょう』

「うん。見たところ、空調設備とかの一部の電力は生きてるみたい」


『何者かが意図的にエレベーターを停止させたのかもね・・』

「おそらくはネームド・・」


『ええ。それもかなり素早い。補足したらショットガンが有効かもしれない』

「そうね。わかった」


フロアは上階と変わっていくつか屈折していた。

壁の中央にはスリットが入っていて非常用のオレンジの灯りが薄暗く灯っていた。


かなりの権力者か富豪が葬られているのか個人的な個室がいくつか分かれているが、その全てを索敵するのは難しいので、警戒しながら進む。

幸いここは人工的に作られた床なのと、私が一人なので、少しでも対象が動けば床が軋み、敵が潜んでいる事がわかるはずだ・・。



「(ん・・何か聴こえる・・)」

私は慎重に進みながら聴力のレベルを上げてゆく。

私の吐息、フィンの音、さらにその先に何かが聴こえる・・。


「キャハハハハ!!!」


真後ろからけたたましい笑い声が聴こえて素早く振り返る!

その瞬間、ドスドスと脚と腹に痛みが走り、“それが“キノコの形をしているアステロイドであると判断した事のは猛烈な回し蹴りで壁に吹き飛び、箱を破壊した!

「ぐはっ!露・・ロロアショットガン!!」

私は闇雲にショットガンを撃つと、暗黒にバスターの粒が散乱した!

「アハハハハハ!!!」

それは私の腰ほどしか無いほど小柄で、身体の半分を占めるほどの巨大なキノコの傘で身体を覆いながら嘲笑うようにバウンドした。

「このアルダンス(※コーディアスの汚い罵り言葉)!!」

キノコが縦横無尽にバウンドし、標的を外した私のショットガンが壁や床を破壊し、砂埃が舞った。

「アハハハハハ!当たらないよ!!これあげる!」

キノコはバウンドを辞めると私に何かを投げつけてきた。

地面に落ちたそれは、ゴム製のラバーヘルメットを被った兵士の首だった。

 

「あれれ?驚かないのー??」

「私が首に驚くとでも・・?あなたは何者!?」


バウンドが止み、キノコの傘が小さくなる。

ムクリと立ち上がるそれは、5歳児くらいの身長のキノコのから両手足が生えたようなアステロイドだった。


「僕の名前はポイズミー・マッシュルーム!すごい武器を持っているんだね!君の名前は??」

「私はロロア・フローラウス・メリアス。メルヴィア出身の自由アメルア軍よ」

「アメルア軍!!僕と遊びに来たの??」

ポイズミーはとても無邪気に笑いながら言う。


「違うけど、あなたがやっている事が”遊び“なら、私も参加せざる得ないね。あなたはマット師団の何??」

「僕はもともと、フォレストパークの防衛データの集合体なんだ。オジサン達が僕に身体をくれて、ここを防衛することを約束する代わりに”おもちゃ“を運んできてくれる約束だったんだ」

「オモチャ・・ですって?」



「ヒィイイ!!!」

向こうのフロアに隠れていたのか半裸の男が飛び出す。

「まぁ見ててよ!!君もアステロイドなら心配無いよネ!!すごく面白いんだから!」


ポイズミーは非常灯の中で不気味な笑みを浮かべると

鼻を押さえて傘を広げて何かを放出した!

「ポイズミーミスト!!」



『ドクロ3*%』

『ドクロ50%』

瞳の中にドクロマークの謎の表示が展開され、徐々に濃度を上げてゆく。

「テリンコさん!何この表示!?」

『こ、これは・・!?空気中の毒素が上昇している!!ロロアちゃん!!大丈夫!?』

「テリンコさん!!どうしたらいいの!?」

『今、成分を分析しているわ・・!!ロロアちゃん、とにかくここから離れて・・!!』


『ドクロ80%』

「ゴホッ!ゴホッゴホッ!」

私は思わず吸い込んでしまい咳き込む。


「うぎゃっ!!ウガガガガガガ!!」

半裸の男がのたうちまわり、胸を掻きむしり口から泡を吐く。

私も呼吸が苦しくなり、何度も咳をすると毒を吐き続けるポイズミーにバスターを向けた。

しかし意識が朦朧とし、喉が締まって呼吸ができなくなる。


『ロロアちゃん!!聴こえるか!!パパだよ!隠しパーツの所に走るんだ!!』

「おとう・・さん・・」


『早く!!するんだ!!!』

「目が・・よく・・見えない・・!!」

『大丈夫だ・・!!さぁ、ガイドを転送した・・!それを目印に・・!!』

私は徐々に暗くなる視界の中に光る矢印を見ながら壁に手を付いて進んだ。


「アハハハハハハ!!!もっと苦しめーー!!アハハハハハ!!」

ポイズミーは半裸の男を苦しめる事に夢中になり、私に無関心になる。

私が本来なら毒が効かないアステロイドだと思っているのか、彼は”オモチャ”に集中するとすっかり他が見えなくなる性格なのかもしれない。


ポイズミーの狂気に満ちた笑い声が遠ざかり、暗黒と静寂が戻る。

お父さんの指し示した矢印は淡々と通路を示していた。

何かに躓き、振り返る。

『グリーンキラーね。死んでいる』

「誰かに殺されたの?」


『いいえ。自決したのね。大丈夫。私がロロアちゃんのセンサーと同期して目になるわ』

「お願い・・私はどうなってしまっているの?」


『わかりやすく言うと、ロロアちゃんの人工肺が極めて毒性の高い胞子に侵食されているわ。普通の人だったら呼吸困難で死んでいた筈・・』

「私の“人間の部分”が邪魔をしたのね。私がお父さんにワガママを言って人間の身体にして欲しいって言ったから・・」

『・・・・』


通路にホログラムが形成られる前のようなグリーンのレーザーが走る。

「何か、始まったわ?」


ホログラムで形成された燕尾服を着た男性が私の前を通り過ぎた。

(ルイス・・!ルイス・・!!どこにいる?)

(父さん・・?どうしたの??)


「何かホログラムが始まったみたい・・」

『きっとマット師団が無理に墓を暴いたから、ここに埋葬された人の記憶データが再生されているのね・・』

「記憶データ??」

『思い出を出力して映像化させるのよ。大丈夫・・害は無い』


(ルイス・・!ルイス・・!!)

