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方向性が違う鈍感っぷりを見せるな、二人とも。



「え………、嘘……。」



兄である自分でも解る程、妹に対して好き好きオーラを出している王太子殿下が、一度も愛を告げたことがなかったという事実を前にしたジルベルトは王太子に対する殺気を通り越して呆れていた。


「嘘だったら大声出して驚きませんよ。本当に言われたことないんだもの。」


「………アリアがこう言ってるんですけど、本当に、何も言ってなかったんですか?」


アリアの肩を掴んだままジルベルトは首だけを王太子の方に向けておそるおそる尋ね、王太子はその問いの答えを顎に手を当てて記憶の中から探し出している。




「…………、言われてみれば、好きだとは言ってなかったな……!、」



「馬鹿なんですか貴方はっ!!!!!」



アリアに怒られるときと同じ様な口調でジルベルトから怒鳴られた王太子は一瞬呆気にとられてしまった。



「愛してるとか、好きとか言わずに求婚するとか……、そんなの政略結婚だと勘違いされてもおかしくないですよね!?、」


「いや……、求婚してる時点でアリアは私の気持ちに気付いてると思ってたので……。それに、好きじゃなかったら通い詰めたりしないと思うんだが。」


「え、そうなの?。普通に政略結婚するために求婚してきたと思ってたけど。」


普通なら気付いてくれるんじゃないか?、と真顔で答えてくる王太子と、全く気付いていなかったんだけど、と言いたげな表情で王太子を見るアリア、という二人の頓珍漢ぶりにジルベルトは頭を抱えてしまった。


「アリアにそんな芸当が通じるわけっ……!、あー!!もーっ!!、俺だけじゃ埒が明かないっ!!!」











「それで、私が呼ばれたんですね。」


夫であるジルベルトから詳細を聞いたソフィアはハーブティーの入ったカップをゆっくりとソーサーに戻した。


「何と言ったらいいのか……、この二人の相手は俺一人じゃ出来ないと思って………。すまないな、折角エーリオがお昼寝してる時間だったのに。」


「いいのよ、可愛い妹の為ですもの。」


「ソフィア………、」


俺の嫁はなんて素敵な人なんだという眼差しを愛する妻に向ける旦那と、それに応えるように笑いかける嫁のやり取りにアリアは甘すぎて酸っぱいものが欲しくなってきた。



「それに、直球に愛を何度も告げて求婚してくれたジルに、この二人の対応は荷が重いものね。」


「その通りなんだよな……、」


「え?、二人は政略結婚じゃなかったのか?」



三公のうち、政治を司るディチア家と武力を司るノウン家の衝突を防ぐために結婚したと聞いていた王太子は、ジルベルトが求婚していたことに驚いた。


「政略結婚ですよ。幼い頃から結婚することが決まってましたし……。まぁ、でも、何というか……、俺がソフィアを好きになったので、告白して好きになってもらってから結婚しようと思って。」


「まだ私が七つぐらいの時から『好きだ、絶対俺のお嫁さんになってくれ』ってずっと言ってくれてたんです。」


ソフィアは照れながらも幸せそうに微笑んで夫からの求愛を思い出していた。


「ことある毎に、お花とか髪飾りとか……色んな贈り物を持ってきて求愛してくれるから……、私も恥ずかしくって。随分前に『貴方のお嫁さんになる』って返答してるにも関わらずですよ?」


「だって……、心変わりされたら困るし、好きな人に好きと伝えないのは不誠実だろう?」



"不誠実"



ジルベルトが放った言葉が王太子の胸に鋭く突き刺さった。



「それに、言われないと他人の気持ちなんて解らないじゃないか。好きだと言わずに結婚を進めたら、俺を好きになってもらえないと思って。」


「ぐっ、」


追い撃ちをかけるように王太子の急所にあたったようだ。



「………つまり、アリアに好きだと言わずに求婚だけして妻にしようとしたのは、」


「アリアちゃんに好かれる以前に、かなりクズな求婚方法だと。」



ソフィアの一言で王太子の体力は消え去り、王太子は机に突っ伏している。



「クズって訳でも……、利益の出る政略結婚なら当たり前のことでは?」


精神的にやられている王太子が流石に可哀想になったアリアが助け舟を出すように割り込んだ。


「王太子殿下は慕っている方に求婚を申し込んでいるのよ?、それなのに愛を告げないのはクソ野郎のやることだわ。女心に疎い()にも出来る事なのに……、」


「えっ、ファヴィオよりもポンコツ………。」


「ポンコ、ツ……、私が………。」


が、アリアの中で政治以外ポンコツ扱いされているファヴィオよりも下の位をつけられたことで、王太子は亡骸に鞭を打たれているような気分になってしまった。



「まぁでも、私のことなんてそこまで好きじゃなくて、ちょっと好き、とかそんな感じでしょう?。だから言うのを忘れてたのでは?」


「「「え、」」」


アリアが王太子を慰めようとかけた言葉の内容が、あまりにもあんまりなものだったため、三人の動きが止まった。



「王太子殿下は恋愛感情と仰ってましたけど、私に対してそんな感情湧くわけないし、きっと気のせいですよ!。臣下に対する評価がバグってそうなったのでは??」



「…………、」



「さすがに、おかわいそうになってきたわ………。」


「………、応援は、したくないんだが………っ、これは、流石に………。」


本気で慰めているつもりのアリアの言葉がズケズケと痛いところに刺さり、青い顔をして動かない王太子を見た兄夫婦は少し、いや、かなり可哀想だと哀れみ、ジルベルトは王太子を励ますように肩に手を置いた。





「………、なる、ほど………。君は私の感情がバグだと、思ってるんだな……?、」


「?、そうなのでは??、じゃなきゃ私なんて………」


「もういい、わかった。」


王太子はアリアの声を遮り、アリアの瞳に向かって真剣な眼差しを向ける。



「だったらこれから、私の感情がバグじゃないと、ちゃんと君を愛してると思い知らせればいいんだな?。」


「え、」


「ついでに君が醜くないってことも、絵本以外のものも使ってあの手この手で証明していく。」


「な、なにを……!?!?」


混乱するアリアを他所に、王太子は席を立ってアリアの目の前で膝を付き、彼女の右手の甲を両手で捕まえた後、覚悟を示すように口づけを落とした。




「今後はしっかり、君にもわかるように愛を告げるつもりでいるので、どうか覚えていてほしい。」




「えっ、ええっ!?、嘘でしょおおおおおおおおっ!!!」





本日二度目の絶叫が、公爵邸の中に響き渡った。




























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