51話 二日酔いの頭痛
尾口先輩と飲み明かした翌朝、伸一郎は最悪の気分で目を覚ました。
頭はズキズキと痛み、胃のあたりがぐるぐると気持ち悪い。完璧な二日酔いだった。
(……そういえば、雪ちゃんには飲み会のこと話したっけ?)
モヤのかかった頭で考えるが、どうにも記憶が曖昧だ。
いや、そもそも俺と雪は付き合ってるわけじゃない。ただの幼馴染だ。
期間限定とはいえ同じ家に住んでいるんだから、帰る帰らないくらいは言ったほうがいいのかもしれない。
でも——
(……また、変なことを考えたらどうしよう)
ぼんやりした意識の奥底に、ぞわりとした感覚が残っている。
この間、雪を見たとき、妙なことを考えた。
彼女の喉元に視線が吸い寄せられ、肌が露出している部分を見ていると、口の中がざらついた。
まるで、強烈な空腹感に襲われたような——。
(なんで、そんなことを……)
俺は、雪を食べたいと、思ったのか?
考えた瞬間、吐き気が込み上げた。
違う。そんなわけない。俺は雪のことを……。
歯を食いしばり、最悪の気分のままアパートへ向かう。狭い路地に、見慣れない黒塗りの高級車が停まっていた。
この辺では見かけない車だ。
誰のものだろう。
訝しく思いながら、その車の脇を通り過ぎようとしたとき——
「伸一郎」
不意に呼び止められた。
「……雪ちゃん?」
声に引かれるように顔を向けると、そこにいたのは雪——そしてもう一人。
「ああ、伸一郎君……また会ったね」
真夏だというのに黒いタートルネックを着た優男。その顔に、伸一郎は見覚えがあった。
——如月智彌。
俺のアルバイト先の“管理者”として、突然現れた男だった。