(聴こえてるよパパ!)


目の前に古めかしい豪華な装飾の建物が再現される。

大きな窓にはメイドに付き添われた車椅子の少年が居て、燕尾服の男性と親しげに会話をしていた。

(ルイス・・良い話と悪い話がある・・どっちから聞きたい??)

(うーん・・。そうだなぁ。。良い話?)


(良い話だな?君の難病を未来の技術で治せるかもしれない)

(え!?本当!?)


(ああ!でも、実現して確実な治療法として出回るにはずっとずっと先みたいなんだ・・。そこで次は悪い話なんだが・・きっとパパやママは、君が治療を受ける未来には行けそうにないのだ)

(それは・・どう言う事??)


(ルイス。よく聞くんだ。君は治療法が確立するまでコールドスリープに入ってもらう。そこで培養した新しい肉体を使って1から構成しなおして貰うんだ。未来人によって)

(嫌だ!パパやママが居ない未来なんて、そんな世界ごめんだ!)

(落ち着くんだルイス。きっと未来は素晴らしい可能性に満ちている!そこで新しい生活をすると良い!きっと歩けるようにもなってるぞ??ママにも言ってあるから──────)

(─────)

(───────)


・・・・。

「消えて・・しまった」

『そうみたいね』


「ルイス君は・・復活できたのかしら」

『ここにマザーデータがあるという事は・・叶わなかったかもしれないね』

私はルイスの事を考えながら通路を歩いた。

「それって残酷じゃない?未来を約束して結局復活させてあげないなんて…」

『科学技術が進歩した今でも、人の完全な復元は難しいの。確かに肉体や見た目は復元できるかもしれない。でも、人格の再形成は難しいの』

「今はやってないの?」


『やっているし、それを望むお金持ちはいるよ。でも人格の再形成は課題なの。不安定すぎるのよ。あるいは、AIに学習させて、亡くした故人の代わりをさせる方法も・・』

そう言ってテリンコさんは口をつぐんだ。

・・それは私も同じなのではないだろうか…と。

「・・そ、そう。お金持ちの葬儀って大変なのね」

私は気づかないフリをして会話を続けた。


『そうね・・。富と名声を手に入れたら、次は死の心配だろうから。このキリカルテには色々な思惑の故人が眠っているのかもね』

「まだ見ぬ復活を信じて・・」



・・それはまさに死者の都だった。

(ルーファスや!ルーファスどこだ!)

煌びやかなマントを着た老人がペットを探している。

(ハッ!)

老人は苦しそうに口にマスクをあてると、必死に呼吸をした。

(ルーファス…!あぁあ)

老人は生命体を見つけると顎を撫でた。

信じられない事に犬型メカニロボでは無く、当時は犬と言う生物を飼育していたらしい。


老人がルーファスを愛撫する中、沢山の勲章をつけた軍人が剣を持って行進した。

ホログラムとホログラムがぶつかり合っているのだ。

見た目はマナツさんくらいで、さらに沢山の勲章をつけた小太りの上官達に向かって敬礼した。


(私はヴォルカ第7旅団!私の望みは国に忠誠を尽くす事!!必ずや国に吉報を持ち帰り、勝利してみせます!)

(期待しているぞマルカス中尉!君に1個師団をやろう!さぁ、これを!)


(は!・・これは何でありますか?)

(不老不死のチケットだよ。万が一君が戦死した場合、君の遺体は眠りにつき、復活を約束される。君は未来で軍神として歓迎され、富と名声が君を待っているだろう)


(は!有難き幸せにございます!!)


小太りの上官達は微笑みながら拍手をする。

しかし、ホログラムで見る彼らの笑顔はマルカス中尉の期待や羨望の眼差しではなく、彼を戦場に送った事で自分が救われた下品なほくそ笑みに見えた・・・。




「ロロア姉ちゃーーーん!!どこ行ったのーー!?」

不意に静けさを破って私を呼ぶ無邪気な少年の声がした!

ポイズミーだ!!

私は背筋が寒くなるのを感じた。


『ロロアちゃん!!急いで!!』

「うん!」


「か〜く〜れ〜ん〜ぼ〜!?!?」

ポイズミーが何処かのフロアに入り、ホログラムの動画再生が始まる音がする。

「ちっ!!なんでいねぇんだよ!!!!しねっ!!しねっ!!」

そしてガラガラと何かを破壊する音が響いた。


『ロロアちゃん、かなり近いわ!隠れて!右!』

「うん」

私は手探りで右の自動ドアを開けると転がり込んだ。


フロアには長方形の台座がドアに直列するような左右に2つ置かれていて、人間の形のガラスがそれぞれ置かれていた。

中には神経と脳と眼球が人間の形そのままに入っている。

触るとヒンヤリ冷たく、正常に保存されている証のようにガラスの人体が青く、内側から鼓動するように光っていた。


「ロロア姉ちゃん!!!!」

(近い!)

私はドアのすぐ横に張り付く。


お父さん:『ロロア!見つかりそうになったらシャドウを使え!』

「ロロア姉ちゃん!!」

私がお父さんの通信に頷こうとした瞬間、凄い速さでポイズミーが入ってきた!


「・・・!!」

思わず息を止め、壁にくっつかんばかりに張り付く。


「どこーー??」

(シャドウ…!!)私はシャドウを念じると、身体がメラメラと透明になるのを感じた。

きっと完全には透明にはなってはいないものの、暗闇であることも手伝って目立たない筈だ。


「ここーー??隠れても無駄だよー??」

ポイズミーが台座を覗き込む。

そして落ち着きなく天井を見ると僅かに開いた通風口を見上げていた。


「クソッ!!なんでなんで!!!!どこ行ったんだヨォ!!!!」

ポイズミーが人体の形をしたガラスに飛び乗って叩き割り、怒りの絶叫をする。


「あっ!そーだ!」

そして調子よく手を打つと、機嫌良く言った。


「僕が探さなくてもロロア姉ちゃんから出てきて貰えばいいんだ!!ポイズミーミスト!!!!」


これだけ至近距離はまずい!!


ポイズミーが鼻を押さえて傘を広げる!

その瞬間、毒が放出されて私は思わず息を止めた!


