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想定外のイベント

 夕食の時間となり、二人で食堂へと並んで入ると先に来ていたレイ達が私達の姿を見てホッとした笑顔で迎えてくれる。あえて”仲直りしたの?”なんて言って来ない気配りがちょっと嬉しい。


「あんまり食べ過ぎないように」

「わかってる、わかってる」


 食事が開始されると、お腹が直ったばかりなのにいつもの調子で食べ始めるロザリーに一応注意はしておいたが、様子を見る限り大丈夫そうだ。そんなやり取りを目の前て見ていたメティが声を掛けて来る。


「彼女ダイエットでも始めたの?」

体を前に出して小声でそんな事を聞いてくるから


「いえ、さっきまでこの子お腹をこわしていたからちょっと注意してただけ」


「ああ、そう言う事ね。ふふ、ここまで来ると貴方ってロザリーさんの姉妹みたいね」


「え~、手がかかりすぎるから勘弁してほしいわ」

 揶揄う様に言って来るものだから私としても苦笑いしながら答えるしかなかったが、なるほど彼女には私達をそんな感じに見ていたのかと思うと同時にやはり甘やかしすぎるのかとも思った。


「ん?なに?何の話??」

 口にお肉を頬張りながらこちらに向いてくるものだから頬に付いてるタレを指で指し示すとロザリーは慌ててナプキンで拭きとると笑顔で”ありがとう”といって来る姿を見て苦笑していると、メティは肩を竦めてヤレヤレといった表情をしている。


◇◇◇


 午後に生徒会集会が予定されており、全学園生は講堂に集まり始めていた。私達も皆と同じように講堂へと続く廊下を歩いていると、ふと見上げた空の色はどんよりし始めていて集会が終わる頃にはひと雨来そうな天気になりつつあるのは気にはなっていた。


 講堂に入ると、大抵外の自然光が入って来て明るいのだが今日は生憎の空模様のお陰で照明が付き始めている。一年、二年と次々入場する中、少し遅れて三年生が入り講堂内は少し騒めいていたが副会長が前に出て来て鋭い目つきで無言の圧を与えると、次第に生徒達は静かになってゆく。


「えー、いつもこんな感じに清聴して頂けると進行がやりやすいです。それでは会長からの挨拶から」

 紹介され舞台の横から現れる会長は図書館でよく会うゆるい感じは一遍もなく初めて会った時の様なキリっとした感じで中央に立ち、挨拶を始める。


「全校生徒の皆様、御機嫌よう。本日の生徒集会の主目的は、直前にせまった夏休みの過ごし方の件と学園に残る方、早めに切り上げて戻って来る方などについての連絡及び注意事項の確認となります」


 話の内容的には午前中のホームルームで聞いた内容に期間中における寮での生活の注意事項や食事についての事であった。夏休みが始まればすぐに帰郷するつもりでいる私としては結構退屈な話であったが、それは私だけでもなく右隣にいるロザリーは半分眠りこけていた。


その後私の目を覚ます一言が会長から放たれ、舞台の彼女を凝視した。


「え~それから恒例ではありますが、一年生には初めての事だと思いますのでしっかり聞いてください。前日に行われるお城での学園舞踏会は日ごろあまり交流の無い方々との絶好の機会だと思いますので楽しみにしている方も多いと思いますが、皆さま気合を入れすぎて羽目をはずしすぎない様に気を付けてください」


(舞踏会?何それ初耳なんですけど……)


左にいたメティが困惑した顔をした私を見て気になったようで小声で話しかけて来る。

「ペルさんって舞踏会初めて?学園では恒例行事らしいわ。もし不安でしたら後で簡単な作法を教えてあげますわ。でもダンスの練習はさすがに間に合わないとは思うけど、無理に踊る必要もないし」


