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B‐BOY秘密結社  作者: 東雲 ヘルス
夢みる熱帯魚
7/23

セカンドインパクト

11月に入り、やっと暑かった夏も終わったと思ったら、急に肌寒くなってきた頃。

3人は、久しぶりに休日を満喫していた。


シンゴは錦糸町の例の居酒屋「富士山」で、ナチとサシで一杯やったあと、DVD屋さん帰りのイチと合流して、錦糸公園にやってきたのだ。

涼しくなってきたし、公園で呑もうというわけだ。

この頃になると、俺たちも、例の少年「明」の件では、動くに動けず、姉の真美からも、その後

DVを受けたとの報告はないので安心していた。

ただ、1つ心配なのは、イチがこの姉の真美とあまり上手くなさそうなことだ。


だから、久しぶりに飲み会(っていっても3人だけどね)をして、いろんな意味で報告会をすることにした。俺たちは一旦RB家業を再会しながら、葛西の不良少年の情報をそれとなく集めていたこともあるからだ。



「よ!久しぶり。おくれました!」

などと、木陰から急に現れながら、イチは言った。

これに驚いた俺は、イチは尾行慣れしてるな!と確信した。


そんな始まりで、3人は近くのコンビニで買って来た缶チューハイ(もちろんレモンサワー)を

「ぶしゅ!!」

と開ける合図で乾杯した。


話題はやっぱりライトな階級から

ってことで、まずはイチを突っついて見ることにした。


「最近どーよ。」


「なにが?」


「なにがじゃないでしょ!」

っと肩をぽんと叩きながら、組んだ。

見た目以上に、ごっつくてビックリしたが、怯まず、おちゃらけた。


「仕事はいままで通り。頑張ってますよ!」


「それはそーだ。当たり前でしょ。そっちじゃなくて恋愛関係は?」


「あー・・」

と珍しく陰気な声を出したイチであったが、早々と2本目の缶チューハイをぷしゅ!とやりながら、なにやらロマンチックな雰囲気でも作るように、空をみあげながら言った


「うまくねーーなーー。やっぱ女子高生と30代だもんなーーー」


と投げやりに言った。


「マジで考えてたんだ・・・俺はそっちに驚きだわ」

と言ってやった。


「んーーマジっていうか、これからだったんだけどさ。メールがあんまし返ってこねーんだわ」


「ふーん、で?諦めた?」


「んーーそーじゃなくて、あんまししつこくしてもな。オーナーの娘だしよ。最近は物騒な世の中だから、すぐストーカーとか言われんじゃん!」


と苦笑いで言った。


「そうだ。ソレが懸命だよ」

いままで、黙ってチューハイを3本も空にしていたナチが口を開いた。笑いながら。


これで、この話は急速に縮んでゆく風船のようにみんなの興味は無くなった。

ナチは時として、こんな不思議な能力を発揮する。

そんなナチの口から、本日のメインイベントの議題が発表された。


「真美ちゃんはその後、殴られてないの?」


「今のところ大丈夫みてえだ。一昨日もコンビニで会ったけど、なんともなさそうだった」


「ふーん。ならいいけどさ」


「でも、あの明が入ってる族は、かなりキテルよ」

イチが真面目な面持ちで語りだした。


明を捕まえて手洗い真似でもって、尋問したこと。それと鬼面組という族のこと

明から聞いたことをすべてみんなに話した。


「俺らも少しその辺の少年に聞いてみたところ、その族は有名だったよ」

俺がすかさず口をはさんだ。


「そうか」


イチもナチも考える表情になってしまった。


「でも、そんなヤバイ奴とつるんで悪さするようには見えねえんだよな、あの明って餓鬼はさ」

とイチが言った。


「だったら、可愛そうだよな。俺たちも経験あるけど、そういうタチの悪い先輩って奴はさ、一度関わると抜け出せないんだよな」


これには皆一様にうんうんと頷き同意してくれた。


「でも、これも経験なのかな」


「いや、経験ってもんでは済まされないよ。多分そいつらの誰か捕まるぜ。そんで巻き添え喰うよ」


「かといって、どーっすかだよね」