『ドクロ50%』

『ドクロ80%』


シャドウの効力が切れるのが先か、私の息が限界を超えるのが先か分からない!


私は気配を殺しながらさりげなくバスターをポイズミーに向けると、毒を撒き散らす事に集中している無防備なポイズミーに言った!

「ロロア!ショットガン!!!!」

分散するバスターがポイズミーの顔面に直撃し、鼻を摘んだ右手を粉砕して台座の向こうへ吹き飛ばした!

尽かさず私は台座に駆け寄ると、奥に倒れたポイズミーに駆け寄って、更なる一撃を撃つべく構える!

「ウワァア!腕が!腕がー!!ウギャアア!!」

ポイズミーが私の懐に体当たりし、私も必死になってポイズミーの身体を抱えると、そのまま後ろの台座に倒れ込んでポイズミーの頭部を強打した!

ガラスの人体が台座ごと砕けて飛散する。


たまらずポイズミーが這うように外へ逃げ出し、限界が来た私も新鮮な空気を求めて飛び出す。


そして走るポイズミーの背中めがけてバスターを構えると、なんとポイズミーは2人に分裂して1体は壁を駆け回り、もう1体はバウンドしながら逃げだした!!!


『ロロアちゃん!!大丈夫!?』

「ハァ・・ハァ・・!!ポイズミーはどこ!?!?」

私は荒い呼吸をしながら暗闇にバスターを向け続けた。

『エネルギー反応が遠ざかって行く・・!』

「追いかけないと・・!!」


『ロロアちゃん、それは辞めた方がいい!!今の身体じゃポイズミーの素早さに対処できない!!まずはカイン博士のカプセルを探しましょう!!そしてエレベーターを復旧して確実に倒すの!!』

「マイキー達に倒せるかしら!?」

『ビーム放射機がある!!きっとそれで対処できる!いいね!?』


「そっか・・!よし」

私は気を取り戻すと、壁に手をかけながら隠しパーツのある場所まで歩いた。


カプセルはフロアの一つに普通に置かれていた。

特に施錠もされておらず堂々と置かれているので、おそらくZM達はこれが何なのか特に気にもしていなかったのだろう。

私が近づくとカプセルが開いて、パパのホログラムが出現する。


『ロロアちゃん、この中にはいるのだ。このカプセルには君の強化ボディーパーツが入っている。粉塵を伴う過酷な場所や腐食を伴う化学兵器、病気など化学兵器、水中や深海での移動にも耐えられる筈だ』


「一つ聞かせて?このカプセルを置いたのは誰??」


『ロロアちゃん、バグズと言えど皆が同じ意見では無いのだ。君に賛同し、君こそ真の救世主だと考えている者達が居るんだよ。戦争とはそういうものなんだろうね』

「ふーん。ゲホッ!」

『さぁ、早く』


私はカプセルに入った。

入った瞬間、カプセルがビリビリと光り、私の新しいボディーがキラリと光った。

決めポーズを決めた瞬間、肺が楽になり、視界が元に戻る。


「そこまで・・変わってないけど・・ん?」

少し背が高くなり、少し大きくなった胸を触った。

『君の成長に合わせて成長させておいた』

「死ね」


パパに造られていると想像しただけで鳥肌が立ち、不快な気持ちになる。

『ロロアちゃん、エレベータの制御室を探しましょう?・・・ロロアちゃん??』

「あの毒が無効化されたなら、私1人でポイズミーを倒せるよ!」


『万が一ロロアちゃんが破壊されたら、貴女を回収に行けない!』

「大丈夫だよ。負けないから!」


「ロロア姉ちゃん!!遊ぼ!!!!」

・・・・!!!

不意に声がして振り返る。

一体何処から!?

全然気配がしなかった!!


「じゃあ、次は僕の番だね!!とわーん!!」

ポイズミーは回転すると巨大な黄金の球体になった!

「ロロアバスター!!」

攻撃して来る!!

私は腕をバスターに切り替えると、ためらう事なく射撃した!

しかしバスターは弾かれ、逆に私に体当たりしてきた!!

「ぐはっ!!」

私は思い切り壁にぶつかり、倒れ込む。

『大丈夫!?ロロアちゃん!!』

「・・皮肉なんだけど、少し大きな胸に救われたわ!」

『よかった!また来るよ!!』


私は胸を押さえながら体勢を立て直すと、ポイズミーに向かって叫んだ!

「シャドウ!!」

ポイズミーの体当たりが外れ、壁にバウンドする!


「あれぇ?」

調子が狂ってポイズミーの黄金の球体状態が解除された瞬間、尽かさずサンダーブレイクを放った!

「サンダーブレイク!!」

「あぎゃー!!」

ポイズミーが電撃を受けて悲鳴をあげる。


「ロロア・ラピッドファイヤッ!!!」

電撃で飛び上がったポイズミーにショットガンの連続攻撃を浴びせ、ポイズミーの顔面が吹き飛び、腕が千切れた!

ポイズミーは一定のダメージを受けると地面に埋没するように消えてしまった・・!


「ホログラムだ!!」

『極めて濃度が高いホログラムよ・・。ポイズミーの分身ね。スキャナーに映らなかったのはその為ね』


「アハハハハハ・・!」

遠くからポイズミーの甲高い笑い声がする。


『さぁ、ロロアちゃん!分身のポイズミーなんて構ってられないわ!エレベーターを動かしましょう!』

「うん!」


私はエレベーター制御室に向かった。



─────


制御室に向かう事に配管が増え、物々しい雰囲気になる。

死者が安置されていたフロアは洗練されていたデザインに対し機械室は無骨で、なんとなく配管の位置でどこに何があるのか分かった。

「この配管は窒素ガスが通っている管ね?」

『正解、検体を冷やしておくために使うものよ。赤と青の線が走っているでしょう?これが外部電源の配線ね』

配線しか無い無骨な通路。

その通路の影からポイズミーが出てこないか警戒する。


「あった。ここがエレベーター制御室!」


制御室のドアには人工血液が付いて、テラテラと光っていた。

もしかしているかもしれない・・。

私は手をバスターに切り替えながらドアを開いた。


制御室は薄暗く、制御パネルには粘菌が付いて蛍光色に光っていた。

メンテナンス用のメカニロボは粘菌に包まれ、充電ポートに辿り着けずに俯いたまま停止していた。

かなりの年代物で、全身がプレス加工の単純な外骨格。

目も単純な横穴で、頭脳を冷やすための2つの鼻の穴と、言葉を発する為の口が付いていた。


きっとこれを直すメカニックは直すより新しい物に変えることを勧めるだろう。

もう自力で動く事もできな────


ピピピ!ガガーーーガッ!


