最高の結末
「あっ、もう…疲れた」
翌朝、コムラは神社でダウン。
「わたしも気疲れしちゃった」
そんなコムラの隣に座っているわたしも、ため息をついた。
「―あの後、祖母に確認したんだけどね。津見鈴と言う女性が、山の主の子供を産んだんだって。でも彼女はその子を人間として育てたかったから、山を下りたって」
「うん…。ボクも山の主に聞いたよ。それでもその後、彼女は子供を連れてちょくちょく来ていたらしいけど…そのうち、訪ねて来なくなったみたい」
人間の寿命は限られている。
それでも山の主は、自分の子孫ならば訪ねてくれるだろうと思っていたんだろう。
けれど来なくて…やがて山の中の神社も忘れられていった。
だから山の主や神々達は…。
「…りんには苦しい思い、させちゃったね」
神社の中で寝転がっていたコムラは、わたしの手に触れた。
その冷たさが心地良くて、わたしは自分の頬に彼の手を当てた。
「ううん。知った方が良かったことだわ。…自分のすべきことも分かったし」
「すること?」
「うん。まずは…」
わたしはグッと拳を握り締めた。
「村の人にこの山の神社を知ってもらうこと!」
「ええっ!」
「だからキムロやミオ達に、イタズラしないように言わなきゃね」
「なっ何でっ…」
コムラは青い顔で起き上がった。
「お供えを増やす為よ。いくら私でも、この山にある神様全員に渡すワケにもいかないから」
大きいのだ、この山は。
「そして神社も建て直してもらいましょう!」
「うえええっ!」
「コレはお祖父ちゃん側に言った方が良いわね。お供えや管理はお祖母ちゃんの実家ね」
「そっそんなことしたら、主が…」
「あら、自分の血筋の者まで食らうの?」
「うっ…。そっそれは…」
「時間はかかるだろうけど、やってかなきゃ。…この神社、いつ潰れるか分からないしね」
わたしは天井を見上げた。
コムラの神力で持っているような神社の建物。
…秋や冬に入ったら、手遅れだな。
「でっでも、りん。キミ、もうすぐ帰るんだろう?」
「あら、言ってなかった? わたし、ここに残ることにしたのよ」
「はいぃ?」
「言ったじゃない。あなた達と…コムラと一緒にいたいって」
わたしはコムラにニッコリ微笑みかける。
「今朝方、電話で両親にも話したの。夏休み明けたら地元の高校に通うわ」
「…りん。キミって人は…」
「積極的でしょ? …恋をすると、人って強くなるのよ」
「りん…」
ぎゅうっと抱き締められた。
「ボク、りんのこと好きだよ」
「わたしもコムラのことが好きよ」
でもわたしの方が先に好きになったことは、まだナイショ。
…恥ずかしいから。
「わたしがコムラのお嫁さんになったら…狐の嫁入りってことになるのかしら?」
「ぷっ…。でもそれ、まずは主に許しを貰わないと、ボクなんて捻り潰されそうで怖いよ」
…あり得るな。
「そうね。まあ嫁入りはまだ先として。まずは…」
わたしはコムラの手を掴んで、立ち上がった。
「神社の修理をしましょ? もうちょっと見た目良くしないとね」
「ははっ…。りんには叶わないよ」
「ふふっ。さっ、まずは掃除ね! 行きましょう!」
外に飛び出ると、暑い日差し。
これからわたしは、この日差しが和らぎ、やがて彩る山の景色を見る。
そして雪化粧になる山を見て、桜が咲き乱れる山を見る。
やがてまた、夏が来て…。
その繰り返しを、ずっと見ていくんだ。
この山の神々と一緒に。
そう考えるだけで、足が浮き立ってしまう。
「さっ! コムラ、わたしと一緒に頑張りましょうね!」
「うん! りん、キミとならいつまでも」
一緒だよ?




