09
「あああああああああああああああああ」
岸から岸へと跳躍した、キリカさんと僕。いや跳んだのはキリカさんだけで、僕は荷物か。
着地をしたキリカさんは痛がる様子もなく平然としている。
「なにを呆けている。ミッツとやらを助けるんだろう」
「は、はい」
ええっと橋の近くにいるって言ってたけど、どこにも姿が見えない。怪我人を遠くに運ぶ理由なんてないし、だとすると……どこいったんだ。
早く行かなくちゃいけないのに、全然わかんない。頭が回らない。どうすればいいんだ。考えている間にも時間は過ぎていくのに。とりあえず走って探そう。
「キリカさん二手に分かれて探してもらっていいですか」
キリカさんの足ならすぐ見つけられるかも。そんな期待をしてキリカさんを見上げるも彼女の答えは、意外なものだった。答えというか額を小突かれた。
「落ち着けロン。体力のないお前と土地勘のない私が、別れたとこでこの広い土地から、探すのは不可能だ」
「じゃっじゃあどうすれば」
「だから落ち着けと言ってる。冷静に思考するんだ。相手はお前から逃げているわけじゃない。助けを求めているんだ。見つけてもらいやすい所にいるに決まっている」
見つけてもらいやすい場所。
「それにお前を呼びに来た男のことも考えろ。言動や身なりにヒントはなかったか?」
呼びに来た男。グリのことか。言動は……いつもあんな感じだし、身なりは少し濡れていた。汗だろう。
いや待て、汗にしては全身均等に濡れていた。汗じゃないとしたら、なんだ。水にでも入ったのか?
「そもそもあの男、橋が通れないのにどうやってロンを呼びにきたのだ」
確かにそうだ。ここ以外の橋は、使えないし……違うそうじゃない、川を泳いできたのか。ミッツは釣り好きだったはず。釣りに来ていて川辺で落石にあったんだ。だとすると。
「キリカさん。場所がわかりました。ここから上流にいった場所に、村で有名な釣りポイントがあります。恐らくそこです」
僕が方向を指さすと、彼女は片手で僕を持ち上げ、瞬く間に走り出した。砂利道をものともせず、宙に浮くようにステップを踏む。一瞬も止まることはなく真っ直ぐと。
「あそこですっ」
目的地のポイントには、仰向けになっているミッツと、それを取り囲む数人の男女がいた。まだ生きてる。ミッツは腹部から、大量に出血しており、傷から内臓が出ていた。ひどい。岩かなんかで切ったのか。早く処置しないと。
「ミッツ痛いだろうけど我慢して」
そう伝えると僕は、飛び出ていた内臓をムンズ掴み、傷口から体に戻した。
ミッツの叫び声が川に響いた。