「えっ!うそ!?動くの!?!?」

『ロロアちゃん!どうしたの!?』

「お墓を管理していたメカニロボが動きそうなの!」


『敵対反応はある?武器は・・?』

「いいえ・・!本当にタダのメンテナンスロボ!」


『もう所有者も居ない骨董品よ。ここはマット師団の統治していた施設である事を忘れないで?なにかプログラムされている可能性もある。場合によっては破壊しても構わないわ!』

「うん・・!」


「ン“”ン“”“グムウ・・!!ン”“」


私はバスターを構えながら古びたメカニロボを注視する。

メカニロボは粘菌を付けたまま歩き出すと『回復ユニット』と書かれた思い扉を開けて、充電されているバッテリーの交換を始めた。

どれも充電ポートに装着されているものの、電解液の結晶で溢れていて使えるか怪しい。


「ぐム・・これは使えん・・コレも・・」

メカニロボは背中のバッテリーを何とか付け替えると、覆われた粘菌を引き剥がして身体のパーツの付け替えを始めた。


「ムゥウ。あのチビ助の仕業だな??仕事の邪魔をしおってからに・・」

メカニロボは古びた足を、錆びた脚に付け直して汚いチューブを身体に差し込んだ。


「む?!だれだ」

メカニロボが私に気付いて目の穴が赤くなる。

私はバスターを構えると口を開いた。


「ロロア・フローラウス・メリアスです。メルヴィア出身の自由アメルア軍です」

「アメルア軍!?あぁが…」

メカニロボは深呼吸しながら人工頭脳を冷ました。

機械メンテナンスなど昔の記憶は素早く出せるけど、最近の記憶を出すのは難しそうだ。


「どうも歳をとって、最近の記憶が出なくてな。この前はマット師団、アメルア、シエルマルーアの人が来たよ。そしてメルヴィアの女の子か。ふふふ」

「シエルマルーア…??」


『共民主義国の国よ。シエルマルーアは共民主義の祖であるアルム派の直系子孫なの』

「聞いた事…ないけど」

『メルヴィアは主民主義寄りだから聞かないのかもね。でも、アメルアと肩を並べるほどの大国で、アルムシュアの戦いはシエルマルーアとアメルアの代理戦争とも言われているわ』

私は少し不安になって古びたメカニロボに話しかけた。

言い方の順番ではアメルア軍の後、つまりアメルア軍のフォレストパーク攻略戦の最中と言うことになるじゃない!


「そのシエルマルーアの人はいつまでいたの??」

「シエルマルーアの人かい??はて・・いつまでだったかな・・ピーーーガガガガ」

「もういい。読み込みが大変でしょうから」


メカニロボが気を取り直すと施設内のメンテナンスを始めた。

古びたモニターには冷却設備の不備のほか、ファンの故障、ホログラムの誤作動など様々な異常を知らせている。

メカニロボは特にモニターを見る必要も無いらしく、粘菌で覆われたモニターを気にする様子も無かった。


「む?エレベーターが動いていないな?」

「そう。上の階で味方が待ってるわ。どうにかできない??」


「外部出力PP57ユニットが意図的に外されている」

メカニロボがギシギシ言わせながら歩くと、エレベーターの制御を司る部分を見て行く。


「僕がやったんだよ」


「わっ!」

機械の影に、片腕が無くなったポイズミーが居た。

私は思わずバスターを構える。

古いメカニロボは私とポイズミーの間で困惑していた。


「ロロア姉ちゃんと話がしたくて・・」

「私と話がしたい・・?」


「ウン。ZMの人達が言ってた。“ここにロロアちゃんって言う娘さんが来たら、兵隊さんから離して会話するように”って。“ロロアちゃんは機械ですから、ちょっとした高さも何のそのだ”って」

「私は特に話すこともないわ?どうしてそんな事を・・?」


「僕とロロア姉ちゃんは限りなく似てるから、きっと理解し合える時が来るだろう“って」

「アメルア軍を痛ぶって殺している貴方が、私と意気投合するとでも??」


「でも、やってる事は同じじゃんか!」

「・・・!!」


私はポイズミーの言葉に立ちくらみがした。

頭を押さえ、自分のやってきた事を思い出す。


「やってることは・・同じ?」

「そうさ!君はZMのおじさん達を壊してる。僕はアメルアの軍人を殺してる。生命体か、ロボットかしか変わらないんだ。やっている事は同じじゃんか!!」


『ロロアちゃん聞こえる!?ポイズミーの言葉に耳を貸さないで!彼は悪性のコンピュータプログラムである事を忘れないで!今求められているのは国防よ!!情に左右されないで!!』

テリンコが言う。


「ロロア姉ちゃん。オジサン達は言ったよ。

メルヴィヤ・ナチナエト・イスチェザート・ZM. イ・プローチイ・ロバトフ・ポ・プリチネ・ ベズグラモトノスチ。

(メルヴィアがZMを始めとするロボを排除するのは無知から生まれているのです)

ベズグラモトノスチ・オトクダ・ プロイスホジート?

ポニマエシ?

(無知とは何処からくるのか?わかりますか?)

ミ・エスムィ・コムミュニストィ・ナロード!

(私たちは共民なのです。)

タム・ニェト・ニ・ロバトフ・ニ・チェラヴェクフ・ニ・グラニツ・ストラヌィ・ニ・ レリギオーズヌィフ・ステヌィ……

(そこにはロボットも人間も、国籍の壁も宗教の壁もありません。

手を取り合って生きるのです。

そう、それはアルムの民がかつて天空の都に生きていたように・・。

私達は排除しなければなりません。

私達の考えに反する全ての物を。

私達は自分達の意に反する物を天空の都から落とさなければならないのです)

イェ アルヴェヌイ…」


ポイズミーの口から、シエルマルーアの“オジサン”の言葉が発せられる。

もちろん、私はどんな言語にも対応しているし理解することもできる。

しかし、実際に耳で聞いたことのないシエルマルーアの異国言葉は呪文のようで、その多くは共同体としての深い団結と、意に反する者の徹底的な排除をポイズミーに教えていた。


しかし、それを“悪”と呼べるだろうか?

