私は明るさを纏っただけの、醜い醜い、公爵令嬢。
私は呪いを受けたあの日から、
信頼している人達にさえ、仮面を被っている。
逞しくて強いお父様と、麗しくて優しいお母様に、
綺麗で格好いいお兄様。
みんな、私を可愛がってくれた。愛してくれた。
自慢の娘、妹だと、何かを披露するたびに喜んでくれた。
お城から第一王子の婚約者になるよう、お達しが来たときも、
アリアは自慢の家族だと、褒めてくれた。
それなのに、
私は期待に応えられなかった。
「こんな顔が醜い女となんか、結婚したくない!!!」
私は、醜かったのだ。
周りの大人たちの嘲笑う声、王子からの罵倒、
お父様とお母様の表情。
全てが私に語りかける。
『君は美しくなく、惨たらしいほどに、醜いのだ』と。
自分を怒りで奮い立たせ、
泣いて恥を晒さないように踏んばるしかなかった。
こんな醜い顔なんて、もう見せたくない。
笑われたくない。
お父様とお母様に苦しい顔をさせたくない。
私は泣き喚きながら、宮廷魔術師に懇願した。
私の顔を消し去ってほしい、と。
でも、魔術師は願いを叶えてなんてくれなかった。
「貴女の顔が消えてしまったら、貴女を愛する人は悲しむわ。
……だから、別の呪いを授けましょう。
『アリアを愛し、アリアを愛する人以外、アリアの顔を認識することは出来ない。』
こうすれば、貴女の顔は二度と悪い人に見られることはない。
……アリア、今は辛くとも、きっと貴女にも輝ける日が来るわ。」
そう言っていたけれど、私には輝かしい日々などあったのだろうか。
婚約は破棄にならなかった。
せめて仲良くなろうと、王太子の事を想って選んだ誕生日の贈り物は、目の前で窓に投げ捨てられた。
手作りのお菓子は、床に叩きつけられ、足で踏まれた。
嫌いな婚約者から物を贈られたら、誰だってそうなるだろう。
そう気付いてからは、近付くのをやめた。
王太子にも悪いことをしてしまった。
それでも、顔以外は王妃に相応しい女性になるために、
来る日も来る日も努力した。
喋り方、姿勢、歩き方、マナー、裁縫、音楽、文学、政治、外交、帝王学…。
頑張れば頑張るほど、厳しくなった。
出来るようになれば出来るようになるほど、
少しのミスで怒鳴られるようになった。
大好きな家族との時間を引き裂いてまで、
やる必要があったのだろうか。
完璧な淑女になって、
きっと、いつか、皆に認めてもらえるようになれば、
……両親の"あの顔"を、二度と見なくて済むと思ったのだ。
苦くて辛い顔をするお父様と、お母様を見たくなかった。
だから、いつだって笑って耐えた。
明るくて、天真爛漫なアリアでいれば、
公爵邸のみんなは笑って私を受け入れたくれたから。
最近は、笑うのにさえ疲れてきていた。
王妃教育の内容が終わるまで、多分私の表情筋は仕事をしていない。
難しいー!!つらい!やめたい!!
そんなことさえ言うのが面倒臭くなっていた。
そんな中、王太子が来た。
嫌われるよう、皮肉を沢山言った。
早くこの地獄から抜けたかったから。
願い事を一つ叶えてもらえることになって、
やっと解放されると思ったら、少しだけ身体が軽くなった。
まさか、自分が死ぬだなんて思わなかったけれど。
でもきっと、今日が一番私の輝かしい日。
だって、全てから開放されるのだから。




