伝える気持ち
翌日、冷えた桃を持ってコムラの神社へ向かった。
すでにキムロとミトリが来ていたけれど、わたしは二人にコムラと話がしたいことを伝えた。
二人はニヤニヤしながら、森の中に消えた。
わたしは社の中で眠っているコムラの元へ行った。
コムラは穏やかに眠っていた。
わたしは彼の隣に座り、その寝顔を見つめていた。
…何だかコムラと最初に会った日のようだ。
わたしがここへ迷い込んだのは…果たして偶然か、運命か。
ふと、キツネのお面を見た。
このお面をかぶれば、わたしも彼等と一緒に見られるんだろうか?
そ~っと手を伸ばし、お面を持った。
そして付けてみる。
「うっうん…」
そこでちょうど良く、コムラが眼を覚ました。
そしてキツネのお面をかぶっているわたしを見て、ぎょっとした。
「わっ、りん!? どうしたの?」
「おはよう、コムラ。お寝坊さんね」
わたしはクスクス笑いながら、お面越しにコムラを見た。
「どお? こうすれば、わたしもあなた達と同じように見られるのかな?」
「りん…」
コムラは起き上がり、わたしの頭を撫でた。
その優しさに、涙が溢れてきた。
…もうすぐ夏休みが終わる。
わたしは、帰らなければならない。
でもその前に、やりたいことがあった。
「…ねぇ、コムラ。わたし、最後にここでやりたいことがあるの」
「何?」
「あなた達のお祭り、わたしも行きたい」
ぴたっ、とコムラの動きも表情も固まった。
「りん、それは…」
「無茶なお願いだって言うのは分かってる。でも少しでも長く…あなた達といたいの」
この森で、わたしはたくさんの者と知り合った。
そして仲良くなった。
だから…わたしは決心したのだ。
「…危ないよ?」
「分かってる。食べられちゃうのよね」
「なら…」
「でも行きたいの」
ワガママだって分かっていた。
けれどわたしの意思は変わらない。
コムラはしばらく黙っていた。
長い長い沈黙の後、わたしと眼をそらしたまま、顔を上げた。
「…分かった。ちょっとだけなら」
ほっとした。
コムラの優しさにつけ込んだ、意地の悪いことだって分かっていた。
分かっていても…止まれなかった。
その後、ミトリとキムロを呼び戻し、わたしの意思を伝えた。
ミトリは危険だと猛反対したけれど、キムロはおもしろそうに笑っていた。