もしも私のしていることが間違っていて、誰かの平和を脅かしす“悪”そのものだぅったら・・。

一体私は何のために戦い、何のためにアメルア軍に従軍しているのだろう?


「ね?ロロア姉ちゃん・・?僕とロロア姉ちゃんの違いって何??お姉ちゃんはメルヴィアを・・僕は、このお墓やロボット達を守っているんだよ?・・ねぇ、教えてよ?ねぇ」


『ロロアちゃん!耳を貸してはダメ!破壊しなさい!彼はイレギュラーで、ロロアちゃんを言いくるめようとしている!!』

「・・ねぇ、誰と話しているの?僕と一緒に新しい世界に暮らそうよ。アステロイドもメカニロボも、人間も一緒に暮らせる世界に!」

ポイズミーの左手が静かに何かを掴む。


「私は・・」

「うん?」


「私は・・!あなたのように敵をオモチャのように痛ぶったりはしないわ!!」

「・・・!!」

私の殺意を察したのかポイズミーが何かを振り上げる。

私は素早く胸にしまっているアトムナイフをポイズミーに投げつけた!

「ぎゃあ!!」

ポイズミーの額にアトムナイフが命中し、ドタリと大の字に倒れる。


「お嬢ちゃん!!何を!!?」

古びたメカニロボが私を咎めるように向く。

私の手はすでにバスターに切り替わっており、気づけば古びたメカニロボの腹をバスターで撃ち抜いていた。

「ワァァーー・・・!!!」

メカニロボは情けない悲鳴をあげてそのまま後ろに倒れてガシャンとバラバラになる。

“メカニロボのお爺さんは何もしてないのに・・!!”“と言う心の悲鳴が聞こえ、ゾワっと鳥肌と罪悪感が心を満たした。


「・・敵の沈黙を確認」

『良くやったわロロアちゃん。2つのエレルギー反応が消えた。あなたは正しいことをしたのよ。さぁ、エレベータを復旧させましょうPP57ユニットは??』


「ポイズミーが・・持ってる」

ポイズミーが握って居たのはまさしくエレベータを動かすための起動ユニットだった。

これを投げて私を攻撃するつもりだったのか、それとも単に渡すためだったのか・・今となっては何もわからない。


私はポイズミーの額からアトムナイフを抜くと、ユニットを拾い上げた。


『さぁ、ロロアちゃん。PP57ユニットを機械の窪みに嵌め込んで??・・横のレバーがあるでしょ?それを上下に動かして簡易的に発電するの。できる??』

「うん。サンダーブレイク」

私が地面に手をつけると、直接機械に電撃を放った。


電撃を受けたPP57ユニットのランプが青く光り、野太い低音を立てながらタービンが動き出した。


『凄い荒業だけどエレベータが動いたわ』

「ありがとう」


私が行かなくてもシード達は私のビーコンを目印に来てくれるだろう。

私は粘菌のついていない椅子に座ると、モニターを見るわけでもなく腰をかけた──



数分後


扉が開き、複数の軍靴が入ってくる。

マイキー:「ロロア!」

通信兵:「・・メカニロボと対象を発見。ロロアとコンタクトをとる」

シード:「念の為、隅を調べよう」


「・・オールクリアよ」


私はアメルア兵に言った。

尽かさずアモンが私の身体に怪我が無いか調べる。


アモン:「””ロロア、なんか見た目が変わったか?・・なんか、、こう””」

「太った?」


アモン:「””そう言う訳じゃないんだが””」

「ポイズミーの毒が凄くて、新しいパーツに変えたの」


アモン:「””そ、そうか””」


シード:「これは・・?」

「ここをメンテナンスしていた古い型のメカニロボよ・・ポイズミーの味方をするから撃っちゃった・・」

マイキー:「だから元気ないのか?」

マイキーのデリカシーの無い問いに私は睨む。


シード:「いずれにしても敵の諜報活動の手助けをする者は重罪だ。まして年季の入ったメカニロボなら、君が破壊しなくとも遅かれ早かれ壊れていたさ。良い仕事だロロア。君は情に負けなかった」

シードに肩を叩かれ、私は頷いて席を立った。


マイキー:「ごめんロロア」

「大丈夫よ。怒ってないから」


シード:「これがネームドのアステロイド。ポイズミーだね??」

「ええ」


シードはビーム放射器を持った兵士に指示をすると、ポイズミーに光線を浴びせかけた。。

ポイズミーの身体は立ち所に燃え上がる・・。


「どうして燃やすの??」

シード:「ロロア。バグズはこの戦いにおいて生物兵器を使用している。アルムシュア条約に反する明確な違反行為であり、この場合、一次停戦の後に調査団が派遣される事になる」

「そうするとどうなるの??」


シード:「フォレストマンを討伐し損ねるどころか、生物兵器を野放しにした罪でメルヴィアは社会制裁の対象となるだろう。アメルアの派兵の意味すら問われる重大な事件になる。だったらめんどくさい事になる前に焼却してしまった方がいい」

「・・・そうなんだ」


私は燻って朽ちるポイズミーを見ながら言った。


「偶然じゃないね?」

シード:「何がだ??」


「ビーム放射機の兵士が2人も居る事。なぜか少数部隊。私の存在。都合の良い事に私のパーツだってあった。まるでアメルア軍のレールの上を走ってるみたい。

さしずめ、あなた方は私のお世話をするガイニートレインね。違う?」

マイキーが困ったようにシードを見て、兵士たちが佇んだ。


シード:「そうだ。ロロア。俺たちは君をこのキリカルテに向かわす裏の作戦があった」

「・・なぜ?」


通信兵:「シード。これは極秘で・・」

シード:「かまわんさ。勘のいいロロアなら、遅かれ早かれ気付かれていたさ。それにロロアに知られたからと言って困る事じゃ無いだろう」


「・・で?裏でコソコソ何をしているの?」

シード:「それは・・メルヴィアの火消しさ。生物兵器を使うアステロイドを君が討伐する必要があった。アメルアからしてみればアステロイドの認知すらこの後の政治に関係するからな。あくまで俺らは、自由メルヴィア軍が倒したロボを焼却しただけ。そう言う扱いにしたいんだ」