「ありがとう、一応ここに来る前に練習はさせられたから変でなけれは大丈夫だと思うけど、作法については助かります」


「それはよかったわ、では後でね」

 メティはそう言い再び前へ向き直る。本当に持つべきは有能な友人よねえとか考えつつロザリーを見ると、完全に寝入って人の肩に寄りかかって来ていた。



 集会後、とうとう降り出した雨を横目に寮に向かって連絡通路を歩く。メティから簡単にやるべき事やってはいけない事などの作法を教えてもらいメモを取りながら寮の自室に戻ると早速ベッドの下に入れてあったチェストを開けてガサゴソある物をさがしていた。すると暗くなり始めた部屋の照明をつけ始めたロザリーが怪訝な顔つきでこちらを見ている。


「ねえ、ペルはさっきから何してるの?」


「ん~、なんか舞踏会があるっていうからドレスをちょっとね」


「んん?ちょっとまって、ワードローブに入れてないの?」

 ほぼ制服しか入れていないクローゼットを指さしているがそんなに驚く事なんだろうかと思いつつ下着や部屋着を出してはベッドに置いて行く。


「いやまさか学生に舞踏会があるなんて思わなかったから…あ、あったあった」

 奥の方から畳まれた黒く長いドレスが顔を見せた。


「何それ…」


「え?着て行くドレス」


「ちょっと見せて」

 了承も得ぬままにドレスを奪ってゆくとロザリーは広げて色々触りながらしばらく確認するとこちらに振り向きつき返して来る。


「はい!却下」


「なんでよ」


「なんでってこんなドレス着て行ったら変質者扱いされるわよ!全体的に地味だし生地は薄いしスリットが大きく空きすぎ、それにこんな先っちょしか隠れない様な胸のカップじゃ零れちゃう」


「ええ~、紐で吊るしてるから大丈夫でしょ」


「も~変な所でサキュバス思考なんだから~、いい?舞踏会用のドレスってのはこういうモノをいうの!」

 そう言い放つと、自分のクローゼットの中にある色とりどりの中から薄ピンクのもっさりとした派手なドレスを出し見せて来た。


 あちこちにリボンやレースにフリルが何段にも重なったドレスを見て、いつぞやのプリメラ嬢が頭に浮かぶ。ここまで派手ではなかったけど、すごい格好をした人だなとは思っていたがまさかこういうモノを来てダンスをするのかと考えると頭が痛くなってくる。しかし、一人だけ浮いた格好をするのも後々面倒な事になるかもしれないから合わせるしかなさそうだ。


「…なるほど、これはネコマルさんに頼んで新しいのを用意するしかなさそうね」


「ちょっ、今から発注するのは無理がありすぎよ」


「え?」


「この手のドレスはデザイン、発注、製作で一ヶ月以上かかる代物よ、今からだと…店に在庫としてある新古品か手直しした中古になるわねえ」


「そっか、まあ今回限りと考えれば適当に一着買って来てもらうしかなさそうね」


「そこで奥さんに朗報!なんとこのドレスをあなたに進呈して差し上げます!」

 見本で見せて来た淡いピンクのドレスを翻しながら見せつけて来る。


「誰が奥さんですか、そもそもそれはロザリーのサイズで作られているんだから私には無理よ」


「問題ないわよ、申請すれば衣装合わせと着付けの為にメイドを呼ぶことが出来るようになってるからうちのセティアを連れて来るわ。あの子ちょっとどんくさいけど裁縫の技術は素晴らしいの」


「でもいいの?私に合わせちゃって…元に戻すの大変じゃない?」

 見た感じ新品らしく、私の為にハサミを入れる事に申し訳ない気持ちになるが、ロザリーは別にお気に入りのドレスがあるから良いと言ってくれる。


「ペルにはいつも助けて貰ってるからお礼よ、気にしないで使って頂戴」


「うん助かる、ありがとう」


 この時はすごく感謝していたが、後でセティアちゃんからなぜこのドレスを提供してくれたのかを教えられて調子のよいロザリーにちょっと呆れてしまったが、とりあえず助かった事は事実なので感謝半分といった所だろう。




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