一同うーーんうーん唸って、次の缶チューハイを開けた。

缶チューハイから、何か良いアイデアが出てくると言わんばかりである。


「にしてもよ!何が鬼面組だよな」


「ハイスクール奇面組知ってんのかね。今の餓鬼が」


「一堂零だよ。」


「じゃあさ、俺たちも対抗してスハダ倶楽部にしようぜ」

と、俺が間抜けな発言をしてみた。

するとナチが、真剣な面持ちで


「さんまの名探偵だよね!なつかしいわ!」

と感激し、ついでに


「そう。俺たちは名探偵になる。昼はRBでリサイクル。夜はキャッツアイみたいに、名探偵」

とかなり酔ったらしく、良くわからないことを言ってる。でも、ナチがここまで力説するからには、皆一様にして聞き耳をたてなきゃいけないのだ。


「この前も話したけど、この明を助けるにしろ、真美ちゃんを助けるにしろ、そのなんとかってっていう餓鬼をぶっ飛ばすにしろ、俺たちは3人しかいない。そして、立派な中年で、社会人だ。だからこそ、夜は化ける必要がある」


要は、やるなら徹底的に、プロに徹する

ということだ。


一様に皆同意していた。先日はなした決まりごととはこういうことだ。

他にも沢山決まりごとを作った。

それは、一切夜の行動は昼とは切り離すべくする為である。

名前が出たのは今日が初めてだけどね。

皆この名前を気に入って同意してくれた。かつて、さんまの名探偵というファミコンのソフトがあった。このゲームのなかで、文珍さん殺しの犯人をさんまが探す過程で、文珍さんの家のパソコンを操作する場面が出てくる。

謎解きゲームのさきがけである。

その画面で、スハダクラブという暗号を元に「スペード」「ハート」「ダイヤ」「クラブ」とトランプを並べかえるとヒントがもらえるという仕組みだ。

でも、なんかこのスハダクラブって響き・・・なんか怪しくて、怖い。と小学生なが思っていた。


この命名は良かった。

即盛り上がり採用されたわけである。



時を同じくして、こんな昔のファミコン話に華を咲かせてる頃、イチの携帯に一通のメールがきた。

皆一様に、「お!」とかの真美からだとニヤついたが、そのメールを見るや、イチの表情が一変して真剣なものとなった。


「先日の明です。助けてください。もう限界です。姉ちゃんからこのアドレスは盗みました。明日時間とれますか?会ってください。姉ちゃんには内緒です」



とのこと。


すぐさま、皆にこの内容を見せて、イチは素早く返信した。


「いーよ。明日19時に錦糸町に来い」


この件は途中までイチ1人に任せることにした。

あまり3人で動くと、相手も、明も警戒するし、かといって、1人で明の言いなりになって報復される可能性も回避したかったから、錦糸町に呼び寄せることにした。

そんなこんなで、会合は終わりにして、この日はそれぞれ家路についた。




あくる日

イチが指定したのは、錦糸町の駅近くにあるサイゼリアだ。

ここなら、中学生とオッサンが2人でいてもぎりぎりセーフの場所と踏んだ。

で、話がディープになることも想定して、錦糸公園に移動するつもりであった。

それと、はじめから公園にして、罠に掛けられる可能性を避けたのだ。

そこまで、明を信用していないから。


コンビニのシフトを終え、先にサイゼリアに着いたイチはパスタとドリンクバーを注文し、ゆっくりと時計を見た。

16時30分。

ゆっくり食事を終え、おかわりのコーヒーを飲んでいた頃に、目の前に坊主の明が現れた。

前回会った時は、金髪のソフトモヒカンだっただけに、インパクトがあった。

そして、目の周りは腫れていて痛々しかった。


「すわれよ」

ぶっきらぼうに言って、明を着席させた。


明は着席するやいなや、涙ぐんで一言

「来てくれてありがとう」

とだけ言って、俯いた。


罠ではないことと、明のその態度から、明のみに起こった異常事態を悟ったイチは、やさしく、肩をたたき、伝票をもって席を立ち、錦糸公園に2人で向かった。



ここで衝撃の事実を聞かされる。







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