スハダ倶楽部
9月も半ばを過ぎ、秋の訪れに期待をよせつつ、日々の夏日に舌打をかます。
今日この頃。
残暑なんてうそさ、そんなもんさ、夏の恋は幻。
そう、夏の恋は幻。
いや、何時の世も、恋なんて幻だ。
言い切った。
でも、恋愛ってのは、人生において欠かせないスパイスであり、原動力であり、破滅への道でもある。
と、思う。
俺らくらいのオッサンになると、いままで、少しももてなかった奴がもててきたりする。
なぜか。
ソレは、もてないという青春を、フルに楽しんだからだ。
寂しさ故、積極的に人々と交流し、己をこつこつ磨いてきたからだとおもう。
昔は若い頃は、女子との会話にも困窮しはて、ついには、自分たちだけもりあがるという、最低な合コンなどを何回となく経験した。
故に、もてない自分という「器」を知り、彼女が居ないことをいいことに、自由奔放に、遊びながら、しかし、ひたすら、もてる手段を探す。という年月を重ねた。
結果、色々な経験で、物事を前向きに捉える癖がつき、この歳になって、新たに女子に求められる課題「経験」がものを言う。
と、偉そうに言ってるが、未だ独身だ。
いや、独身になった。
他の2人も、独身だ。貴族じゃないほうの。
でも、俺なんかよりはるかに、男前でもてる感じだ。
イチのその辺は解らないけど、ナチは昔からモテモテ君だ。でも、これぞという女にまだ会ってないらしい。
なかなかの、ロマンチストだ。
俺は、強い現実主義だから、そんなにもてたら、俺の座右の銘「ヤレルダケヤッテミル」だ。
ま、そんなに上手くはいかないのが世の中。
もう1つノットロマンチックなことを言うと
「別れた人には幸せになって欲しい。」
などという観念は毛頭ない。
「出来れば不幸になって欲しい。苦しんで欲しい」
が、俺の考えだ。
卑劣だけど、本音だからしょうがない。
これは、俺が振られるケース100%だからだけどね。
モトカノとかと、仲良く出来る奴ってすごいと思う。
振られた直後は未練たっぷりだし、「考え直してくれ」って土下座する。
が、どんな手を尽くしてもダメだとわかったら、それから現実にもどる。時間はかかるけど。
だから、俺は100%モトカノって奴は敵なのだ。
元嫁ってのも同じ。いや、もっと敵。
だから、恋愛って凄いパワーがいるし、生み出す。
命がけ的なところもある。
「RBN」
結成2週間でもはや、転機がおとずれた。
俺たちがこの呼び名をR&Bみたいでカッコいいということから、RBと略称で呼ぶようになった頃。
イチは、俺の紹介で、コンビ二に勤めていた。
正しくは、昼は「コンビニ」夜は「アダルトDVDショップ」
だ。
ココのオーナーさんが、両方のお店をやっており、人手が足らない所に、偶然俺が営業に行ったので、話をまとめてきた。
本来の会社には、勿論、嘘の報告をしておいたことは言うまでも無い。
このオーナーの自宅が葛西のなぎさニュータウンという場所にある故、本腰を入れてるアダルトDVDショップは葛西駅近くにある。
コンビニも遠くは無いが、1つ隣の駅、南砂町にある。
イチは、だいたい
朝コンビニの店頭に立ち、夕方から夜にかけてDVD屋の店頭に立つというシフトで働いていた。
コンビニには、17歳の年頃のオーナーの娘が一緒に働いている。
さすがに、DVDショップでは働いていないらしいが。
娘は高校生故に、イチとシフトが被ることは滅多にないのだが、土日は今までは遊びに行っていた娘が、急に朝早起きして、コンビニのシフト二入ってきたらしい。
イチもイチで、これは本当に人手不足を補う為らしいが、土日はどちらか朝コンビニのシフトを終えてから、RBに合流するという形をとっていた。
ん?恋愛が始まるのは時間の問題と捉えた。
いつも通りの日曜の居酒屋で、こんなイチの近況報告を聞いていた。
とにかく、仕事も順調だし、その娘がカワイイと浮かれ気味で、楽しそうなイチの顔を初めて見た。