「本当にそれだけ??」

シード:「あと他にもある。このキリカルテの深層に行けば君も分かる筈だ。会話が長くなってしまったな。そろそろ進もう?」

通信兵:「・・日没が近い。夜になる前に作戦を終わらせよう」



私達は通路をクリアリングしながら歩いた。



──────


シード:「エレベータで最下層に向かう。異論は?」

アモン:「“”ない“”」


通信兵:「さっきも言ったが日没まで時間がない。外はアルミの嵐が吹き荒れているらしい。早く終わらせよう?」

「さっきからやけに帰りたがるね??」


通信兵:「君と違って寒がりなんでね。それにここは墓場だ。長居したくはないだろう」

「そっか。大丈夫、すぐ終わらせるわ」


私達はやや大きめなエレベータに乗る。

フロアの全てが無機質なチタンで出来ており、きっと

この深層まで遺体を運んで処理して居たのかもしれない。


「シード?そういえば古いメカニロボが、ここにシエルマルーアの人が来たって言ってたよ」

シード:「やっぱりな。バグズが共民諸国の兵器のも納得がいく。おそらく裏で手を引いているんだろう」


「私が・・撃っちゃったけど・・」

シード:「まぁ、しょうがない。メカニロボ1体の証言のみで確証には至らないし、一応報告はしよう」



エレベータの扉の上が光り、まもなく目的地である事を教えてくれる。

兵士達はしゃがんで、極力身体が被弾する事を防いだ。


シード:「俺がポイントマンになる。エレベータから降りたらすぐさま散会」

「うん!」


エレベータが開き、兵士達が一斉にスパークライフルを向けた。

マイキー:「なんだ!?ここは!!」

シード:「行くぞ。ムーブ!!」


シードがスパークライフルを構えたまま歩き出し、私もついてゆく。

いつもと違って長い一直線の通路ではなく、オレンジのフィルムカーテンが内側から下ろされた分厚いガラスのフロアが各ブロックのようにいくつもあった。

どこからガラス室に入れるか分からないが、浮遊式担架や人口呼吸器が廊下に放置されており、アメルア兵が来るギリギリまで稼働していた事が分かった。

きっとここで引き取った遺体を処置して、各階のフロアに安置していたのだろう。


『敵を知り、己を知る』

そう書き殴られたガラスのフロアから何か空気の漏れる音がした。

きっとさっきの痩せ細った男が自力で出てきた場所なのかもしれない。


アモン:「“”なんだこれは!!!“”」

マイキー:「ウワァ!!」

兵士:「コイツは酷い!」


そこには大量の男の死体が積み重なるように透明なガラスの浮遊ベッドに格納されていた。

外に出た1つのベットは真ん中にあり、おそらく男は自力で点滴を外して外に出たのだろう。


シード:「通信兵、記録を頼む。これは闇が深いぞ」

通信兵の背負っている装備からアンテナが出て360度撮影する。

とくに気になるところは、バイザーゴーグルを付けて撮影し、その惨たらしさに何度も嗚咽した。

死体は十分な栄養を与えられず、アキレス腱が切除され、声帯も焼き払われていた。

私は沢山の死体を見てきたから何とも思わないけど、シード達にとって兵士の虐待はアルムシュア条約に大きく反する行為である為、・・。


シード:「他のフロアも調べよう。バグズの蛮行を世界に知らしめるんだ!!アモンは向こうのフロアをマイキーと開けろ!!他の奴らはついて来い!!」

兵士:「バグズってのは、クソ野郎だぜ・・!!ここで人体実験をしてやがったのか・・!!」


マイキー:「ここには制服とネームタグがある!やっぱり彼らは拉致されたアメルア軍だ!」

シード:「いいぞ。データスティックを回収しようロロアもボサっと見てないで手伝ってくれ」

「あ・・うん」


私はウイルスを培養していたであろうケースの下に差さっているデータスティックを回収した。

ZMはマット師団と共にここで人間の研究を行っていたらしい。

何が好きで、どんな物に恐怖するのか。

生物兵器の侵蝕具合、接種したことによる心理的変化。

ZMとの互換性、その全てが容赦なく人体の破壊という形で行われ、死体となって詰まれている・・。

マイキー:「まったく最悪な場所だな・・開かないぞちくしょう」


マイキーは別のガラスのフロアを開けようとする。

内部もカーテンで目隠しをされ、扉の前の操作板は反応が無い。

シード:「ちょっとかしてみろ」

シードが操作板を触った。その時だった!


ガラスを叩く音と共に、半分溶けた男が貼り付いた!

「ひっ!!」

私は思わずバスターを向ける。

マイキーもあまりの事にライフルを持つ手が震えた。


アモン:「“”生存者か!!“”」

シード:「犠牲者だな・・」

「タ・・・タスケテ・・!!」

男は粘菌だらけの身体を動かしながらガラスを破ろうと苦闘する。

すぐさまビーム放射器を持った2人の兵士が噴き出し口を向ける。

「ちょっ!ちょっと!!まだ生きてるよ!?」


ビーム放射器の兵士:「感染者だ。彼が世に放たれたら厄介だ。焼却する。」

「それが目的なのね。あなた達・・!!」


ビームが放射され、それを受けたガラスが粉々に砕け散る。

裸の男がビームに晒され、一気に燃え上がった!

