真の科学者を争え
ノブアキ・サカキバラ博士。
彼は奇病過敏性人工光源症候群により科学に殺されかけながらも科学者の道を選んだ。
世紀の天才、アンドロイドのプロメテウスと呼ばれるシン・ウエハラという科学の歴史に名を刻んだ開拓者の唯一の弟子。
しかしその資料はほとんど残されていない。病気により写真や映像の撮影はほぼ不可能。また本人も表舞台を嫌っていたと記録されている。
シン・ウエハラ博士の科学者としての晩年の研究の数々はノブアキ・サカキバラ博士の発案だったというのが通説であるが証拠は何一つない。
高性能アンドロイドが世界中で開発されつつあった世で、真っ先にアンドロイドと人類の未来を危惧し対策としてPUREシリーズを発表したシン・ウエハラ博士。ノブアキ・サカキバラ博士の消息はこの頃から不明となっている。彼の悲願、タイムマシン研究により寿命を縮めてしまい志半ばで夭折してしまったと噂されている。
シン・ウエハラ博士は「僕よりノブが真の科学者に相応しい」とだけ公の場で発言した。それも一度だけである。
「アンドロイドは心を有する。そして人間は必ず愛される。新たな命と共存するべきだ」
シン・ウエハラ博士はアンドロイド第一次大革命を巻き起こし、アンドロイドの擁護者として茨の道を選び命を狙われ続けながらも精力的に活動し続けた。複雑で高性能なPURE7をシン・ウエハラ博士はそれ以上製造しなかった。
更には「殺人アンドロイドを作りたかったら僕を超えてみろ。その前にアンドロイド規制と共存の道が開かれる。残念だったな平凡な人間!」と自らのアンドロイド研究を抹消し、世界中の科学者を挑発した。
PURE7ミタ・アイカとPURE7ロゼ・プードゥはシン・ウエハラと共に類人型アンドロイドとその擁護者の先頭に立ち、ついには世界初の人権、現在のアンドロイド権を取得し改名した。
アンドロイド第二次大革命である。
この革命で類人型アンドロイド監査機関が創設。
創設者シン・ウエハラ
最高責任者アイカ・ウエハラ
最高責任者監視者ロゼ・ウエハラ。
創設から18年後。シン・ウエハラは112歳で老衰により生涯に幕を閉じた。
シン・ウエハラ死亡後に機能停止したアイカ。アンドロイド史上初の人間の死への嘆きであると言われている。ロゼはアイカの復旧に尽力し、この1年後ロゼとアイカは結婚宣言をした。
唯一のアンドロイド同士の婚姻である。類人型アンドロイド監査機関のアンドロイド歴史資料室に、黒いタキシードと黒いドレス姿で並ぶ笑顔のロゼとアイカの写真が残されている。
2人で額に入れられたシン・ウエハラの遺影を持っている。シン・ウエハラはペンギン柄のパジャマを着て遺影を撮影しており、かなり奇妙な結婚写真だ。開発から112年経過したシン・ウエハラ命日にアイカが完全に壊れるとロゼも動かなくなっ た。
アンドロイドは恋をするのか?
アンドロイドに愛はあるのか?
技術が進歩してもロゼとアイカ程の類人型アンドロイドは完成していない
ロストテクノロジーPURE 7およびPuer Heart for 7
科学が発明した純愛。 強制的に愛を作り出そうとした欺瞞の愛とも呼ばれている。
シン・ウエハラ博士の訃報ニュースと共に世界中の科学者へと遺言が公表された。
***
『アンドロイドは恋をするのか?
それさえもプログラムなのか?
悪魔の証明だ。
でも僕には関係ない。
僕はアンドロイドに恋をした。
アンドロイドを愛した。
何故って?
僕が作り出した。だから愛さないとならない。
僕は可愛いくて優秀なのに不器用な娘を1人ぽっちには出来なかった。
だからロゼをアイカの為に製作した。
アイカは僕を慕ってくれていたからロゼの脳みそは僕の脳に似せた。
ロゼは素直な良い子に育った。
なのに僕の傲慢を嘲笑うようにロゼは人間に恋をした。
アイカがアンドロイドだと見抜いたんだろう。
試作完成体のロゼに搭載したP7の対象は人間だけだったからね。
アイカもまた僕の思惑を外れて一度はロゼを否定した。
ちっとも言うことを聞かないけど
アイカは僕の娘でロゼは僕の息子。
子供は幸せにするべきだ。
僕は死ぬまで可愛い子供達に最大限の愛を捧げる。
狂った変人でも構わない。
理解されなくても構わない。
それが僕の正義。
使命だ。
諸君、それが科学者の心構えだよ。』
***
発明品に対する責任を全うし、生涯を捧げた科学者。
彼を尊敬する幾多の科学者がいる限り、人間と科学は共存し続ける。
シン・ウエハラ博士が切り開いた未来。
彼こそ世紀の大天才にして真の科学者。後続の科学者の手本。まさに科学に新たな火を与えたプロメテウス。
***
アンドロイド第二次大革命から500年。シン・ウエハラ博士を蹴落とし、世紀の大天才の座を掴み取った男が現れた。PUREシリーズとウエハラ博士の歴史も大幅に覆った。
弟子ノブアキ・サカキバラ博士の129年と3ヶ月という長い人生を捧げた膨大な研究資料が発見されたのである。