俺たちは、というと色恋はまるでないが、いいことが続いていた。
ジーンズのレアモノを拾い、オークションで高値で落札されたり、
これまた、古書のレアモノ(知識がなく解らなかったが)を拾い、神保町で高値で買い取ってもらったり。
RBが結構順調に稼動していたので、俺たちも自然とそんな色恋も応援できそうなくらいのテンションがあった。
普段なら、余裕が無く、女子高生と合コンさせろなどと騒ぐが、今日はなんだか余裕があった。
この日は、3人とも、浮かれモードで解散しそれぞれ、家路についた
それから、1ヵ月経ったある日
水曜日の夜
イチから、2人の携帯にメールがきた。
どうやら、相談ごとがあるらしい。
俺たちは滅多なことが無い限り、平日は会わないのだが、この日は他ならぬ、イチの相談ということで、ただならぬ空気を感じて、近所のファミレスに集まった。
イチは、のっけから、グラスビールを一気に煽ると
話し出した。
オーナーには先の17歳の娘の他に、14歳の中学生の息子がいる
その息子の素行が最近ひどくなりつつあり、ついには、先日姉に暴力を振るったらしい。
コンビニでいつも土日のどちらかに必ず会う娘が、その日に限って、当日欠勤をして、心配したイチはメールでこの娘を呼び出し、顔の痣が発覚した。
この息子がどうやら、地元の暴走族に入ったので、ソレを咎めた娘が殴られたらしい。
しかし、問題はそんなことではなく
どうやら、この息子は地元の先輩に脅されて、ずるずると悪いことをしている。そうこの娘が言っていたというのだ。
最近では、この地元の先輩、K先輩を筆頭に暴走族を結成し、暴れ回っているようだ。
近年、葛西では、昔、地元最大且つ最悪の暴走族がいたが、今は噂は聞かなくなっていた。
どうやら、この集団はマフィア化したらしいが。
しかし、昔こその勢力ではないにしろ、葛西近辺のガキは恐ろしいのはよく知ってる。
そして、最近のガキは、またサイコというか、なんというか、やることがエゲツナイ。
この娘が集めた情報によれば、この集団そうとう悪どい。
始めのうちこそ、引ったくり、痴漢、喧嘩などであったが、このK先輩が頭になってからは、
引ったくりが、強盗、強奪になり、抵抗しようものなら、女子ならレイプし、荒川の土手に裸で置き去りにする。男なら、年齢問わずボコボコにし、金品を奪い、カードまでも奪い、暗証番号を聞きだすまで殴り続ける。そして、銀行のキャッシュカードからは全額引き出され、クレジットカードからは、限度額までキャッシングされるのだ。
もちろん警察に届ける者もいそうなもんだが、今のところ警察では被害は「聞いてない」ということになってるらしい。なぜか。警察関係に強力なパイプがある。または、その少年の親族に警察関係の上層部がいて、不祥事を隠蔽しているか。または、ただたんに、被害者が恐怖のあまり、届けられないか。
少し話しを聞くだけでも、悪どすぎる。
しかし、この娘は思った以上に勇敢で、どうにか自分の力で弟を救おうとしているらしい。
といった内容だ。
イチは考えているようだ。
この娘、ほっとくと危険である。
でも、イチを頼っているわけでもない。
で、この弟の意思をまだ聞いていない。
イチは考える。
ナチも考える。
結果、弟に会って話す機会を作るほうがいいと言う
俺も考える
聞いてしまった以上ほっとけないので、何とかしたい。
イチは、恥ずかしそうに言う
「あと・・・あの娘になんか、惚れたっぽい」
やっぱりそうか!と思った。でも、その気持ちは間違ってないし、まず、お世話になってるオーナー夫婦も危険だということ。を考えた。
結果
RBの仕事は取り合えず土日は休業することが決まった。
俺たちは人情深いな。
土日はその息子に会って先ず話を聞いてみること。
あと、その暴走族の情報を俺たちで集めること。(娘は下手に動かないように言っとくことも忘れずに)
を優先で動くことにした。
この仕事こそ、RBNの裏家業「スハダ倶楽部」になっていく。