「ギャァァアアアアア!!!!!」

火炎はすぐに換気扇で吸い上げられ、炎の竜巻となって巻き上げられる。

男や死体が恐るべきスピードで炭化し、黒い影となって換気扇に吸い込まれてしまった。




シード:「ロロア。これがポイズミーやバグズがやってきた事だ。・・どうだ?それでもまだ罪悪感はあるか??」

「・・ないよ。あまりにも酷すぎる」

シード:「これが戦争さ・・!俺らでメルヴィアの負の連鎖を終わらせよう」

「・・うん」


私達は証拠を全て焼却すると最後のフロアに向かった。

マイキーやアモン達はあまりのショッキングさに座り込み、数分休んでようやく調子を取り戻した。



『ロロアちゃん。ここが最後のフロアよ』

テリンコから通信が入る。


「エネルギーコア?」

『そう。それを抜かれると、このキリカルテはしばらく予備電源で稼働し、徐々に死んでゆくわ』

「死ぬ??」

『うん』


シード:「開けるぞロロア。最後まで気を抜くな??」

「うん。ムーヴ」


私がポイントマンになると扉を開け、内部に入った。

内部はピラミッドのように階段状に水が流れ、水の中に施設内のデータを司る長方形のマザーブレインが沈められていた。

何者かがフォレストパークの胞子を持ち込んでしまったらしく、シダ植物が生えている。


「オールクリア。へぇ、すごい。。」

シード:「ロロアがいなかったら俺らはポイズミーの餌食になっていただろう。さぁ、君がエネルギーコアを抜くんだ」

マイキー:「売ったらすごいだろうな・・!」


「でも・・ここの遺体はどうなるの??」

シード:「施設と共に徐々に死ぬだろうな。マザーブレインは熱を持って維持できなくなって腐敗し、遺体は細胞が維持できずに無に還る。再起はできない」

「・・・」


私は階段を登ると頂点にあるエネルギーコアを見た。

美しいダイヤモンドカットのそれは青く輝き、私に微笑むように回転している。


「じゃあ・・抜くよ??」

シード:「警戒しろ・・!ガードロボが発動するかもしれない!」

私はゴクンと唾を抜くと、エネルギーコアを両手で掴むと、上へ引き抜いた。


チン!と言う軽い音をさせるとズシリと思いそれが私の胸に収まる。

幾重にもカットされたコアは本当に綺麗で、屈折した沢山の私が映っている。


マイキー:「水が止まった」

全体に流れる空気の循環が止まり、さらなる静寂が襲う。

シードはスパークライフルを構えたままロロアに来るように指示する。


兵士:「ん?あれは何だ?」

マイキー:「どうした?」

兵士:「ホラ、あれだよ?見えないか?」


1人の兵士がマザーブレインの奥を指差して、目を凝らす。

「・・水が止まったから蒸発してるのか、マザーブレインのカゲロウじゃないの?」


兵士:「あるいは、隠されたお宝か」

「こんなデカいお宝持っているんだからいらないよ?」

兵士:「君はそうだろう?だが、俺はC-1ライフルちゃんを新しくする程貰って無いんでね」

「浮気するつもり??」


シード:「酸欠と、ガードロボが心配だ。すぐに撤退するぞ!!」

シードとアモンが先に出て行き、私とマイキーと兵士Bが続こうとする。


兵士:「ちょっと待ってくれよ!確実に何か居るんだ」

「まだやってるの!?・・えっ!?」


私が振り返ると、明らかにカゲロウが増えていた。

朧げにそれは、巨大な鉤爪と縦に長い頭を持っていた・・。

兵士:「あっ!!ぎゃあ!!!」

「ひっ!?」


兵士の悲鳴が聞こえ、私を始め全員が兵士を見る。

兵士がゆっくりと持ち上がり、鮮血滴る腹から血に染められた鉤爪があらわになった。


『パパだ!!ロロアちゃん!何をしたんだ!?エネルギー反応が複数!!ステルス機能を有しているぞ!!』

不意にお父さんから通信が入る。

「えっ!?ステルス機能!?」


シード:「ディフェンセルだ!!みんな逃げろーー!!!」

シードの叫びに反応するように、カゲロウが実態を表し、頭はただの円筒形で、腹は球体の可動式、そして巨大な鉤爪を持ったディフェンセルが複数体出現した。


それが恐ろしい硬い足音を響かせながらこちらへ走ってくるのだ!

「ひいいい!!!!」

私はエネルギーコアを抱きしめながら走った!

それと同時に複数の錆びた扉が閉まり始め、例の遺体の防処理施設からこのフロアまで隔離しようとする!



シード:「ロロア!!!早く来い!!キリカルテ全体が閉鎖されるぞ!!」

「うん!!」

硬い足音が寸前まで来るので、私はエネルギーコアを抱きしめて振り向きざまにバスターを撃った!

「ロロアショットガン!!」


ディフェンセルの頭が吹き飛び、後ろに倒れる。

その瞬間、幾重にも重い扉が閉まり、後続のディフェンセルを挟んだり通路と通路に閉じ込めたりしながら遂に閉まってしまった!


シード:「まだ来るぞ!!みんなずらかるぞ!!作戦は終了だ!!通信兵!!ヘラクレスを要請してくれ!!撤退だ!!」

DADAを装備した兵士:「あ??何だって!?」



シードがDADAを装備した兵士から装備を引き剥がす。

シード:「ロロアがエネルギーコアを抜いたんだよ!!もう作戦は終了だ!そんなモン置いて還るぞ!!」

DADAを装備していた兵士:「おお!これがエネルギーコアか!!すげえ!!」


シード:「む!?奴が来るぞ!!!」

防処理施設のフロアの壁が透けて無くなり、窪みからVサインの手のような二又の腕が出たディフェンセルが動き出す。

ディフェンセルは二又の腕を前に突き出すと、連射式のバスターを撃ってきた!


私は間一髪のところでそれを交わすと、手をバスターに切り替えて連射した!

ディフェンセルは倒しても倒しても次から次へと窪みから出てくる!


シード:「ロロア!相手にしなくていい!!走れ!!」

アモンがスパークライフルを撃って、私の撤退を手伝う。

アモン:「“”いくぞロロア“”」

「うん!!でも大丈夫!!私が後方を見る!!先に行って!!グレネード!!」


私はグレネードの先端のダイヤルを噛んで捻ると、ディフェンセルに投げつけて走り出した。


パッッカン!!!

と言う空間が裂ける音と共に大爆発を起こす。

「手榴弾!!カウントダウン!!」

さらに私は手榴弾のダイヤルを歯で噛んで『10』にして通路に置いておく。


“二本指”のディフェンセルはエアーで移動するらしく、空気を出す不気味な音が通路に響いた。

パカン!!!


私のセットした手榴弾が爆発して、ディフェンセル達が叩きつけられる音が鳴る。

私が走る最中、私の横をアメルア兵の誰かの3点バーストのバスターが飛んだ。

きっと私の真後ろにディフェンセルが迫って来ているのだろう。


エレベーターには私を待つ兵士たちが必死に手招きをしていた!


アモン「“”ロロア!!早く来い!!“”」

マイキー:「早く早く!!」

「ありがとうみんな!!」


私が滑り込み、シードがボタンを押す。

閉まりゆく扉から見えたそこには無数に蠢くディフェンセルが見えた。

扉に幾つものバスターが当たる音が鳴り、やがてそれもエレベータの上昇に合わせて聞こえなくなる。


兵士:「ハァハァ、もう1人居ただろう!?アイツは?」

「死んだわ!鉤爪を持ったディフェンセルにやられた!!」


カタカタと音がし、マイキーがスパークライフルを持ったまま隅で震えていた。

それを見て本当にエネルギーコアを抜くべきだったのか後悔する。


DADAを装備していた兵士:「まったく最高だよ君たちは。俺らが作戦を遂行している間、ドロボウ稼業とはな」


シード:「ドロボウ稼業とはごあいさつだな。ロロアが居なかったら君たちは辿り着く事ができなかった。今頃、バグズの研究材料にされていただろうよ」


アモン:「“”まさか本当に抜くとは思わなかったけどな“”」

DADAを装備していた兵士:「今までキリカルテの攻略に同行した事は多かったけど・・君たちみたいに深層に行こうって言い出すやつは居なかった。あんなのは初めて見たぜ・・!」


「あれは一体、何なの??」


シード:「ディフェンセル。極小のエネルギーコアを内部に搭載したガードロボットさ」


「アステロイドとは違うの??」

兵士が眉毛を上げて(ん?)と言う顔をする。

「私は外部エネルギーに頼らないで、ご飯を食べるよ!食べた物の原子と原子をぶつけてエネルギーにしてるの!」


シード:「ディフェンセルはメカニロボと違って、個別に稼働する事ができるんだ。外部からエネルギーを供給する事なく、半永久的にその活動ができる」

「なんで今は無いの??」


シード:「単にコストかかりすぎるのと、半永久的に動かれちゃ、ロボット屋さんが経営できないからだろ。金だな、金」

「そんな訳────」

ないじゃない。他に理由があるんじゃないの?と、言いたかったけど、彼らを見ると何となく分かった気がした。


バーチャル世界の炎上、犯罪、生活困窮。

そんな彼らがアメルア軍に入隊して命を削る。

そんな原子時代みたいな事を、今でも平然とやってる国があるのだ。

結局は(クレジット)なのだ。

それを消費させるには不自由なままにしておくのも手なのだろう。


シード:「さぁ、開くぞ!!撃ちながら前進!」

シード達は扉に向かってスパークライフルを構えた。

私もマイキーを守るように背にしてバスターを構える。


「開くわ!!12時の方向に2体!!」

扉が開いた瞬間、2又の腕のディフェンセルが2体やってきた!!

シードとアモンが銃撃し、ディフェンセル達がバスターの威力で吹き飛ぶ。

アモン:「“”ターゲットダウン!!“”」

シード:「ムーヴ!!」


破壊されたディフェンセルの身体から内部機関が覗く。

ZMと違ってブヨブヨとして、まるで生命体のようだ。


兵士:「まったく!気持ちが悪いぜ!!」

マイキー:「エレベーターが動き出したぞ!」


私達を下ろしたエレベーターが閉まり、稼働音を響かせる。

シード:「構わん!!ムーヴ!!」

「12時の方向にディフェンセル!!複数来るわ!!」

ディフェンセルが射撃し、通路に火花が散る。


兵士:「うがっ!!」

DADAを装備していた兵士:「・・・っ!!」

「大丈夫!?」


DADAを装備していた兵士の額に当たり、崩れ落ちる。

シードとアモンが応戦し、私は腕をバスターに変えて加わった!

ディフェンセル達はフロアに隠れるようにして撃ってくる。

私達も弾幕を増やしてバスターの壁を作った。

「3ダウン!!損害評価は2!!」


兵士:「腕に当たったが問題はない!!損害評価は1だ!!仲間は死んじまった!」

シード:「このまま撃ってすすむぞ!!」


フロアに隠れていたディフェンセルを撃ち殺し、アモンとシードがシリンダーからジェネレータを排出する。

私ともう1人のDADAを装備していた兵士に変わり、前進した!


通路に窪みが出現し、ディフェンセルが飛び出す。

アモン:「“”ちくしょう!!次から次へと出てきやがる!!“”」


「マイキー!!マイキー!?」

ディフェンセルのバスターが飛び、マイキーがヘルメットを押さえて屈む。

マイキー:「あ?あ!?なんだ!?」

マイキーは自分の身を守ることに夢中で、撃つことすらしない。

「私の身体を掴んで引っ張って!!射撃に集中したい!!」

マイキー:「え!?」

「しっかりしろ!!このままだと全滅するぞ!!引っ張ることくらいできるだろ!!」

私はマイキーの頬を叩くと、喝をいれた。

マイキーは心ここに在らずという顔をしながらも私を引っ張る事に同意した。

新しいボディはバスターや体重も軽くしてくれたようだ。

「お願いね!!」

マイキー:「いくぞー!」


マイキーが私の両腕を掴むと引っ張る。

私はエネルギーコアを抱きながら、毎分2000発のバスターの雨を退路に降らせた。

ディフェンセルが出現と共に撃ち抜かれ、たちまち残骸の山ができた。


工兵:「早くしろー!!嵐が来るぞ!!」

外は日が沈みかけ、アルミ箔がヘラクレスにまとわりついている。

ディフェンセルを感知したのか、ヘラクレスが大砲を撃つ。

キリカルテの入り口に炸裂し、ガラガラと崩れた。


工兵:「早く乗ってください!!嵐が来ます!」

シード:「みんな!!マーマレドを食べるんだ!身体が冷えて凍っちまうぞ!」

「私は後ろに乗る!」


私はシード達とヘラクレスの背中に乗った。

アルミの飛散が増え、一気に冷え込む。


いつしかディフェンセルの攻撃が止み、入り口に青い光がボヤリと映った。

「あ・・あれは??」

シード:「あれは・・??」

通信兵:「いや・・動力源は抜かれている筈です・・そんな訳は・・」

兵士達が入り口を見る。


そこには先ほどまで映し出されていたホログラムの死者達がこちらを見ていた。


やがて、アルミと氷の吹雪で見えなくなる。

それでも私はいつまでもそれを見ていた・・。






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